昨日まで普通に見ていたあのエロ動画が、もうどこにも見当たらない……そう呆然とした人も多いのではないだろうか。12月15日、アダルト動画サイトの世界最大手「Pornhub」(ポルノハブ、ポーンハブとも)内の動画が、突如大量削除された。その数、約1000万件以上。一体、何が起こっているのだろう――。
ことの発端は先週、アメリカを代表する新聞「ニューヨークタイムズ」に「Pornhub」を批判する記事が掲載されたこと。著名ジャーナリスト、ニコラス・クリストフ氏が、「Pornhub」内には未成年が出演する動画や出演者の同意を得ていない動画が数多く存在するとして、その批判を有料サービスの決済手段を提供する銀行やクレジットカード会社にまで向けたのだ。記事を受けて、VisaやMaster Cardが「Pornhub」との取引を停止したことで、今回の事態になった。
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「Pornhub」内で削除されたのは、運営側から認証を受けていないアカウントによってアップロードされた動画で、もともとは全体で1350万本あった動画が、現在では290万本にまで減ったとされる。その中には、販売元に無断で違法アップロードされていた日本製のアダルトビデオ(「JAV(ジャヴ)」と呼ばれ世界的に高い人気を誇る)も多く含まれていた。
ITジャーナリストで、インターネットの動向に詳しい三上洋氏に話を聞いた。
「動画の内容に関わらず、未認証ユーザーの動画を一斉に削除したという今回の措置は、かなり思い切ったものです。Pornhubの運営会社はカナダにあります。これまでは、アメリカの会社ではないということでWeb上である意味“野放し”にされていましたが、大手紙の追及を受けて、大きな対応を迫られたということになります。似たようなアダルト動画サイトは他にもあり、Pornhubからは一時的に利用者が流出するかもしれませんが、他のサイトにも今後、同じような規制の波が及んでいくことは避けられないでしょう。ニコラス・クリストフ氏はツイッターでの最新の投稿で、今度は『XVIDEOS』(有名アダルト動画サイト)を槍玉に挙げています」
「XVIDEOS」といえば、Pornhubと並ぶアダルト動画サイトの雄。こちらまで狙われるとなると、ユーザーとしては心穏やかではいられない。
さて、Pornhubは「これからは、新規の動画やユーザー登録の審査を厳格におこなっていく」と発表したが……。
「しかし、YouTubeでも第三者の著作権を侵害するような違法な動画がまかり通っていて、自動審査プログラムでも全部の動画をチェックすることは絶対に不可能です。今後、ガイドラインの整備に力を入れているYouTubeでも、動画が同様に大量削除されることもありえます」(前出・三上氏)
広告収入や有料のプレミアム会員制度などのビジネスモデルを確立したYouTubeも、動画数が大幅に減少すれば、サイトの利用者が激減する可能性がある。今回の騒動は、エロ動画サイトだけの問題ではない。「通勤や自宅で、スマホ片手に動画視聴」という人や、人気ユーチューバーたちにも、大きな影響があるかもしれない。