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パラシュート部隊「第一空挺団」の落下傘はどこが作っているの?

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2017.01.12 20:00 最終更新日:2017.01.12 20:00

パラシュート部隊「第一空挺団」の落下傘はどこが作っているの?

 

 防衛ジャーナリストの桜林美佐氏が、日本最強のパラシュート部隊「第一空挺団」の落下傘がどこで作られているのかをルポする!

 千葉県船橋市にある習志野駐屯地。ここに日本最強のパラシュート部隊「第一空挺団」が所在する。

 

 この精強部隊が使用する落下傘は、1939年に創業し、戦前から落下傘を手がけてきた藤倉航装が製造している。落下傘は空気を逃がしつつ強度を維持するという難しい技術が必要で、開発には生地メーカーと研究しながら50~60回の試作を重ねたそうだ。

 

 使用するミシンは厚い生地でも縫える大型で特殊なタイプ。100年前に米国で作られた年代物だ。とても機械化はできない職人技で、ほとんど手作業である。製造後は資格を持った社員が自社の航空機で降下試験もおこなっている。作って納めるだけではない「絶対に失敗は許されない」という気概と責任感で臨んでいるのだ。

 

 藤倉航装は、戦後、航空産業が禁止されると靴下作りなどで糊口を凌いだものの、朝鮮戦争で米軍から受注があったことで業務を再開した。自衛隊発足とともに再び落下傘製造を開始し、現在では、空自のF−4やF−2戦闘機の制御傘をはじめ、各自衛隊の航空機に同社製品が採用されている。

 

 ところで、最初に空挺隊員が無事に降下しても、人だけでは戦えない。トラックなどの車両も落下傘で降ろす必要がある。航空機に載せられれば、物料傘で車両を投下可能なのだ。

 

 この物料傘も日本製のレベルは非常に高い。3つの傘がついているが、徐々に大きく開くことで衝撃を吸収する。通常20Gほどの衝撃が、日本製は10G以下だという。

 

 転倒防止機能もあり、地上では風を受けて大きく引きずられないよう、落下傘が分離される仕組みにもなっている。こうした高性能の兵器は、仮に「武器輸出3原則」が見直されれば、欲しがる国が多いのではないか。

 

 じつはこれらの技術は宇宙分野にも活用されている。小惑星探査機「はやぶさ」のサンプル回収カプセルが7年間のミッションを終え、無事に地球に帰還したことは印象的だったが、この落下傘部分も藤倉航装が手がけている。

 

「長期間、低温・真空という厳しい環境で、7年もの間、一度も開かれない落下傘を作るのは初めてでした」(同社関係者)

 

 サンプルを収納したカプセルは超高速で大気圏に突入し、その衝撃に耐え地球に帰還しなければならない。そのため、自衛隊の物料傘に生かされている空気抵抗を利用した速度調節技術がいかんなく発揮された。

 

 そして落下傘が問題なく開き地上に降りても、そこは広大な砂漠である。小さなカプセルは行方不明になってしまう。そこで、鎖状のアンテナで自分の位置を知らせる仕組みが施された。その信号は捜索されている昼間だけ発信され、夜は止まる節約機能までつけられている。

 

 もちろん、着地後に強風で引きずられないよう、傘の根元を切り離すノウハウも採用された。いずれも自衛隊の物料傘と同じもので、IHIエアロスぺースの技術が使われている。

 

 自衛隊を支える技術は、宇宙分野でも有効なレベルなのだ。

(週刊FLASH 2013年10月22日号)

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