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“コロナ第3波”到来の11月「全国総計332クラスター」ビッグデータが示す「感染は夜から昼へ」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2020.12.16 06:00 最終更新日:2020.12.16 06:00

“コロナ第3波”到来の11月「全国総計332クラスター」ビッグデータが示す「感染は夜から昼へ」

 

“第3波” は、いっこうに収束する気配がない。12月12日、東京都内の新型コロナウイルス新規感染者数は621人、全国の感染者数も3039人と、過去最多を更新した。

 

「感染拡大を防ぐターニングポイントは、11月だった」と話すのは、厚生労働省クラスター対策班のメンバーでもある、東北大学大学院歯学研究科の小坂健教授だ。

 

 

「厚労省の調査では、11月のクラスター発生件数は、10月に比べて3倍近くに急増しています。“第3波” の感染拡大が、この時期に始まったのは間違いありません」

 

 11月に何があったのか。本誌は、全国で発生したクラスター332件を、報道や行政の発表をもとに独自に集計。この「ビッグデータ」を見ると、11月に手を打たなかったために、感染拡大に歯止めがかかっていない現状が浮かび上がる。

 

 医療崩壊寸前の危機にあるのが、北海道第二の都市・旭川市だ。市内では、地域医療の中核を担う基幹病院が外来診療や手術の停止に追い込まれ、ついに自衛隊に医療支援を要請する事態となった。臨床感染症学を専門とする、昭和大学病院感染症内科の二木芳人客員教授はこう分析する。

 

「12月9日の時点で、基幹病院のひとつである旭川厚生病院では、感染者数が250人を超え、病院としては国内最大のクラスターが発生しています。また、旭川市内の吉田病院で発生したクラスターも、197人にのぼりました。初動の対応に問題があったのは明白でしょう」

 

 吉田病院は、「感染者の転院を市保健所に依頼したが時間がかかり、クラスターの拡大を招いた」と、理事長名で声明を出している。11月時点でのクラスターへの対処が適切であれば、この事態を防げたかもしれないのだ。

 

 前出の小坂教授によれば、今回本誌が集計した「11月全クラスター」には、次のような傾向があるという。

 

「相変わらず接待を伴う飲食店など、“夜の街” 関連のものは、少なくありません。院内感染や介護に関係したクラスターは、それぞれ約2割弱。しかしほかにも、学校などあらゆる場所でクラスターが発生しています。

 

 全体としては、『クラスターが “夜の街” から “昼の街” に降りてきた』と、結論づけられると思います」

 

 二木教授も、こう分析する。

 

「第1波や第2波では “夜の街” や “3密” の飲食店、ライブハウスでクラスターが発生するという傾向が明らかでした。しかし第3波では、そうした傾向が読みにくい。『いつでも、どこでも、誰でも』クラスターに巻き込まれる可能性が高くなっているということなのです」

 

 今回の集計では、都道府県によってクラスターの発生件数が大きく違っていた。なかでも不思議なのは、人口が多く、感染者数も断トツである東京都のクラスターが、わずか5件しかないことだ。その理由について、東京都感染症対策本部は、こう答えた。

 

「クラスターが発生した場合、各保健所から報告が上がってきたものについて、報道機関に公表しています。病院などで大規模なクラスターが発生したときには公表していますが、都の場合、発生件数も多く、すべてを把握して公表しているわけではありません」

 

 つまり、東京都は正確なクラスターの発生状況を把握していないのである。

 

 160人の感染者を出した豊洲市場がクラスターとされていないことも、認定基準が自治体のさじ加減に委ねられていることと無関係ではないようだ。東京都中央卸売市場の担当者は、「豊洲市場がクラスターに認定されていないのは、『感染経路を追える』という国のクラスター認定の基準を満たしていないからです」と話す。

 

 都は、悪化する状況に手をこまねくばかりで、感染拡大に対する防止策は、“手遅れ” という水準に達しつつあるのだ。

 

二木教授

 

 一方、北海道と同じく、医療崩壊の危機に晒されているのが大阪府。目立つのは病院や高齢者施設でのクラスターだ。

 

「大阪は、旭川のような大規模なクラスターはありませんが、発生件数自体が多いため、医療体制を圧迫しているのです。感染者に高齢者が多いために、重症者や亡くなる方も少なくない。

 

 東京と違い、大阪では学生が実家で家族と同居している割合が高い。無症状の若い人が、同居する祖父母に感染させてしまうケースも多いのでしょう」(二木教授)

 

 二木教授によれば、第3波のクラスターの最大の特徴は、「感染経路を追えなくなった」ことが挙げられるという。

 

「政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長も、『以前のように、クラスターの感染源を見つけられなくなった』と発言していますが、いまや感染経路不明が6割に達しています。

 

 家庭内感染や職場感染が多いといわれるが、もとはどこから感染しているのかわからない。“夜の街” クラスターが再び増え、そこから家庭や職場にウイルスを持ち込んでいるかもしれないのです」(同前)

 

 クラスターが “見えなく” なりつつある今、「Go To トラベル」はいったん2021年6月まで延長されたのち、12月14日になってようやく、政府が12月28日から1月11日までの停止を決定。2021年は、“耐え忍ぶ” 年明けになる。

 

 以下の関連リンクでは、11月に全国で確認された総計332クラスターのビッグデータを公開する

 

(週刊FLASH 2020年12月29日号)

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