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不動産暴落で「負動産」に!「いまが買いどき」に騙されるな

社会・政治 投稿日:2016.10.03 06:00FLASH編集部

不動産暴落で「負動産」に!「いまが買いどき」に騙されるな

人気エリア・豊洲ではタワーマンションが林立し、工事もひっきりなしだが……

 

「マンション市場はいま、間違いなく『買い』です。マイナス金利で住宅ローンが低利で借りられますから、空きがあればすぐに決まる状況です」

 

 東京駅までJRで17分。新興マンションが立ち並ぶ人気エリア、新浦安の不動産業者が力説した。ウインドーの4000万円台の中古物件情報には、「成約」マークが貼られている。景気はよさそうだ。この不動産業者が話すように、多くの人が「東京五輪まで不動産バブルは続く」と考えている。

 

 しかし、住宅ジャーナリストの榊淳司氏はこう言う。

 

「五輪と不動産市場? まったく関係ありません。たしかに、東京湾岸地域が注目され、会場近くに住みたいと思う人は多少いるでしょう。しかし、(五輪会場に隣接する)豊洲や晴海のマンション価格はすでに下がりつつある。タワーの部屋を爆買いしていた中国人も去りはじめています。不動産バブルはもう終わったのです」

 

 オラガ総研代表取締役で、住宅コンサルタントの牧野知弘氏もこう語る。

 

「マンションマーケットは、東京五輪どころか、リオ五輪で終了です。昨年、首都圏の新築マンション販売戸数は4万449戸。これは2000年ごろの半分以下です。今年は、近年最低だったリーマン・ショック(2008年)後の3万6000戸をおそらく下回る。これから販売在庫がどんどん積み上がるでしょう」

 

 販売業者は、購買意欲が低下していることに気づいている。住宅ローンが未曽有の低金利であるにもかかわらず、2016年上半期、首都圏で売り出された戸数は、バブル崩壊後の1992年以来、24年ぶりの低水準なのだ。

 

 新築マンションが売れない時代。では中古はどうかというと、さらに厳しい数字が出てくる。

 

 8月24日、不動産データベースを運営する東京カンテイは、7月の都内の中古マンション(70平方メートル)の売り出し価格が0.1%下がったと発表。2014年7月から続いてきた値上がりが、とうとうストップしたのだ。

 

「これまでの新築価格の上昇で、中古も高くなっていました。新築価格が下がってくると、中古相場は一気に崩れる。今後、普通の家族が買うようなマンションの資産価値は、間違いなく下がっていくでしょう」(同)

 

 暴落が確実に訪れるとしても、損失は最小限に食い止めたい。そんなとき参考になるのが、東京カンテイが7月末に発表した「マンションPBR」だ。新築マンションを中古市場に売却した
場合、資産価値がどのくらい変化するかを数値化したものだ。

 

 たとえば首都圏ワースト1位はユーカリが丘で、売却価値59%。新築マンションを売却すると、「購入価格の59%で販売される(資産価値が41%下落する)」ことを意味する。

 

 千葉県佐倉市ユーカリが丘は日暮里駅から京成本線の特急で約1時間。不動産デベロッパーの山万が1971年から独自に宅地開発を始め、生活に必要な施設が揃う。

 

 住民に聞くと「なんでもあって便利。暮らしやすい」(20代主婦)「通勤していたころは大変だったが、30年住んでいて不満を感じたことはない」(60代年金生活者)と、満足度は高い。

 

 ではなぜワースト1位なのか。東京カンテイ市場調査部の高橋雅之主任研究員が解説する。

 

「ユーカリが丘は住環境としては非常に整っている。建物の老朽化、住民の高齢化が急激に起こらないよう、供給するマンション戸数を絞って世代交代をさせています。

 

 しかし、そこから都心に働きに出る場合、何回か乗り換えをしなければなりませんし、ターミナルに出る場合の利便性がどうしても劣るため、価格は新築時より落ちてしまう。もともとこの街に住む方は、資産性よりも住環境を重視されているのではないでしょうか」

 

 2位の飯能(埼玉県飯能市)や3位の八千代緑が丘(千葉県八千代市)も交通の便がいいとは言いがたく、ランキングが上位になった。

 

 一方、5位の上北沢(東京都世田谷区)や12位の馬車道(横浜市中区)は、新築分譲時に価値以上の値付けをされたため、中古流通時に大きく下落することになった。

 

 ユーカリが丘のように、どれだけいい街でも、「郊外」というだけで資産価値は大きく減じる。前出の榊氏が警告する。

 

「今後、郊外のマンションは値が下がる一方。象徴的なのが、苗場スキー場(新潟県湯沢町)のリゾートマンション。1戸10万円で何十件も売りに出ていますが、買い手はほぼ誰もいない。管理費、修繕積立金、固定資産税を払いつづける必要があるからです。いずれ、苗場のようなことが首都圏でも間違いなく起こり、9割のマンションは値がつかなくなるでしょう」

 

 すでに人口減社会に突入している日本だが、今後数年に起こる変化はこれまでにないものになると、前出の牧野氏は語る。

 

「国交省の集計では、1955年以降に開発された郊外のニュータウンは19万ヘクタール、約2000カ所もあります。これは大阪府の面積に匹敵します。2020年には団塊の世代が後期高齢者にさしかかり、郊外に大量の空き家が出ます。

 

 いまの現役世代は都心に1時間半かけて通勤するようなライフスタイルではなくなっている。売れないし住めない、たいへんな負債を抱えることになるのです」

 

 こういう中古物件を相続した場合、どうすればいいのか。高橋氏に聞いた。

 

「地方の不便な中古マンションは、相当値を下げないと売れなくなるでしょう。売れなければ空き家になってしまう。空き家でも税金や管理費はかかります。大都市のなかでも、中心部と周縁、同じ駅でも駅近とそうではない場所によって、売れるか売れないかの二極化が進んでいくでしょう」(高橋氏)

 

 財産だと信じて疑わなかった不動産が「負動産」になる時代、必要なのは発想転換だと牧野氏は言う。

 

「まずは日本人に染みついてる『新築持家信仰』を捨てることです。会社や家族や価値観に合わせ、自由に住み替えていく生活を送ればいいのです。もうすぐ、信じられない値段で広尾の築40年のマンションを借りたり、車1台くらいの金額で郊外の中古戸建て住宅を買ったりできる時代になりますから」

 


【新築マンションを中古市場に売却したらどれだけ下落する?】

 

・ワースト1位 ユーカリが丘 59%
(購入価格の59%でしか販売できない)
・ワースト2位 飯能 63%
・ワースト3位 八千代緑が丘 64%
・ワースト4位 福生 65%
・ワースト5位 上北沢 65%
・ワースト6位 南橋本 66%
・ワースト7位 海老名 66%
・ワースト8位 町田 66%
・ワースト9位 河辺 67%
・ワースト10位 籠原 68%
・ワースト11位 新杉田 68%
・ワースト12位 馬車道 68%
・ワースト13位 吹上 69%
・ワースト14位 村上 70%
・ワースト15位 戸塚 70%
(東京カンテイ「マンションPBR」より)

 

(週刊FLASH 2016年9月13日号)

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