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安倍プーチン会談で判明!日本はロシアの核兵器で囲まれていた
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2017.01.05 20:00 最終更新日:2022.03.26 11:15
「北方領土問題は、私とウラジーミル(プーチン大統領)との直接交渉しか解決の道はない」
安倍首相は事あるごとに、力強く語っていた。ロシアとの平和条約締結、北方領土返還の実現は、ソ連との関係改善に取り組んだ父・晋太郎元外相から引き継ぐ悲願だ。
そして2016年12月15、16日、山口県長門市と東京で16回めの日露首脳会談がおこなわれた。領土返還が実現すれば、総理として歴史に名を残す大きなチャンスとなるはずだったが……。
会談では、3000億円、60以上の案件での経済協力が決まった。しかし、北方領土問題は、日露双方のビザ発給緩和程度で、事実上、何の進展もなかった。
「これからもプーチンは返還に応じる気など100%ありません」と断じるのは、ロシア国営イタル・タス通信の東京支局長、ワシリー・ゴロヴニン氏。その根拠は、北方領土や周辺地域の軍事戦略拠点としての重要性からだ。
まず、内陸部のハバロフスクには東部軍管区司令部がある。極東のロシア軍は「東部軍管区」として陸・海・空軍が統合的に運用されている。
また、ロシアと中国の国境付近にあるウラジオストクには太平洋艦隊司令部がある。ウラジオストクとはロシア語で「東方を支配する街」という意味だ。ソ連時代、同市は重要拠点である秘密都市として、居住や立ち入りが厳しく制限されていた。
ウラジオストクとハバロフスクはシベリア鉄道で結ばれているが、沿線を中心に配備されているのが、射程最大1万kmを誇る核ミサイル「SS-25」ICBM(大陸間弾道ミサイル)だ。加えて、核兵器を搭載できる爆撃機「Tu-95」が極東地域に約30機配備されている。
「それだけではありません。カムチャッカ半島の街ペトロパブロフスク・カムチャツキーには原子力潜水艦の基地があります。潜水艦は、核ミサイルを搭載して周辺海域に展開されています」(ゴロヴニン氏)
ペトロパブロフスク・カムチャツキーの潜水艦基地エリアは、外国人だけでなく、自国民ですら立ち入りが厳しく制限されている。新型ミサイル「プラヴァ」を発射可能な新型原潜「ボレイ級」は、すでに2隻がオホーツク海周辺に展開中だ。
さらに、択捉島・国後島・色丹島には、ソ連時代から軍事基地がある。ロシアは11月に新型ミサイル「バスチオン」を択捉島に、射程の短い「バル」を国後島に配備し、実効支配を誇示してきた。まさにオホーツク海は、「核ミサイルの発射場」になっているわけだ。
軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が解説する。
「ソ連時代から、極東には多くの軍事基地がありましたが、経済の低迷で設備更新は止まっていました。しかしプーチン政権になり経済は好転し、近代化を進められるようになっています。新型ミサイル配備計画はプーチン来日が決まる前からあり、驚くまでもありません。もちろん、その目的は、対米戦略ですよ」
ロシアがなにより恐れるのはアメリカの軍事力だ。仮に北方領土を返還したとして、そこに米軍基地ができたら、ロシアの安全保障は大きく揺らぐ。
そして、トランプ次期大統領の登場がさらなる不安をかきたてる。
「次のマティス米国防長官は『狂犬』の異名を持つ好戦的な人物。シリア情勢への介入のため、いま中東ではロシア軍部隊の近くでアメリカ軍部隊が展開中で、偶発的衝突の可能性はゼロではない。日々、緊張が高まっています。軍事という視点からみると、日米が同盟関係にある限り、北方領土は戻ってこないでしょう」(ゴロヴニン氏)
プーチン大統領はこれまで何度も『領土はカネでは売らない』と言っていた。それなのに領土返還を期待したのは、安倍首相が浅はかだっただけなのかも。
(週刊FLASH 2016年12月27日号)