社会・政治
国会議員もYouTuberに…これからの政治家は「魅力、感動、説得力」が武器に
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.11.27 16:00 最終更新日:2020.11.27 16:00
政治とインターネットをめぐる状況の変化は、2013年の公職選挙法改正が起点となっています。同年4月からインターネットによる選挙運動が解禁され、同年7月の参院選から実質的に導入されました。それから6年を経て新しいフェーズに突入したというわけです。
「国会議員YouTuber」といえば、一時はN国党の立花孝志がその代名詞でしたが、最近は、衆議院議員の玉木雄一郎がYouTube配信に力を入れています。しかも、興味深いことに玉木が本腰を入れ始めたきっかけが立花孝志のYouTuberとしての成功でした。
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玉木は2019年9月、立花とコラボ動画を配信したことで猛烈な批判にさらされました。玉木が自身のYouTubeチャンネル「たまきチャンネル」の番組に立花を招待し、選挙戦略や「森友問題」などについて1時間半にわたって語り合ったもので、9月13日に1回目、19日に2、3回目をそれぞれ配信しました。
ちなみに1回目の動画のタイトルは「NHKをぶっ壊す男、登場!」となっています。立花が離党した区議への脅迫容疑で、警察から事情聴取を受けた直後だっただけに、国民民主党の支持者を中心に常識を疑うなどという怒りの声が殺到したのです。
しかし、この炎上騒動ばかりに目を奪われていると、政治とYouTubeのような動画共有サービスをめぐる重大な論点を見落としてしまいます。
玉木がそもそも立花との接触を望んでいた理由が、立花が「動員力のある人気YouTuber」であるだけでなく、破天荒といえるアウトサイダー的な魅力であったことが想像できるからです。
玉木は2018年7月に初めてYouTubeチャンネル「たまきチャンネル」を開設しました。テレビのニュース番組などで見る堅苦しい様子とは打って変わって、「【国会食レポ】たまき、タピるー」という動画では、スイカ果汁100%ジュースのタピオカトッピングと、タピオカほうじ茶ラテの飲み比べをするなど若者受けを狙った動画をアップしています。
また、説明文に「国会議員としての本来の姿である、街の生の声を直接聞く、ガチ突撃インタビュー!と、国会で議論されているような、難しいことを分かりやすく説明していくチャンネルです」とあるように、2019年7月の参院選前には、東京・品川区の商店街に繰り出して、お店の人たちに消費増税に対する率直な感想を求めました。
そこで「(消費増税に)徹底的に反対する人がいない」「(野党は)甘いと思っています」などという厳しい言葉に向き合うポーズを見せたのでした。
実は現在では、このような政治家のYouTube活用、YouTuber化は彼だけではありません。2019年3月にYouTubeデビューを果たしたのが、日本共産党中央委員会政策委員長で参議院議員の小池晃でした。
チャンネル名はその名もズバリ「YouTuber小池晃」。共産党らしい硬派な作りの「YouTuber小池晃が3分で年金問題を斬る」という動画だけでなく、「Youtuber小池晃が行く 夜までハシゴの旅in赤羽」というぶらり旅的な企画モノもあります。
最初にアップされた動画「小池晃をYouTuberにしてみた」には、サポーター担当者の発案から始まったという経緯を説明していることから、無党派の若年層へのリーチを意識した取組みであることは間違いないでしょう。
今のところ「たまきチャンネル」の登録者数は約3.33万人、「YouTuber小池晃」の登録者数は約1.6万人(2020年10月現在、以下も同じ)。世間で名の知れた国会議員のYouTubeチャンネルの本格的な活用は少数にとどまっていますが、今後、YouTubeでオリジナルコンテンツを発信して若者を取り込もうとする動きはさらに進むかもしれません。
例えば、れいわ新選組の山本太郎のYouTubeチャンネル登録者数は、約6.81万人と「たまきチャンネル」の2倍以上ですが、前述のタピオカやぶらり旅のようなオリジナルコンテンツはほとんどありません。逆に言えば、優秀なブレーンがテコ入れをすれば、驚異的な動員を実現する可能性があるということです。
さらにもう一人、国会議員YouTuberで忘れてはいけないのは、院内会派みんなの党代表で参議院議員の渡辺喜美のイメージチェンジでしょう。
渡辺は2018年12月にYouTubeチャンネルを開設していましたが、動画の数は少なく開店休業のような状態がしばらく続いていました。変化が起こったのは2019年8月です。
YouTubeのコメント欄からの指摘などを受けて、ホワイトボードを用いた講義風の動画を投稿し始めたのです。立花のスタイルを踏襲したものだと思われます。テーマは「米中貿易戦争」「終戦の詔勅」「GSOMIA破棄」まで多岐にわたります。チャンネル登録者数は最初数千程度でしたが、現在は約1.53万人となっています。
このようにまだ政治におけるYouTube活用の黎明期にあるといえる日本の未来を占ううえで参考になるのが、お隣の韓国です。
国会議員のおよそ7割がYouTuber化しているというから驚きです。「YouTube政治」という言葉が新たに生まれたぐらいで、日本などよりもYouTubeの影響力は大きくなっています。
中央日報は2019年2月8日に興味深い記事を出しています。「YouTube政治」によって「伝統的なエリートが再編」される時期を迎えており、「一定の条件で扇動的で権威主義的なポピュリスト指導者の出現」が予想されるという、李準雄ソウル大言論情報学科教授の見解を紹介したものです。
李教授は、従来の学閥や世襲などをベースにした「伝統的政治エリート」から「疎通型エリート」に置き換わる過程にあると主張します。
「疎通型エリートとは2002年以降に本格的に登場し、魅力の競演場で訓練を受けた人たちだ」(同前)
「魅力の競演場」とは言い得て妙です。李教授は、疎通型エリートは「魅力、感動、説得力を武器に大衆と直接疎通して政治的動員をする」と述べています。この文章はあたかもれいわ新選組の山本とN国党の立花について語った的確な批評のようにも思えます。
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以上、真鍋厚氏の新刊『山本太郎とN国党~SNSが変える民主主義~』(光文社新書)をもとに再構成しました。SNS全盛時代の民主主義のあり方を問う新しい切り口の政治論です。
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