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「ネタバレで満足する人は本当のファンじゃない」…『GANTZ』奥浩哉氏、吉田戦車氏ら嘆く “悪質サイト” の現状
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.02.13 06:00 最終更新日:2022.02.13 06:00
「ネタバレサイトというのは、海賊版そのものより悪質なんじゃないですか。どんどん取り締まってもらいたいですね」
こう怒りを露わにするのは、『おぼっちゃまくん』『東大一直線』で知られ、「週刊FLASH」でも「よしりん辻説法」を連載する漫画家・小林よしのり氏(69)だ。
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2月3日、漫画『ケンガンオメガ』(原作:サンドロビッチ・ヤバ子、作画:だろめおん)の内容を無断でインターネットに公開していたネタバレサイト「漫画ル」の運営法人及び代表者が、福岡県警南署によって書類送検された。
2019年1月から運営されていた「漫画ル」は、作品を無断転載する「海賊版サイト」ではなく、漫画そのものの転載は少ないものの、セリフや情景をテキストとして掲載する「ネタバレサイト」と呼ばれる部類だ。
権利侵害にあった『ケンガンオメガ』を連載する小学館のマンガワン編集部は「あらゆる侵害サイトに対し、今後も断固たる対応を続けて参ります」と発表した。
ただ、『将棋めし』『盤記者!』などの人気作がある松本渚氏は「ストーリーを全部載せるのはアウトですし、お金を稼いでいたのは許せません」と前置きしたうえで、こんな思いも吐露する。
「SNS最盛期のいま、口コミの力は強いので、ネットで感想を載せてもらえるのはありがたいんです。そうしたネットで出合った情報から(公式を)購読する気持ちもわかるので、完全な “線引き” は難しくもありますね」
映画化もされた『GANTZ』『いぬやしき』の作者・奥浩哉氏(54)はこう話す。
「ネタバレサイトを求めている人や利用者の側にも、問題があると思いますね。サイトを作っている人も、また手軽な文字情報でネタバレを得て満足してしまう人も、漫画家から見れば “本当のファン” じゃないなと感じます。やはり、コマ割りや構成といった作品全体を鑑賞してほしいです」
日本の興行収入記録を塗り替えた映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』に続き、昨年公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版』も興行収入100億円を突破。現在公開中の『劇場版 呪術廻戦 0』も興行収入100億円目前と、2019年ごろから日本は空前の「漫画・アニメブーム」。
だが、その裏で出版社とネット社会との暗闘が繰り広げられ、摘発が後をたたない。
2019年に「漫画村」の運営者が逮捕されたが、その後も “いたちごっこ状態” で違法サイトが閉鎖と誕生を繰り返している。さらには海賊版サイトに利用者を誘導することで収益を得る『リーチサイト』までもが存在し、小学館は「漫画ル」と同時にリーチサイト「漫画天国」の摘発を発表した。
『感染るんです。』などで知られる吉田戦車氏(58)が、リーチサイトへの思いを述べる。
「無断転載していなくとも、海賊版サイトに(ユーザーを)誘導している時点で、許すことができないのは一緒です。ネタバレサイトも、漫画を勝手にノベライズしたようなもの。これはイカンですよね」
最後に、前出の小林氏は語気を強めて「ネタバレは本当に許せない」と言う。
「漫画というのは、絵にセリフを入れて “生きたセリフ” にしていくもの。絵とセリフが一体となって、読んでいる人の頭の中に飛び込んでくるわけです。そこを勝手に分けて作品を破壊しているのだから、違法うんぬんの前に漫画表現そのものに対する侮辱ですよ」
漫画家たちの言葉に「怒り」はこめられている。しかし、ファンや社会への意外な「嘆き」や「失望」も見て取れる。巨大な “漫画市場” から生まれるものは、光も闇も一筋縄ではいかないのだ。