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『臨場』監修の元検視官が語る「腐乱死体取り扱い手当は激安」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2012.06.28 00:00 最終更新日:2016.03.01 23:47

 6月30日、”終身検視官”の異名を持つ男を描いた人気ドラマ『臨場』がついに映画化。組織とは一線を画し己の道を貫きながら、死に隠された真実を見つけ出す検視官・倉石義男の生きざまを内野聖陽(43)が好演している。

 

 そこであらためて「検視官」とはどういう職業なのか、『臨場 劇場版』で警察監修を務めた元検視官・倉科孝靖氏に話を聞いた。

 

 刑事訴訟法に基づき、変死体の状況捜査をおこなう司法警察員のことを「検視官」という。死因のわからない死体を外見的に観察し、死亡の種類を見極め、事件性があるかどうかを判断、推測するのが仕事だ。いったいどんな資質が求められるのか。

 

「客観的に、片寄らずに物事をみることができる人、些細なことでも犯罪性を見抜けるセンスを持つ人でしょうね。自然体で置かれているはずの手が逆になっていたり、ズボンのポケットが不自然にはみ出していたりといったことを犯罪と結びつけられるかどうか」

 

 必要な資格や試験はなく、10年以上の捜査経験をもつ警察官が任命されるのだが、専門性のたかい職分ゆえか、職人気質の人が多いのも特徴だという。

 

「私が若いころは、俺の背中を見て学べという方がたくさんいらっしゃいました。『臨場』主人公の倉石のように捜査本部と意見が衝突するということもありましたよ」

 

 そんな経験がものをいうポジションだが、通常は2〜3年で移動となる。24時間365日スタンバイのため、体が持たないというのだ。しかも人数も少ない。県警本部などでは1人しかいないのが主流だとのこと。

 

「そのうえ、特別な手当もない。あるとすれば腐乱死体の取り扱い手当くらいですが、それもわずかです。臭いが染みついた作業着は自分でクリーニングですから、洗濯代にもなりません」

 

 しかし退任後はそのノウハウを生かし、鑑識課の課長や捜査一課の管理官など捜査のエキスパートとして、エリートコースを歩んでいくことが多いそうだ。

 

「この映画は作業の順番や傷跡の再現など、とても丁寧に作られています。倉石の死者の声を拾えるだけ拾おうという姿勢にこそ、検視官のリアルな姿が描かれているんじゃないでしょうか」

 

(週刊FLASH 2012年7月10・17日合併号)

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