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トランプ政権で日本は「交渉相手」から「交渉材料」に転落

社会・政治 投稿日:2017.02.14 17:00FLASH編集部

トランプ政権で日本は「交渉相手」から「交渉材料」に転落

 

トランプ大統領就任で、戦争が起こるという人がいるが、大間違いだ。トランプは大きな戦争=ラージ・ウォーはしないと決めている。むしろ、米中露の三大国が協調し、大きな戦争を避ける体制が出来上がる」

 

 米国大統領選で「トランプ勝利」を予言した評論家の副島隆彦氏が語る。

 

 トランプ大統領は、「プーチンの友人」といわれるレックス・ティラーソン氏を国務長官に、ロシア系ユダヤ人のスティーヴン・ムニューチン氏を財務長官に起用した。

 

「2014年のウクライナ紛争での対露制裁を解除し、米露は核軍縮に向かう。トランプの念頭にあるのは、まず『経済の血液』であるエネルギー政策だ。北極海での巨大な天然ガス開発が動きだす。そして国民の熱意、熱狂(やる気)を引き出そうと、トランプたちは着々と計画を練っている」

 

 対中強硬派のピーター・ナヴァロ氏を新設の国家通商会議(NTC)のトップに据え、中国の人民元安誘導政策を批判するウィルバー・ロス氏を商務長官に起用するなど、中国に対して厳
しい姿勢を取るかに見える。だが……。

 

「昨年12月2日に、93歳のキッシンジャー元国務長官が北京に飛んで、習近平国家主席と会談したことがきわめて重要だ。ここで、米中は、『軍事衝突をしない』と決めた。このあと、トランプは台湾の蔡英文総統と電話で13分話し、『ひとつの中国』政策の見直しに触れた。だが、あくまで『米中は戦争をしない』、という大きな枠組みのなかでの陣取りゲームが始まったに過ぎない」

 

■米国は巨大企業経営者の連合体に生まれ変わった

 

 トランプ政権を、1980年代のレーガン政権の再来とする人は多い。だが、明らかに違う点がある。

 

「レーガン政権は、本物の穏やかな保守だったのに、ネオコン(好戦派)に乗っ取られた。財政赤字を減らす路線だったのに、軍備増強だけはやり続けた。トランプはこの失敗を犯さないため、ネオコンを一掃する態勢を築いた」

 

 ネオコンは共和党内だけの勢力ではない。人道やグローバリズムを掲げて、地域紛争に介入する民主党内ネオコン(ヒラリー派)こそ厄介なのだ。

 

「ジェームズ・マティス国防長官ら軍人たちは、2003年のイラク戦争以降、散々な目にあってきた。彼らはヒラリー派を忌み嫌っている。だから、真性の共和党ネオコンであるジョン・ボルトン国務副長官が、各省に残るヒラリー派を一掃する。人事の妙味だ」

 

 米国内のヒラリー派を追いつめ、米中露三大国の協調体制が成立する。だが、反トランプ勢力も戦線構築中だ。日本は蚊帳の外に置かれる。昨年12月の日露首脳会談がいい例だ。トランプが大統領選に勝利した途端、プーチンの日本への態度が変わった。

 

「もはや、日本は交渉相手とみなされず、米中露の大国政治の交渉材料に成り下がった。昨年末の日露首脳会談は大失敗だ。世界から見れば、『日本は北方領土をロシアの領土と認めた』ことになる」

 

 安倍首相はいちはやく無節操にトランプの下に駆け寄ったが、ここで、「カジノ解禁」を突きつけられた。

 

「娘婿のジャレッド・クシュナーが同席していた。会談後、安倍首相が無理やりカジノ法案を通過させたのは、クシュナーの要求だ。彼は『カジノ王』と呼ばれる、ラスベガス・サンズのシェルドン・アデルソン会長を代弁した」

 

 このまま安倍政権に外交をやらせては、日本は負け続ける。

 

「トランプ政権は『超大企業経営者の大連合による政治』と考えなくてはいけない。移民政策、エネルギー政策と貿易赤字削減、そして米国内の雇用創出を本気でやる。ワシントンの官僚たちを干し上げ叩きのめす。官僚による政治を滅ぼす気だ。

 

 日本もボンボン政治家や官僚上がりに政治をやらせず、トヨタなど世界の現実を知っている大企業経営者の感覚を前面に出して交渉すべき。厳しい経営感覚だけが唯一、トランプ政権に通用する」

 

 米国は、好戦的な超大国から巨大企業経営者の連合体になった。この変化を見誤ってはならない。

 

<副島隆彦プロフィル>
 評論家。1953年生まれ。日本属国論とアメリカ政治研究、経済予測を柱に、精力的に執筆・講演活動を続けている。おもな著書に『Lock Her Up ! ヒラリーを逮捕、投獄せよ』(光文社)ほか。トランプ大統領誕生を2016年5月から予測して当てた

(週刊FLASH 2017年2月7日号)

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