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豪雨で都心の盛り土も崩壊する!崩れるサインは「水」「コケ」「ひび」
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.08.22 06:00 最終更新日:2021.08.22 06:00
「熱海・伊豆山で盛り土が崩れて土石流が発生しましたが、これで “盛り土=危険” と決めつけてしまうのは早計です。しかし、近年は雨の降り方が明らかに変わってきました。都会に暮らす方々にも、ぜひ日ごろから土砂災害への心構えを持っていただきたいと思います」
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そう語るのは、神戸市立工業高等専門学校の鳥居宣之教授(斜面防災工学)だ。熱海の土石流は、降りつづいた雨が違法な工事がおこなわれてきた盛り土に浸透したことで発生した。
「盛り土は谷部や、不安定な傾斜地に造成されることが多く、雨水を含むと地盤が脆くなりやすい傾向があります。熱海で起きたように、地下で水が溜まり飽和状態になり、崩落に至るのです」(鳥居教授)
そもそも、自宅や職場が盛り土の上に建っているのか、見分ける方法はあるのだろうか。東洋大学理工学部の及川康教授(災害社会工学)がこのように提案する。
「国土交通省が運営する『重ねるハザードマップ』というサイトがあります。PCやスマホで見ることができ、自分が暮らす町の洪水や土砂災害、高潮などの危険度を簡単に調べることができます。ここで、『大規模盛土造成地』も調べることができるんです」
「ここに表示されるすべての盛り土が危険だというわけではありませんが、潜在的な危険が潜む場所として認識しておくことや、もともとの土地の成り立ちを知っておくことは、けっして無駄ではありません」(及川教授)
では、実際に盛り土が危険な状態になっているかどうかを調べるヒントはあるのか。
京都大学防災研究所の釜井俊孝教授(応用地質学)はこう語る。
「多くの宅地が谷埋め盛り土の上に造られており、崖際では少しでも平地を増やそうと、腹付け型の盛り土が張りつけられています。しかし、住宅が建てられて直接見ることができなくなった盛り土の危険性は、外見からはわかりにくいのが現状です」
前出・鳥居教授は、適切な盛り土の条件として、
(1)十分に土を締め固めている
(2)その土地に合った土を使用している
(3)排水処理がしっかりされていること
を挙げる。
「腹付け型の盛り土の場合、擁壁(ようへき、盛り土を保持する囲い壁)の背後の盛り土内に雨が浸透すると、中がダムのような状態になり、水が溜まってしまいます。そのために水抜き穴や排水溝を設けているのですが、それがゴミや泥で目詰まりしていると、危険度が高いといえます」
■都内の住宅街で危ない盛り土を発見
冒頭の写真は、都内のとある大規模盛土造成地で撮影したものだ。盛り土内に水が溜まりすぎたため、
(1)水が染み出して
(2)コケが生え
(3)ひび割れ
が発生している
逆に言えば、これらは外見から判断できる数少ない「危ない盛り土」のヒントなのだ。
もともと、盛り土による土砂災害は、豪雨よりも地震によって起きるケースが多い。
「豪雨より地震のほうが、盛り土には大きな力が加わるためです。ところが、最近の異常気象によって、豪雨だけでも谷埋め型盛り土が崩れ、流動化するケースが増えてきました」(釜井教授)
そして、今後注意しなければならないのが、豪雨と地震が互いに作用し合って引き起こされる、被害の拡大だ。鳥居教授が語る。
「1995年の阪神・淡路大震災では地震の直後に、一方の2004年の新潟県中越地震では地震の3カ月前に豪雨に見舞われていたことで、斜面崩壊が多発しました。熊本も、2016年の地震のあとにたび重なる豪雨に見舞われています。
地震でダメージを受けて完全には壊れなかった斜面がその後の降雨によって崩れたり、豪雨で水が溜まった盛り土が地震で崩れたケースが数多くありました」
東日本大震災以降、地震は活動期にある。前出の及川教授が、防災の心構えを語る。
「日ごろからハザードマップをチェックし、リアルタイムで土砂災害などの防災情報を伝えてくれる気象庁運営のサイト『キキクル』などで、自ら情報を収集し、安全を確保するようにしてください」
写真・梅基展央 取材/文・鈴木隆祐
(週刊FLASH 2021年8月31日号)