社会・政治
本物の「日本ワイン」誕生を前に苗木不足で困った!
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2017.01.25 06:00 最終更新日:2017.01.25 08:35
ワインといえばフランスやイタリアといったイメージだが、最近は日本全国に200以上のワイナリーがあり、消費量も増えているという。
「東京から車で2時間行けばワイナリー巡りができるので、最近は家族や友人と遊びに行くことが増えました。その土地の美味しいものを食べて、ワインを飲んで、数本買って帰るのが定番ですね。運転手になると飲めないので、次回は気に入ったワイナリーの近くに泊まろうと思っています」
と、都内に住む40代の男性が教えてくれた。
しかし、日本メーカーが作っている「国産ワイン」には海外産のブドウが使われていることがある。むしろ、そちらのほうが圧倒的に生産量は多いのだ。
現在、日本で製造さえすれば「国産ワイン」と名付けることができる。海外で作ったワインを輸入し、日本でビン詰めさえすれば「国産ワイン」になるというカラクリだ。
その一方で、国内のワイナリーの醸造技術が高まり、海外のコンクールで入賞を果たす本格派のワインも誕生するようになった。それまでの大雑把な「国産ワイン」という名称をやめて、きちんとした日本製のワインを広くアピールしていこうという流れが生まれた。
そのため、国税庁は、2018年10月30日以降、日本国内で栽培されたブドウだけを使って国内醸造されたものだけを「日本ワイン」と表示できるよう決めた。
国税庁に話を聞いてみた。
「消費者の誤解を避けるために、表示の方法をわかりやすくすることにしました。法律が施行された後は、違反すれば当然罰則が科されることもあります」
今までのように海外で栽培されたワインやブドウを使用する場合は「国内醸造ワイン」となり、明記が義務づけられる。海外産のブドウを使った場合は「濃縮果汁使用」、輸入したワインの瓶詰めだけを行った場合は「輸入ワイン使用」と、こちらもラベルに明記が必要だ。
これで、だいぶ紛らわしさが減るだろう。
だが、高まる「日本ワイン」人気にも問題点が指摘されている。ワインの苗木が圧倒的に不足しているのだ。需要の急激な高まりに対し、生産量が追いつかなくなっているという。
ブドウの苗木を植えても、ワインが収穫できるようになるまでには数年を要する。美味しい「日本ワイン」が手に入らないのでは、せっかく出てきた人気に水を差す事態になりかねない。
こうした事態に対し、メルシャンを擁するキリングループの研究所では、植物の苗を大量に培養する技術をワイン用のブドウにも適応できないかという研究が始まった。また、山形県や長野県などの苗木の産地では、県や農林水産省と協力して、生産量を増やす努力を始めているという。
「日本ワイン」の人気が一時的なブームに終わるのか、しっかりと日本の食卓に根づくのか――今がその分岐点なのかもしれない。