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大宮立てこもり犯人を警視庁が取り逃していた…「私も6時間監禁」被害者女性が告白
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.06.29 06:00 最終更新日:2021.06.29 06:00
「駆けつけた警察官は『合意のうえでホテルにいたんでしょ?』『お金を奪われた証拠がない』などと、ニヤつきながら繰り返すだけでした。逃げ出した犯人について調べるそぶりもなかったんです。あのとき男を追っていれば、その後のことはなかったのかも……」
悲痛な思いをこう語るのは、6月10日にSNSを通じて知り合った男に、東京都新宿区のホテルで6時間監禁された20代女性・A子さんだ。彼女が「自分を襲った犯人」と断定するのが、さいたま市大宮区のインターネットカフェで、約32時間も女性従業員を人質に立てこもり、6月18日に逮捕された林一貴容疑者(40)なのだ。
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「事件発生の4日前、神奈川県横浜市で起きた風俗店従業員に対する強盗致傷事件から採取された指紋が、林容疑者のものと一致しました。その従業員はホテルで男に首を絞められ、手足を縛られたうえ、約32万円を奪われました。
林容疑者は、2018年に強制性交未遂と強盗致傷で2度逮捕されており、現在、余罪も含めて捜査中です」(捜査関係者)
A子さんが話す被害内容は、横浜市の事件と酷似している。
「正直に話すと、私は “パパ活” として男と会ったんです。2万円で “関係” を持つという約束で、駅で待ち合わせました。ホテルで私は暴行を受け、無理やりに性行為をされ、金銭を奪われてしまいました」
林容疑者がホテル選びに何度も難癖をつけたことから、「逃げられそうな場所を考えていたのかも」と後になって、感じたという。そしてようやくラブホテルに入室すると、突如、暴力を振るわれたのだ。
「背後から首に腕を回され、顎を数回殴られました。首筋に指を当てながら『ここを絞めたら、すぐ死ぬんだぞ』と脅されました。男は結束バンドで私の手を後ろ手に縛り、バンドを輪にして鎖のように繋げて足を拘束し、その状態で性行為をしてきたんです」
そのまま彼女は監禁されることに。林容疑者は自身について、こう話していたという。
「先の尖った植木ばさみのような刃物をずっと持っていて『俺は刃物の使い方に慣れている。お前を生きたまま、苦しませることができる』『ハンマーで女の頭を殴った』などと語っていました。ただただ恐怖で、どうやって逃げようかをずっと考えていました」
A子さんを監禁している際、林容疑者は約20万円が入った彼女の財布を奪っていた。そして午後5時半に林容疑者に言われるがまま、一緒に退室。出口の精算機の前で、林容疑者が目を離した隙に、A子さんは「助けて!」と叫んだ。
「私が男の持っていたトートバッグを掴むと、バッグの中身が落ちて、男はカードホルダーのようなものだけを拾って逃げていきました。そのときに見えたカードに記載されていた名前が、林容疑者のものだったんです」
通報を受け、数分後に警察官が駆けつけた。女性は暴行、監禁、窃盗被害について話したが、冒頭のように “男女のトラブル” として片づけられたという。そして、今もって捜査はおこなわれていない。
「大宮の事件報道を見て、あの日に私を監禁、暴行した男だとわかったんです。びっくりして、あらためて2度も新宿警察署に被害届を出そうとしましたが、受理してもらえませんでした。
現場に残されていた林容疑者のトートバッグは、あの日に来た警察官が押収して新宿署が保管しているんです。調べれば、すぐに同一人物とわかるはずなのに」
本誌記者も同行したが、やはり新宿署はA子さんの被害届を受理しなかった。元神奈川県警刑事で警察ジャーナリストの小川泰平氏は、新宿署の対応をこう指摘する。
「女性が『金銭を奪われた』と訴えているので、窃盗容疑で対応できたはずです。すぐさま事件として扱って、容疑者のバッグを調べていれば、その後の大宮の事件も未然に防げた可能性もあります。たとえ小さな事件でも被害届を受理して、捜査することが必要だと思います」
本誌は警視庁に「A子さんのもとに警察官が出動したのは事実か?」「なぜ新宿署はA子さんの被害届を受理しないのか?」を尋ねると同時に「A子さんが林容疑者による被害を訴えていることへの見解」も求めた。
しかし、届いた回答は「個別の事件についてはお答えできません」のみだった。高をくくった捜査の怠慢で、重大犯罪の犯人を取り逃していたら……。
(週刊FLASH 2021年7月13日号)