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40万人の観光客がゼロに……苦境の対馬を『ゴースト・オブ・ツシマ』が救う!
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.05.08 16:00 最終更新日:2021.05.08 16:00
「現在、韓国との船の便はありません。コロナ禍で、韓国からの観光客はゼロなんです。ただでさえ、2019年夏の日韓関係の悪化で、すでに訪日客が激減していたのに……」
長崎県・対馬の観光業関係者が嘆いた。韓国と目と鼻の先にあり、釜山からは船で約1時間。サンダル履きでの日帰り観光客も多く、2018年には約41万人もの韓国人が訪れた。そんな対馬が今、ピンチだ。
「最近の観光客は個人のお客様で、日本人しかいません。ゴールデンウィークには、多少来ていただきましたが、ホテルは5月10日からはもう予約がない状況ですね」(同前)
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地元の飲食店関係者もため息をつく。
「正直言って、ゴールデンウィーク中でさえ、観光客が戻ってきたという実感はありません。ツアーの方がいないですし。対馬市は5月2日に成人式を予定していたのですが、それも中止になりました。韓国からの観光客が最多だった2018年に比べると、現在の売り上げは1、2割程度ですね」
対馬旅行を待ちわびる韓国人は多い。韓国では、対馬ほか九州各県の上空を遊覧飛行するだけの「無着陸飛行」が人気になっている。一方、対馬市内の観光会社は、島内の観光地などに日章旗(日の丸)を掲げる「対馬フラッグプロジェクト」を始動した。コロナ禍後に、島を訪れる訪日客に“日本らしさ”を感じてもらうためだという。
だが、それだけではかつての賑わいを取り戻すのは難しい。そんな苦境にある対馬の観光業関係者が“一発逆転の秘策”だと頼みにしているのが、2020年7月に発売したプレイステーション4用ゲーム『Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)』だ。
「鎌倉時代、モンゴル軍が日本へと侵攻してきた元寇をテーマにしたアクションアドベンチャーゲームです。アメリカの開発チームの制作ですが、侍の歴史や文化を深く理解しており、太刀さばきなどの動きもリアルだと評判になりました。2021年3月時点で、全世界で実売累計650万本の大ヒット作となっています」(ゲーム雑誌編集者)
前出の観光業関係者は、同作の話題になると、声のトーンが明るくなった。
「映画化が決まって(『ジョン・ウィック』シリーズのチャド・スタエルスキ監督がメガホンを握る)、コロナ禍が収まると対馬に来ていただけるよう心待ちにしています。自然豊かで、新緑がいまいちばんいいときなんです。この緑をいろんな方に見ていただきたいです」
対馬観光物産協会の担当者は、すでに日本のファンが、島を訪れるようになっているという。
「ゴールデンウィークに海外に行けないという方が、『ゴースト・オブ・ツシマ』の“聖地巡礼”にいらしていました。7世紀に築かれ、防人が国境の守備の任にあたった金田城など、マニアックな場所が人気です。ゲームのヒットで、欧米でも対馬の知名度がかなり上がっているんです。コロナが落ちついたら、欧米からの観光客も増えてほしいですね」
5月12日からは、いま対馬を訪れる観光客の大多数が経由する福岡県が、緊急事態宣言対象地域に入る。だが、これから映画のキャストが発表され、ロケ地が決まっていくなど、対馬には注目が集まりつづける。『ゴースト・オブ・ツシマ』は、対馬の人々にとって、苦境を吹き飛ばす“神風”となるに違いない。