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刑務所内で新型コロナウイルスが蔓延…受刑者が語る「緊急事態宣言で塀の中の生活が一変」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.03.11 20:00 最終更新日:2021.03.11 21:11

刑務所内で新型コロナウイルスが蔓延…受刑者が語る「緊急事態宣言で塀の中の生活が一変」

 

 刑務所や少年院でクラスターが相次いで発生している。1月下旬から横浜刑務所で146人、千葉刑務所で93人、川越少年刑務所で5人、函館少年刑務所で27人など、新型コロナウイルスの集団感染が発生した。3月7日にも宮城拘置所で、17人のクラスターが発生しており、今後も各地の刑務所でクラスターが発生する恐れがある。

 

 

 閉鎖空間である刑務所内では、一度蔓延すると、なかなか収束させるのは難しい。しかも、「自分自身が感染しているかどうかすら教えられないのが現状」と、ある受刑者は語る。

 

「所内放送でクラスターの発生を知りました。初日に40人近い感染が伝えられてから、約2日おきのペースで感染者の発表がありましたが、重症者はいないとのことでした」

 

 その後、この受刑者も感染し、刑務所内の別棟に隔離されたという。職員は防護服を着用し、出入り口で手足の消毒をしていたそうだ。

 

「私には、自覚症状はありませんでした。唾液採集によるPCR検査は受けましたが、検査結果は教えてもらえませんでした。体温測定が1日1回から3回になり、私を含め一部の収容者はパルスオキシメーターの着用を義務づけられました。これは、陽性ということなのでしょうね」(同前)

 

 感染した受刑者に検査結果を伝えなかったことについて、法務省矯正局の医療管理官に聞いた。

 

「法務省では、『矯正施設における新型コロナウイルス感染症感染防止対策ガイドライン』というものを作成しておりまして、基本的にこのガイドラインに基づいて実施しております。

 

 陽性者が出た場合には単独室に分離、症状に応じて健康観察をしていきます。無症状の場合は、職員による健康観察を細やかにおこなうようにしています。こちらのガイドラインでは、告知義務が特にあるわけではないので、現場の判断で伝えないこともあります」

 

 現在は隔離も解除され、舎房待機の状態だと、前出の受刑者は続ける。

 

「我々受刑者からすれば、クラスター発生は、想定内です。これまでも、外から持ち込まれたものが流行っていましたからね。

 

 2020年11月ごろから、37度以上の発熱者は2週間隔離されていました。12月に職員が1人、2週間ほど休んでいまして、『コロナ陽性か濃厚接触者らしい』という噂が、刑務所内で流れていました。いつでも罹る可能性があるなと思っていましたね」

 

 受刑者たちはニュースや新聞で、外の状況は把握している。感染者が出たときは、「やっぱり」という空気だったようだ。しかし、1月13日からは、コロナ対策で新聞の回覧がストップされ、情報収集ができていないという。

 

「1月8日の緊急事態宣言後、12日からは懲役の半数が作業に出ずに舎房待機。炊場に関係していた職員が休みになって、食事も作れなくなりました。

 

 そこから一週間くらいは、ご飯もおかずもレトルトになりました。お湯で温めるタイプで、時々小さい羊羹がついてきました。その後は、外部業者によるお弁当に切り替わりました。

 

 2月に入ってから、朝だけはおにぎり2〜3個か、菓子パン2個に変わりました。弁当もおにぎりも菓子パンも、ふだんは食べられませんから、喜んでいる収容者は多いと思います(笑)。

 

 チーズインハンバーグとか、ハンバーグカレーなんて、初めて食べましたしね。おにぎりも、なんだか嬉しかった。刑務所に入る前に食べていた味から変わっていたような気もしました。美味しかった」(前出の受刑者・以下同)

 

 食事の面では問題ないようだが、洗濯や風呂には困っているという。

 

「1月半ばから入浴がストップされ、洗濯工場も止まりました。各舎房で水道水と石鹸で手洗いし、部屋干ししています。丸一日、干しても乾かないですね。

 

 風呂は月・水・金に、洗面器一杯ぶんぐらいの2.5リットルのお湯で、タオルを使って体を拭けるようになりました。人数を考えると、その量でもありがたいです。ぬるめのお湯ですけど、水でやれって言われてもおかしくないですからね。十分感謝しています」

 

 舎房待機の状態なので、毎日、一歩も外には出られない状態だという。

 

「髭も髪も伸ばしっぱなしですね。でも、我々より職員のほうが大変でしょう。今まで収容者がやっていたことをやらなければいけませんし、濃厚接触者の職員は勤務できませんから、人手も圧倒的に足りていません」

 

 感染者の医療体制はどうなのだろうか。

 

「内科、外科、耳鼻科と皮膚科、精神科や歯科の医師が週2会~月1会で来てくれてます。診療希望者は多いので、診察は1人5分くらいですね。必要に応じて、薬は出ます。これは無料ですね。ここでは注射はできないので、重症の場合は医療刑務所の外の病院に行くことになります。

 

 ただ、収容者は健康保険に入っていませんから、外の病院だと実費、もしくは刑務所持ちになるので、ほとんど行かないですよ」

 

 コロナによる重症患者などは、出ていないのだろうか。

 

「重症の場合には、医療に特化した医療刑務所に送致することも想定しておりますが、現在のところ、全国で医療刑務所送致になった重篤な患者は発生しておりません。重症化しない場合は、矯正施設内の医科で対応することになりますね」(法務省矯正局)

 

 受刑者は当然外に出られないので、職員がウイルスを持ち込み、刑務所内で感染を広げるリスクが高い。受刑者の人権を守る活動をおこなっている「NPO法人監獄人権センター」は、法務省に対して声明を出し、対策を求めている。現状では、重篤患者もなく、ある程度ウイルスを蔓延させない対策は機能しているという。

 

「基本的に、保健所との連携で対応していくようにしております。濃厚接触者は単独室へ離したり、各施設で判断しておこなっております。ワクチン接種なども調整しながら、検討段階となっております。

 

 受刑者も国民であることに間違いはないので、接種の対象には入ってくると思いますし、人権、健康を守っていくべきと考えております」(法務省矯正局)

 

 前出の受刑者は、目を細める。

 

「医務には感謝してますよ。コロナウイルスは、どうにもならない。我々は、収まるのを待つしかないんです」

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