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トランプ氏が「オバマケア」を目の敵にした本当の理由

社会・政治 投稿日:2017.01.18 06:00FLASH編集部

トランプ氏が「オバマケア」を目の敵にした本当の理由

『オバマケアは風前の灯・写真:米ホワイトハウス』

 

 2017年1月10日、オバマ大統領の退任演説が行われた。そのなかでオバマケアと呼ばれる医療保険制度改革について、自ら成果をアピールした。

 

 しかし、12日には米議会上院で、13日には下院で法案廃止となる決議案が可決し、トランプ新大統領誕生のあかつきには消えてなくなることが確実となっている。

 

 世界中から大きな注目を浴びたオバマケアとは、一体何だったのだろうか?

 

「アメリカには医療保険制度はない」と思われがちだが、それは間違いだ。アメリカの会社員の場合、通常は会社が加盟している民間の団体保険に入ることが多い。しかし、その仕組みは日本よりはるかに複雑で、金銭面での負担も大きい。

 

 例えば、PPO(Preferred Provider Organization)と呼ばれるプランの場合、病気になれば、どこの病院でも治療を受けることができる。

 

 しかし、それよりも安価なEPO(Exclusive Provider Organization) と呼ばれるプランの場合、保険会社が提携している医療施設であればいいが、それ以外の医療施設にかかろうとすると、自己負担金が跳ね上がる。

 

「この病気の権威が〇〇病院にいるから通ってみたい」といった願いは、アメリカでは実現できない人のほうが圧倒的に多いのだ。

 

 こうした医療保険のプランは、毎年1月1日に自分で見直しを行う。

 

「今年は家族が出産する」から、高額だが手厚いサポートを受けられるプランを1年だけ選ぶこともできる。自分の支払える金額を念頭に置き、家族の持病などによって医療保険を決めるのが一般的だ。

 

「アメリカの医療保険制度は、日本と比べるとはるかに高額です。例えばPPOに加入するならば、安いプランでも年間250万円ほど負担しなければなりません。また、保険に入っていても、実際に治療を受ければ、一定の自己負担金がかかることもよくあります」

 

 そう教えてくれたのは、永住権を持ってアメリカの企業に勤める日本人男性Aさんだ。

 

 アメリカの場合、低所得者や障害者、高齢者は国が医療費をカバーしてくれるシステムになっている。問題は、真面目に働いているワーキングプア層なのだ。医療保険には高額なため入れず、いざ病気になったら莫大な医療費がかかるため、最悪、自己破産するケースもあるのだ。そういった人々を救うために生まれたのがオバマケアだった。

 

 ところが、実際には、思った通りの成果を上げることはできなかった。オバマケアに加入する低所得者層の患者が押し寄せるのを嫌い、受診できる病院は減る一方。それによりオバマケアは徐々に値上がりし、さらにはほかの医療保険の金額も上がるという、本末転倒の事態に陥った。

 

「アメリカの病院で手術を受けると、内科、外科、麻酔科というように、同じ病院でも別々に請求書がやってきます。3カ月くらいしないと、実際にいくらかかったのかさえわかりません」(Aさん)

 

 こうした複雑なシステムも医療費を押し上げる一因だという。

 

「オバマケアはなくなってしまいますが、新大統領は何らかの代替案を打ち出すと言われています。放っておけば、また病院に行けなくなる人が出てきてしまいますからね……」(Aさん)

 

 トランプ氏は、ワシントン・ポストの取材に「皆保険」にしたいとの意向を示している。だが、現在、アメリカには保険未加入者が数百万人いるとされ、実現は容易ではない。トランプ新大統領の手腕が試される。

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