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エジソンも絶賛した養殖真珠、世界中の女性をとりこに/7月11日の話

社会・政治 投稿日:2021.07.11 09:20FLASH編集部

エジソンも絶賛した養殖真珠、世界中の女性をとりこに/7月11日の話

核入れ作業を視察する御木本幸吉(1922年)

 

 1893年(明治26年)7月11日、御木本幸吉が世界で初めて珠貝(アコヤ貝)の養殖に成功した。のちに御木本が「真珠王」と呼ばれ、今なお存在感を放つブランドを作りあげるきっかけとなった。

 

 日本で天然の良質真珠が採れることは、世界的に知られていた。鎖国を続けた江戸時代が終わり明治に入ると、日本の真珠を求める声が高まり、天然のアコヤ貝が乱獲されるようになった。これに危機感を覚え、立ち上がったうちの一人が御木本幸吉だった。

 

 

 歴史学者の濱田浩一郎さんが、こう語る。

 

「三重県でうどんの製造・販売をおこなう父のもとに生まれた御木本は、若いうちから行商を始め、大人になると家業を手伝いながら海産物商人として身を立てます。地元ではさまざまな組合の長を務め、名士として知られるようになりました。

 

 絶滅を防ぐため、アコヤ貝の養殖を始めた御木本ですが、真珠を産まない貝は価値が低くなってしまうことから、真珠そのものを養殖する発想に至ります。

 

 東京帝国大学の学者たちに指導を受けながら、現在の真珠島で実験を始めました。苦節3年、ついに御木本の貝から真珠が生まれたのです」

 

 このとき成功したのは、半円真珠だ。市場に出しても完全な真珠とはみなされず、価格も比較的安い。次に御木本は、天然と変わらない真円真珠の養殖を研究し、ついに成功させる。

 

 天然ものと変わらない真円真珠を人工的に生み出したことは、巷の人々を大いに驚かせた。

 

「御木本の実績は国内外に広まりました。ついには渋沢栄一の紹介により、あのトーマス・エジソンの自宅を訪ねます。

 

 エジソンが『私にはできなかったものが2つだけある。1つはダイヤモンド、もう1つは真珠だ。あなたが真珠の養殖を成功させたことは、驚くべき発見だ』と絶賛したのです。

 

 一方で御木本は『あなたは巨星のような存在だが、私は多くの発明家の一人にすぎない』と謙虚に返したそうです。

 

 銀座のみならず世界各国にミキモトを展開し『真珠王』と呼ばれるようになってからも、決して驕ることなく質素な暮らしを続けたようです」

 

 真珠養殖の功績を認められ、1905年に明治天皇に拝謁した御木本は、「世界中の女性を真珠で飾ってごらんにいれます」と語ったという。御木本の宣言は、本人の想像以上に実現したといえそうだ。

 

写真・朝日新聞

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