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中村格・新警察庁長官は本部長未経験でトップ就任…「一度は現場を」の不文律が崩れ、“政権の腰巾着”だけが出世する
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2021.10.16 17:30 最終更新日:2021.10.16 17:32
「国民生活の安全安心を守るため、全力を傾注する」
9月22日、全国の警察組織の頂点たる警察庁長官に新たに就任した中村格(いたる)氏(58)は、就任の記者会見でそう抱負を語った。
晴れて29代目の長官になった中村氏だが、歴代長官と違うところがある。各道府県警察の長たる「本部長」の経験がないまま長官に就任したことだ。
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同日に就任した警察庁の露木康浩次長(58)や、9月16日に就任した警視庁のトップである警視総監の大石吉彦氏(58)も本部長経験なし。警察トップ3がいずれも本部長未経験者になった。
「これは異例のことですよ。たとえば前任の松本光弘氏は神奈川県警察本部長を経験しましたし、その前の栗生俊一氏は徳島県警察本部長でした。県警の本部長とは、その地方の警察をまとめ上げるという、いわば現場のトップ。
もしも県警で不祥事が起きれば、その責任を取らないといけない存在です。そこで警察の実状に触れ、実績を残せた人間が上りつめるのが、これまでの警察庁長官でした。警察トップは本部長を経験しておくべきという不文律がこれまでは存在していたんです」(全国紙の元社会部記者)
中村氏の経歴は華々しい。東大卒業後、1986年に警察庁入庁、千葉県警本部捜査第二課長などの刑事畑を経て、在タイ日本国大使館の一等書記官も経験している。また、旧民主党政権から自民党の第2次安倍政権にかけ、5年半にわたり官房長官秘書官を務めている。
「中村氏は警察官僚のなかでも超優秀だといっていいでしょう。確かに地方の県警本部長は経験していませんが、海外への赴任経験もあり、経歴は申し分ない。
ただ、警察庁長官は公安部も経験するものですが、中村氏にはその経歴もありません。秘書官を何度もやっているのでその暇さえなかったということでしょう」(警察ジャーナリストの小川泰平氏)
一方、「“あの事件” のことを考えれば、政権に気に入られて出世したにすぎないでしょう」と前出の元記者は指摘する。
“あの事件” とは、2015年に起きた、ジャーナリストの伊藤詩織さん(30)が、山口敬之(のりゆき)・元TBSワシントン支局長(53)にホテルで性的暴行を受けたと被害を訴え、山口氏に準強姦の容疑で逮捕状が出されたものの、執行直前、当時警視庁刑事部長だった中村氏の判断で “握りつぶされた” というものだ。
山口氏はTBS政治部時代に安倍晋三元首相と親しくしており、中村氏が官邸に忖度した結果ではないかと一部で報じられている。
ある警察OBが語気を強めてこう話す。
「結果的に山口氏は嫌疑不十分で不起訴となりました。しかし、問題はそこではないんです。
署長が逮捕状を出すときは、さまざまな捜査を尽くし、また逮捕状を出す反響も踏まえて判を押すんです。それを刑事部長が握りつぶすなどあってはならないこと。所轄の努力や署長の決断を踏みにじる行為ですよ。
中村氏はそれをやった。秘書官として一度政治の世界に足を踏み入れてしまうと、どうしてもそっちに目が向いてしまう。警察官僚がそんなことではいけないと思います」
就任会見で中村氏は、そのことを問われ「組織として捜査を尽くしたうえで検察に送致した。捜査の過程について具体的に言及するのは控える。私は常に法と証拠に基づき適切に判断してきた。法と証拠以外を考慮して捜査上の判断をしたことは一度もない」と突っぱねた。
前出の元社会部記者は、警察官僚が政権に取り込まれているのではないかと危惧する。
「警察は、政治家を逮捕しなければいけない場合もあります。ところが中村氏は官房長官秘書官を5年も務めている。警察の独立性が失われ、政権の言いなりになりかねません。
警察は、自覚的に政権とは一定程度の距離を持つことが必要です。警察官僚が自分の出世ばかりに気を取られ、政権の腰巾着となってしまうようでは、とうてい国民の信頼を得ることなんかできません」
警察官僚にとって、事件は会議室でも現場でもなく、官邸で起きているようだーー。
写真・時事通信