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菅首相 日米首脳会談での「ワクチンおねだり」がバイデンに拒絶されるワケ
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.04.16 20:00 最終更新日:2021.04.16 20:00
4月15日から始まった菅義偉首相(72)の初訪米。16日午後(日本時間17日未明)には、ジョー・バイデン大統領(78)と初めての首脳会談をおこなう予定となっている。バイデン大統領にとっても、対面での首脳会談は日本が初めてとなる。
「今回の会談は、菅首相にとって渡りに船ですよ」と語るのは、共同通信元ワシントン支局長の春名幹男氏だ。
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「菅首相は、コロナ対策もあまりうまくいかず、支持率も低迷した状況で米国に呼んでもらえたわけですから、心底ありがたいでしょう。米国との強固な同盟関係をアピールするだけでも、支持率回復につながる可能性がありますし、日本に有利な “お土産” を持って帰ることができれば、選挙でも外交実績としてアピールすることができます」
今回、菅首相がバイデン大統領に “おねだり” するのは、2つ。ひとつめは「尖閣演習」だという。
「バイデン氏は、2020年の当選後に菅首相に電話で『尖閣は日米安全保障条約第5条の適用対象だ』と言ってくれました。しかし中国はその後も、海警局船による日本漁船への追尾や威嚇を繰り返すなど、挑発を続けています。
本来であれば、中国をけん制するため、尖閣諸島で日米の合同軍事演習をおこなうことが望ましいのです。しかし、尖閣諸島は台湾政府も領有権を主張しているため、台湾情勢に気を遣うアメリカは、なかなか尖閣問題に手が出せない状態です。
菅首相としては、電話会談以上に『尖閣が日本固有の領土である』という趣旨の踏み込んだ言質がほしいでしょうが、簡単には引き出せないでしょう」(春名氏、以下同)
そしてもうひとつ、菅首相が求めるのが米国の「ワクチン」だ。
「日本のワクチン接種率は、世界のなかでも大幅に出遅れています。ワクチンがこのまま足りないとなると、オリンピックが開催できなくなるかもしれません。
もしそうなると、近いうちにやってくる衆院選で、大きく議席を減らすことになるでしょう。議席の数によっては、菅首相は政権を維持できない可能性もあります。いわば、首相のクビがワクチンにかかっているともいえます。
現状、日本に来ているワクチンはヨーロッパからのものがほとんど。もし、米国内で製造しているワクチンを供給してもらえれば、ワクチン接種のスピードを上げられる可能性が高いです。
ただバイデン氏が、日本への供給を優先してくれるかどうか、怪しいところです。米国は7月4日の独立記念日に『コロナからの独立』を目指しています。つまり、あくまで自国最優先でしょう」
反面、バイデン大統領から要求されるのは、日本企業の米国内への投資だ。
「米国側のキーマンは、(ジェイク・)サリバン補佐官(44)です。彼は、国家安全保障を担当しています。バイデン氏は、『経済安全保障は国家安全保障だ』と確信しています。サリバン氏は、この戦略をよく理解しているので、要職に起用されました。
具体的に言えば、『米国は中国に頼らないサプライチェーンを構築しなければならない』ということです。世界の工場である中国に頼らず製品をつくるためには、国内に工場をつくるしかありません。
そこでバイデン氏は、日本が米国に投資し、米国内に工場を設立するように働きかけるでしょう。当然、税制優遇などの恩恵はあるでしょうが、日本の産業空洞化がますます進むわけですから、手放しでは喜べません。いずれにせよ、今回の日米首脳会談で、日本が得られるものは、あまり多くないでしょう」
そもそも、2020年9月の総裁選時から、外交手腕には疑問の声が多かった菅首相。不安は募るばかりだ……。