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「ただでさえ“人殺しの真似”と揶揄されてきたのに…」ベテラン愛好者が憤る、サバゲー女性ユーチューバーの「ロシアVSウクライナ」炎上事件
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.03.03 16:00 最終更新日:2022.03.03 16:20
ロシアのウクライナ侵攻のタイミングで2月25日に「ロシア VS ウクライナ 2022」と題した動画を公開したサバゲー(サバイバルゲーム)ユーチューバーのサバおかさん。現在もウクライナで多くの死者が出る戦闘が続いている中、この動画を投稿したことに対して「不謹慎だ」という批判が殺到し、現在、動画は非公開となっている。これを受けてサバゲー専門店は、サバおかさんの出入り禁止を発表するなど愛好者の間でも議論が沸騰している。
「はっきりいって迷惑です。YouTubeなどを使った動画配信が容易になってから、こういう人が増えています」
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そう語るのは、古くからのサバゲー愛好家で、多くのベテランとともに90年代から仲間内だけで楽しんできたというベテランサバゲーマーのX氏だ。彼の仲間には著名な漫画家やデザイナーもいて、お忍びで参加するという。
「私たちはあくまで自分たちが楽しむためにやっています。誰に見せるわけでもない。マナーを守るのはもちろん、内々で楽しむことに徹しています。それが最近崩れていて……」
近年は動画配信サービスを使って、自分たちのサバゲーの模様を伝えるチームが多いという。X氏はそうした風潮を快く思っていなかったため、この取材を受けた。
「堅苦しいかもしれませんが、昔からの愛好家は、自分たちが手にしているのが人殺しのための銃を真似たもので、ゲームそのものも多くの人が死ぬ戦争を真似ていると自覚しています。だからこそ、マナーを遵守するのは当然だし、外から観た時、我々がどう見えるのかという視線に敏感でなければいけません」
彼の話によれば、一昔前まではサバゲーに対する風当たりが非常に強かったという。「大人の戦争ごっこ」というホビーだが、日本でもかつての大戦で300万人以上(日本政府発表)の命がアジア、太平洋の戦場で失われている。筆者の家系もフィリピンで戦死した者や、勤労動員で空襲により焼死した者がいる。そして父方の大半は長崎の原爆で、骨すらどこにあるかわからないままに消えた。
「私にもそうした先祖はいます。もちろんそれとこれとは別、という意見もあるのでしょうが、そう思わない人がたくさんいることは、長年の愛好家としてわかっています。だからこそ気をつけなければいけないし、私はサバゲーで遊んでいる様子を大勢の前で、ましてや世界中に晒すのはいいことだと思えません」
実際、今回はサバおかさんに多くの批判が寄せられた。
「批判は当然です。いまも命を落としている人が出ているウクライナ情勢を真似た戦争ごっこを全世界に配信しようとしたわけですからね。世界中が、ロシアが起こした軍事行動に対して、悲しんだり、怒ったりしている。それをヘラヘラ笑いながら真似るなんてサバゲーのイメージダウンどころか、国辱モノですよ」
彼の仲間には元自衛隊員もいるという。あくまでサバゲーという趣味を内輪で楽しんでいるだけで、「戦争を楽しむ」ということが、本職の人間にどう思われるかということも知っている。どんなホビーでも他者に迷惑をかけない限り自由だが、公開配信すればサバゲー界隈やファンのあいだだけの話ではおさまらない。
「昔は、一部のサバゲー愛好者がその辺の空き地でサバゲーをやったりして、マナーが悪かった。それを一生懸命変えてきたのが昔からの先輩や仲間たちです。だからこそ今回の炎上に対するサバゲー愛好家たちの対応は早かったのです」
確かに迅速だった。各地のミリタリーショップやサバゲーフィールド(サバゲーを楽しむための施設)は抗議声明とともに、サバおかさんの出入り禁止を宣言した。ミリタリーショップの「ウィリーピート東京」は「今の情勢の中、サバイバルゲームとは関係なく、モラルのない投稿をするのは如何なものかと思います」とTwitterで発言。サバゲーフィールドの「つくばサバゲーランド」も「この方のコンテンツは、サバイバルゲームの健全な発展を阻害するものであり、現在進行形で侵略を受けている当地の人々に対する無配慮さは目に余るものがあります。よって、この方の当フィールドの利用は勝手ながら禁止とさせて頂きます」とツイートし、共にサバおかさんを出禁とした。他の施設やショップも続いたという。
「少なくとも私たちは、サバゲーを純粋なスポーツとして楽しんでいます。それでもサバゲーが銃を人に向けて撃つ、戦争を模倣した行為であることには変わりありません。それなのに開戦に合わせるかのように実際の戦争をあんなおどけた調子で配信するなら、私たちはそんな人を断固として否定しなければならないのです」
サバおかさんはこの件で『再生数稼ぎだった』『ネタにしている』のがいけなかったという趣旨の謝罪動画を投稿している。
「『時期的にバッチシ』なのがいけなかったと言っていましたが、あまり誠意のある謝罪だとは思いません。少なくともメディアに出演するようなサバゲーマーとして復帰するのはもう無理ではないでしょうか」
あくまでX氏一個人の意見ではあるが、いまウクライナで起きていることはもちろん、自分の大好きなホビーのイメージを損なわないよう、サバゲー界全体が努力してきた歴史を鑑みれば当然だろう。特定の愛好家による趣味の世界、いわゆる“界隈”の話だとしても、世界中に配信した時点で内輪話ではなくなる。その自己顕示に溺れた行動が、時として自分の首を絞めることになってしまうことを、忘れてはならない。
日野百草
ノンフィクション作家、俳人。 1972年、千葉県野田市生まれ、日野市在住。日本ペンクラブ会員
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