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東京五輪「再延期or中止」論争の裏で…“選手村マンション”購入者の本音は?

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.01.31 16:00 最終更新日:2021.01.31 16:00

東京五輪「再延期or中止」論争の裏で…“選手村マンション”購入者の本音は?

東京五輪
選手村 PORT VILLAGE(3街区)

 

 英紙「タイムズ」の中止報道以来、五輪開催の可否について、再び議論が活発化している。そんななか、一部で注目を集めているのが、東京・晴海に整備された「東京五輪選手村」だ。ある不動産関係者は、こう語る。

 

「選手村宿舎は、五輪後に改修して引き渡す分譲住宅『HARUMI FLAG(以下・晴海フラッグ)』として、大手10社が売り主となり、すでに販売されています。2019年7月に第1期として、940戸が売りに出されましたが、第2期の売り出しは、当初の予定だった2020年3月から延期になったままなんです」

 

 

 晴海フラッグの分譲物件は、「シービレッジ」686戸、「パークビレッジ」1637戸、「サンビレッジ」1822戸からなる計4145戸。賃貸物件である「ポートビレッジ」1487戸を合わせて計5632戸、1万5000人規模の住宅街になると公表されていた。

 

 今後、晴海フラッグはどうなるのだろうか。実際に物件を購入した、(株)資産デザイン研究所代表取締役の内藤忍氏(56)は、こう語る。

 

「私はシービレッジの2部屋(96平米の2LDK、115平米の3LDK)に応募し、当選して購入しました。倍率はどちらも3倍程度だったと記憶しています。成約時に手付金として購入額の10%を支払い、残りは引き渡し時に支払う契約でした。

 

 自分で住むかもしれませんし、転貸して資産運用することも考えています。もちろん、価格が上がれば転売することも視野に入れての購入です。

 

 シービレッジを選んだのは、低層で海に向かっているため、目の前に新しいマンションが絶対に建たないからです。眺望がいいマンションのほうが、相対的に価値が高いんですよ」

 

 内藤氏によれば、五輪の付加価値に頼らずとも、晴海フラッグへの不動産価値の期待は高いという。

 

「私が購入を決めた一番の理由は、周辺相場に比べて割安であるということです。最寄り駅である都営地下鉄大江戸線勝どき駅まで徒歩約20分という不便さや、代わりに導入されるBRT(バス高速輸送システム)へのまだ見ぬ不安はありますが、坪単価が300万円前後で、2割から3割ほどお買い得だと感じました。

 

 そして、『広い部屋が中央区で買える』という点にも価値があります。そもそも100平米以上の部屋は、作っても売れないから、あまり存在しないんです。上階部分だけ広いという物件はありますが、都心でこれだけ広い部屋がそろっている物件は珍しい。

 

 そのため、賃貸の需要もかなり見込めます。『広い部屋を安く借りたい』という人は、意外と多いんです。晴海フラッグは、周辺相場よりも安く買えますから、そのぶん安く貸しに出せるというメリットがあります」

 

 さらに、環境的な付加価値も見込めるという。

 

「いわゆる “ランドマーク物件” になると思ったことも、私が購入した大きな理由のひとつです。今後、六本木ヒルズや広尾ガーデンヒルズなどと同じように、『晴海といえば、晴海フラッグ』というイメージができてくるはず。そうなれば、プレミアがつくことが予想されます。

 

 行政側、つまり中央区も町おこしプロジェクトとして力を入れていますから、『番町小学校』『麹町中学校』のような、クオリティの高い公立学校が作られるでしょう。すると高収入の世帯が学校目当てに集まってきて、ほかのランドマーク物件同様、住むこと自体のブランド価値が高まるわけです。

 

 さらに、五輪の中止や延期が話題になると、必ずといっていいほど晴海フラッグがニュースになります。そのたびに、新たに決まったことが報じられるんです。たとえば、どんな小・中学校ができるのか、1階の商業施設にどんなテナントが入るのか、BRTがどのように運行されるのかなど、ネタには事欠きませんから。

 

 そしてもちろん、『不動産価値の上下』という定番のトピックスにも注目が集まります。上がれば『やはり価値がある』となりますが、下がっても『先に買った人は損した。自分はこれから安く買えて得』と次期の購入希望者が増え、結果的に価値が上がります。話題性があること自体で、価値が高いといえるんです」

 

 いいことずくめに思えるが、もちろん不安材料もある。それは五輪延期にともなう、引き渡しの延期だ。すでに一度、当初予定の2023年3月から、2024年3月に変更されているが……。

 

「現段階では、晴海周辺の相場は上がっていますが、五輪が再延期されたりして、さらに引き渡し時期がずれると、不動産価値が下がることは考えられますね。

 

 2020年に最初の延期が決まったときには、不動産会社から『買主のペナルティー無しで解約できます』という通知が来ました。高齢者の方が先延ばしの不安からキャンセルされたとか、お子さんの小学校入学タイミングの理由で断念された方もいらっしゃったと、担当の方から聞きましたね。

 

 私自身は、そうした問題もありませんし、解約は選びませんでした。引き渡しが1年延びたという通知以来、新しい情報はありません。仮に五輪が中止になった場合は、完成が少し早まる可能性もありますが、まだ何もわからないんです」

 

 内藤氏は、実際に現場視察にも訪れている。

 

「じつは購入者も、中には入れないんです。我々購入者はリノベーションしたあとの間取り図しか持っていませんから、自分が買った部屋やフロアが、選手村としてはどう使われるのかも不明ですし、部屋の中の様子もわかりません。

 

 五輪開催にともない引き渡しが延びたことについては、購入者はみな残念に思っています。ただ、コロナ禍というやむを得ない事情ですし、リスクなしにキャンセルできたわけですから、『今後どうなっても文句を言う筋合いはないな』と考えています。

 

 大手デベロッパー11社による共同開発で、ビレッジごとに建設会社も違うため、『他社と比べて劣るものは作れない』というせめぎ合いの状況があり、建物への安心感はあります。3年後の引き渡しが、待ち遠しいですね」

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