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水不足に悩むUAEで「ドローン降雨」が成功…砂漠で土砂降りも可能に
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.07.23 20:00 最終更新日:2022.12.07 18:33
最近、アラブ首長国連邦(UAE)で連日雨が降っている。7月17日にはアブダビ空港で2ミリの雨が観測された。
UAEは平年の年間降水量がわずか42ミリ、夏の間はほとんど降らない。日中の気温が50度近く、夜間でも30度を超えることが当たり前である。
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そんな雨と無縁の地で、今月は14日から18日、20日、21日に雨が降り、UAE気象当局はその様子をいくつもユーチューブに投稿している。ワイパーを強く動かさなくてはならないような大粒の雨や、アスファルトの上を茶色い水があふれるように流れていく映像もある。まさに土砂降りだ。
気象当局のツイッターやインスタグラムには#Cloud_Seeding(クラウド・シーディング)とハッシュタグがつけられている。これは雲を人工的に発達させて雨を降らす人工降雨のこと。
気象予報士の白戸京子さんに話を聞いた。
「UAEにとって水不足は長年の深刻な問題です。増え続ける水需要に対応するため、約130のダムと堤防を作りました。そのうえで最近は大規模な海水淡水化工場を建設しています。国内で使用される水の42%は、70ほどの淡水化プラントから供給されているそうです」
UAEでは、1990年ごろから人工降雨への取り組みが始まっている。人工降雨といえば、飛行機や小さなロケットを飛ばして、ヨウ化銀や塩を散布するのが一般的だ。それが “核” になって氷晶がつくられる。中国でもこの手法が取られているが、環境への影響が大きいとされている。
「どうしても水が欲しいUAEでは、なんとか雨雲を作ろうと、2016年には巨大な山を作ることが検討されました。湿った空気が山に当たると、そのまま上向きに移動し、冷えて液体に変わって雨になるわけです。
ほかにも、洪水に悩むパキスタンからパイプラインを引く案や、北極や南極から氷山を運んでくる案などが検討されましたが、計画倒れに終わっているようです」(同)
さまざまな計画を試行錯誤するなかで、今回、イギリスの協力で実現したのがドローンによる人工降雨実験だ。
「2メートルほどのドローンを飛ばし、温度や湿度を計測したところで、雲に電気を放出するのです。雲の中では、マイナスの電気を帯びた大きな粒が下の方に、プラスの電気を帯びた小さな粒が上の方に集まっていますが、そこに電気刺激を与えることで、粒が大きくなって雨粒に成長するのです」 (同)
UAEでは、昨年219回もの人工降雨を試みたという。今回の人工降雨技術は環境を汚さない可能性が高いことと、かなりの雨量が確保できることから、非常に有望視されている。