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全国の “危険” 盛り土は地震でも崩壊リスク…「対策必要も自治体予算追いつかず」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.07.14 06:00 最終更新日:2021.07.14 06:00

全国の “危険” 盛り土は地震でも崩壊リスク…「対策必要も自治体予算追いつかず」

地図を使い熱海の土石流の被害について説明する難波喬司静岡県副知事(写真・朝日新聞)

 

 7月3日に静岡県熱海市の伊豆山地区で発生した、大規模土石流。7月13日時点で、死者は計11名。17名が安否不明のままだ。なぜこれほど大きな被害が出たのか。関東学院大学理工学部教授で地盤防災工学が専門の規矩大義(きくひろよし)氏は、熱海の現場に赴き「盛り土」が原因のひとつだと確信した。

 

 

「今回の盛り土は、届け出ていた高さ15mを超え、50mも積まれていました。しかも排水できる設備を設置していなかったとみられます。この不安定な盛り土が土石流を引き起こしたのです」

 

 こうした事態をふまえ、9日に赤羽一嘉国交相は全国にある盛り土を抽出し、災害時に危険を及ぼす場所がないか点検を開始すると発表した。

 

 じつは、この盛り土については、すでに大規模な造成地に限り、全国でどこに存在するのか調査が進められており、2020年3月に完了している。

 

 そして、国土地理院が公開している「ハザードマップポータルサイト」では、実際に地図上で確認することができるのだ。さらに同サイトでは、今回のような土砂災害が起こりうる、土砂災害警戒区域に指定された場所も、合わせて表示できるようになっている。

 

「土砂災害警戒区域は、各都道府県の資料をもとに作成したものです。おもに急傾斜地や、地滑りの危険がある場所などですが、それと重なる『大規模盛土造成地』は、危険な場所といえるでしょう」(国土交通省国土地理院担当者)

 

 さらに、三重大学生物資源学部教授で、砂防工学が専門の堤大三氏も次のように話す。

 

「すべての盛り土が、危険なわけではけっしてありません。ただ、土砂災害が発生した際に、流出する土砂の量を増やす可能性はあります」

 

“第2の熱海”になりうる場所はどこか。本誌は、前出のハザードマップを独自に調査した。全国の大都市のうち11都市について、大規模盛土造成地であり、なおかつ土砂災害警戒区域に指定されているおもな場所をリスト化した。

 

 例えば、東京都23区では、以下の都市が挙げられる。

 

・新宿区下落合四丁目
・港区高輪三丁目
・目黒区中目黒一丁目
・豊島区目白一丁目
・豊島区高田二丁目
・板橋区中台二丁目
・板橋区中台三丁目
・板橋区徳丸七丁目
・板橋区四葉二丁目

 

 そもそも大規模盛土造成地には、谷や沢を3000平方メートル以上埋めて造成した「谷埋め型」と、傾斜が大きな地盤(20度以上)の上に5m以上盛り土して造成した「腹付け型」の2種類がある。どちらも住宅や道路を建設するために、土地を平らにしたものだ。

 

 もともと平地の多い場所には少なく、大阪市や新潟市には、条件に該当する場所が存在しなかった。一方で、東京都多摩市や神奈川県横浜市などには、土砂災害警戒区域に指定されており、かつ大規模盛土造成地である場所が数えきれないほど存在した。

 

 今回、熱海の土石流が発生した直接的な原因は豪雨だったが、盛り土についていえば、別の災害にも注意を払う必要があるという。

 

「盛り土は、住宅を建設する場合は住宅盛り土、鉄道を作る場合は鉄道盛り土といって、厳しい基準があります。盛り土のための土を購入し、頑丈な盛り土を作ります。雨のときに崩れるようであってはいけません。

 

 しかし、大規模地震が発生した場合に、崩れる危険性があるんです。対策を講じる必要があるでしょうが、自治体の予算が追いついていないのが現状です」(規矩氏)

 

 今回、本誌が利用した「ハザードマップポータルサイト」は誰でも閲覧できる。“第2の熱海” に備え、自分の住む土地の災害リスクについて、確認してほしい。

 

(週刊FLASH 2021年7月27日・8月3日合併号)

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