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亡くなった英国フィリップ殿下、日本の “敗戦の瞬間” を目撃していた

社会・政治 投稿日:2021.04.20 16:28FLASH編集部

亡くなった英国フィリップ殿下、日本の “敗戦の瞬間” を目撃していた

写真:Shutterstock/アフロ

 

 4月9日、99歳でこの世を去ったイギリスフィリップ殿下は、海軍の士官学校で学び、戦闘経験をもっている。そして、1945年、東京湾でおこなわれたポツダム宣言受諾の調印式を生で目撃している。日本の敗戦の瞬間だ。

 

 1975年にエリザベス女王と日本を訪問した際、「日本は初めてですか」と質問され、「はい」と答えたそうである。当時は戦争の話題には触れないよう配慮したのであろう。

 

 

 それから20年後、1995年に受けたインタビューでは、軍艦ウェルプに海軍将校として任官し、第2次世界大戦に参加したときの様子を事細かに話している。

 

 当時24歳のフィリップ殿下は、まず地中海でドイツ軍との戦闘に参加。8月6日の原爆投下後にグアム沖から相模湾に入り、その後、調印式の会場となった戦艦ミズーリを東京湾まで護衛した。

 

 調印式は200ヤード(182メートル)離れていたが、船上で音が聞こえる距離で、双眼鏡で何がおこなわれているのか見ることができた。

 

 第2次世界大戦での最後の任務は、日本に捕らえられたイギリス人の戦争捕虜たちの救出だった。フィリップ殿下の船に救助されたのは自分たちと同じ海兵隊員で、そのときのことはよく覚えているという。

 

 船上で彼らの横に座って紅茶を注いであげたところ、みな何もしゃべれず、ただ涙が頬を伝って流れ落ちるだけ。その場にいた誰もが胸を打たれる衝撃的な光景だったそうだ。

 

 また、英王室の公式アカウントは先週(12日)、1995年のインタビューを当時の映像を交えながら発信し、フィリップ殿下を偲んでいる。

 

 対日戦線では、捕らえられたイギリス兵捕虜のうち1万2000名以上が死亡したといわれる。イギリス軍史のなかでも厳しい経験だけに、フィリップ殿下の救出劇は、イギリス人にとって英雄的な行動だと目されてきた。

 

 殿下は、1947年にエリザベス女王と結婚。女王の即位前に海軍の任務から退いて公務に専念するが、その後も64年間、海兵隊の儀礼上の最高指揮官である海兵隊元帥を務めた。

 

 ギリシャやデンマーク王家の一員として生まれながら、亡命生活を送るなど、波乱万丈の人生だった。日本での活躍は、さまざまなドラマのなかのほんの一部かもしれないが、貴重な歴史の目撃者としてその生涯を閉じた。(取材・文/白戸京子)

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