「いちばん危険なのはアナフィラキシーショックですが、欧米諸国の状況を見ていると、インフルエンザワクチンと比べてその頻度はやや高いものの、特別に多いわけではないと思います。
ただそれ以外にも注目したいのは、1回めの接種よりも2回めの接種のほうが副反応が強いのではないかと懸念されていることです。イギリスでは2回めの接種を3カ月先に延ばすとも報道されていて、そのへんが見えてこない。
また、いま報告されているのは接種直後の副反応。じつはワクチンの副反応は、接種後3カ月、4カ月、半年たってから出てくるものもあるので、それも気になりますが今回、それを待っている時間はありません。
しかし、やはり安全だというしっかりしたデータを厚生労働省にはお示しいただきたい。
今までの臨床試験の治験で接種した方が、おそらく4万5000人から5万人ぐらいいると思います。そういう方たちの安全の評価、長期間の効果も可能な限りしっかり評価したうえで、判断しなくてはならない。
また、海外ではすでに多くの人にワクチンが接種されています。そういったデータもどんどん集めていただいて、最大限の安全を確認しましたよということをお示しいただかないと、不安が残りますよね。
私は、ワクチンの承認はあまり急ぐべきではないと思っています。日本の感染状況はイギリスやアメリカとは違いますから、もう少し待ってからじっくり評価してもいいと思います」
■「変異株」への有効性
もうひとつ気になるのが、コロナウイルスの変異株だ。ジョンソン英首相は、英由来の変異株について、従来のウイルスに比べて致死性が高い可能性があると発表している。
「コロナウイルスは変異しやすいんですね。基本的にウイルスは感染力がどんどん強くなって多くの人に感染していきますが、重症化しにくくなる傾向が示されることが多いのです。
アメリカのエモリー大学の研究チームの試算によると、放っておいてもコロナウイルスは10年後には風邪のようなウイルスになるなどといわれています。
とはいえ、最近のウイルスの変異株は自分が生き残るためにどんどん性格を変えてくる。イギリス、南アフリカ、ブラジルと各国に次々と出てくる変異株がどう性格を変えてくるかは未知数。
ワクチンは変異株にも効果があるといわれていますが、一部の変異株ではワクチン効果が劣るという可能性はあります」
それでも新型コロナウイルスの感染対策には「ワクチンが非常に有用だ」という。ワクチン接種が始まれば、感染拡大は収まるのだろうか。