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中等症患者が切望しても入院できず…本誌記者が覚悟した「コロナ在宅死」

社会・政治 投稿日:2021.08.20 06:00FLASH編集部

中等症患者が切望しても入院できず…本誌記者が覚悟した「コロナ在宅死」

写真・朝日新聞社

 

 8月13日現在、新型コロナウイルス感染症の入院患者が東京都で3700人を超え、自宅療養者も2万人を上回り、過去最多となった。小池百合子都知事は、日本列島を襲っている記録的大雨と同じくコロナ禍も「災害」だと表現し、感染拡大による医療崩壊は新たな段階へ達した。

 

 

「都内で受入れ先が見つからない患者は、埼玉県内の病院へ搬送されるケースもあり、五輪前とは状況が明らかに違います。基礎疾患がなく、大きな病気に罹ったこともない40代~50代の人が重症化するなど、これまで見たことのない次元に入ったともいわれています」(社会部記者)

 

 8月5日に政府が示した患者療養の新方針では、入院は重症患者、中等症患者で酸素吸入が必要な人、重症化リスクがある人に限られ、それ以外は自宅療養が基本となった。

 

 しかし現実は、今すぐに入院を必要とする患者の多くが自宅療養を余儀なくされ、医療の機能不全が露呈している。

 

 8月7日に陽性が判明し、医師からは「中等症IとIIの間」と診断された本誌記者は現在、自宅療養中。当初は自宅に運び込まれた酸素濃縮器が手放せず入院を切望していたが、ついに病床は見つからなかった。幸い、現在体温は平熱近くまで下がっている。

 

「8月5日の昼から咳が出はじめ、なんとなく調子が悪いという程度だったので、放っておいたら、6日の夜にかけて発熱。咳と喉の痛みが半端ない状態になりました。体温はこのときが38.0度と最高で、平均37.5度くらい。7日の昼に病院で検査したら陽性でした。熱はその後10日くらいまで下がりませんでした。咳が止まらず血中酸素濃度がどんどん下がって……。(住んでいる)区の保健所は、とにかく入院させたくないように感じました」

 

 自宅療養を続けさせたいとしか思えない保健所の対応。本誌記者は療養期間中、保健所や病院からの電話だけの「診察」を受けたという。

 

「パルスオキシメーターも酸素濃縮器も、連絡してから2時間くらいで家に届き、あとは電話診察をするというスタンスでした。あまりにしんどくて、入院したいと言っても『手続き中』『お待ちください』の繰り返しなんです。そのうちに治るか死ぬかするだろう、と思っているように感じました。

 

 呼吸ができず、頭もまわらないのでどうすればいいのか途方に暮れました。保健所、医師からそれぞれ電話がくるので面倒くさいし、両者間で情報共有ができていないんです。何度も体温、酸素濃度を尋ねられ、言ったはずの症状すら伝わってない。

 

 保健所の職員も区役所から臨時で来ているのか、前にこちらが話した症状をちゃんとメモしてるのか? と感じました。なぜかパルスオキシメーターが2個も届けられました。これも保健所と医師との連絡が徹底していないからでしょう。

 

 最初の3日は、保健所から夜も電話がきましたが、今は朝9時ごろに1回だけ。内容は相変わらず体温と酸素濃度を聞いて、『入院手続き中です』と言って切るだけです」

 

 一方、軽症患者の場合は自宅療養が原則だが、同居者がいればホテル療養になることもある。都内に住む20代男性は、自治体からホテルに入るように指示されたという。

 

「8月2日に体調悪化、3日にPCR検査をして5日に陽性判定。区にすすめられるまま8日からホテル療養を開始し、12日まで滞在しました。私の場合は同居者に迷惑をかけたくなかったので、ラッキーだったかもしれません」

 

 入院を求めながら自宅で苦しむ中等症患者がいる一方、簡単にホテルに入れる軽症患者もいる。一概に両者を比較できないが、今の施策が本当に適切か考えさせられる。

 

 このまま自宅療養者が増え続ければ、「在宅死」が広がりかねない、まさに緊急事態だ。

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