社会・政治
これじゃ過重労働は当たり前?広告会社社員を悩ます地獄の会議
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2016.10.28 12:00 最終更新日:2016.10.28 13:53
広告業界に生息する百地春樹氏が、業界のトホホな実情を斬る!
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入社1年目の電通女性社員が自殺した事件を受けて、労基署が過労死と認めた痛ましい事件。その影響を受けて、電通は24日から深夜勤務を原則として認めないことを決め、夜10時に本社ビルの全館消灯を行った。
しかし、電通の対応は「過重労働」にはまったく効果がない。むしろ社員の労働環境をさらに過酷にするものだと同業者は考えているようだ。
■広告代理店の労働環境
代理店の労働環境を知らない人からすると、広告業界は華やかで高給なイメージだという。きっと、今回の被害女性も入社前は電通という最大手で華やかでクリエイティブな仕事ができると夢見ていたことだろう。
だが、現実はそのイメージと大きくかけ離れている。
労働時間は、もちろん定時に帰れるわけがなく、残業は基本毎日のように行われている。某大手では毎週水曜日は「ノー残業デイ」と称して、今回の電通のように定時に消灯されるのだが、大量に課せられたタスクをお粗末に終わらせるわけにもいかず、社員の大多数が残業で残っている。
残業は毎月60~80時間行われており、多い人で100時間は軽々と超える。デジタル化が進んでいるとはいえ、オーダーメイドで作らなくてはならない広告はアナログ作業の連続だ。
■若手の企画会議の実態
特に新入社員のような若手は、発言権も与えられないような会議に無駄に参加させられる。流れはこうだ……。
クライアントと広告の方針について打ち合わせした後、マーケティング部署から必要なデータをもらい、企画部署でアイデアを掘り下げる。
素敵な企画を作り上げるために会議は必要不可欠なのだが、クライアントに頑張りを見せたいがため、必要以上に会議を繰り返す。「あなた(クライアント)のために頑張りましたよ!」の一言のために……。
大詰めになると、営業やクリエイター、デザイナーなどチームメンバー全体で会議をするのだが、大人数になると全員の都合がなかなか合わない。
結果として、深夜から始まることとなる。若手には発言権もなければすることもない会議だ。「上司が参加するのに部下が帰るわけはいかない」という悪習が、若手の体力を無駄に削ることとなる。
会議も大詰め深夜1時を過ぎたころ、終電を乗り過ごした、顔も見たこともないような酒くさい大御所クリエイティブディレクターがふらっと会議に訪れ、傲慢な態度で一言。
「こっちのほうがいいんじゃない」
こうして、今までの作業が全てリセットされるのだ。
■メディアのデジタル化で悪化が加速する
広告代理業は薄利多売であるため、売上を大きくしていく以外、業務拡大の道はない。当然一人頭の負担も、会社の規模が大きくなればなるほど、尋常でないほど増えていく。
電通では朝5時まで消灯が決められたが、朝5時になったとたん、会社の電気が煌煌とつき始めたという。深夜勤務ができなくなれば、その埋め合わせを、早朝か休日に行うだけの話なのだ。
クライアントとの潤滑油として今後も社員が酷使され続けるのは今後も変わらないだろう。