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Facebookのユーザー離れが深刻化…Google日本法人、LINE元代表ら語る “おっさんSNS” の生存戦略

社会・政治 投稿日:2022.03.17 06:00FLASH編集部

Facebookのユーザー離れが深刻化…Google日本法人、LINE元代表ら語る “おっさんSNS” の生存戦略

FBロゴをバックにスピーチするマーク・ザッカーバーグCEO

 

Facebook(以下、FB)はもともと、CEOのマーク・ザッカーバーグがハーバード大の仲間とともに作った、女子学生を品評するネットコミュニティでした。

 

 発足当初から人権やプライバシーが軽視され、“邪悪” なイメージがつきまとっていました。そんなもともとの体質が、のちに問題視されることになった事例にことごとく繋がっているのではないでしょうか」

 

 

 そう指摘するのは、グーグル日本法人の元代表の辻野晃一郎氏(64)だ。グーグルのかつての行動規範「邪悪になるな」を引きながら、辻野氏はFBの問題点を語る。

 

「特にブレグジット(2020年のイギリスのEU離脱)の賛否を問う国民投票の際に起きた個人情報の不正流出や、トランプが米国大統領になったときのフェイクニュースやフェイク広告の氾濫は目に余るもので、FB自身の関与や責任も問われました。アメリカでは利用者の不信感が高まり、性別や世代を問わず “FB離れ” の一因にもなっています」

 

 いま、GAFA(グーグル・アップル・FB・アマゾン)に代表される巨大企業に富が集中し、社会に不均衡が生まれている。その是正に向け、真っ先に槍玉に挙げられたのがFBだ。

 

「2021年、FBはMetaと社名も変えて、メタバース(3次元仮想空間)に経営資源を集中する方針を示しました(※本記事ではFBで社名の表記を統一)。

 

 メタバースがこれからのコミュニケーションの鍵を握ることは間違いなく、マイクロソフトやソニーなども、M&Aなどを通じてこの分野の強化に積極的です。

 

 しかしそれは、FBというSNSにケチがついたことをザッカーバーグ本人が認識していることの証拠でもあります。社名の変更も、半分は批判を逸らすための目くらましでしょう」(辻野氏)

 

 一方、LINE元社長の森川亮氏(55)は、さまざまなSNSがあるなかで、日本でLINEが広く受け入れられた理由をこう分析する。

 

「SNSにはそれぞれ長所と短所があり、ユーザーは使い分けています。スピーディで簡略なやり取りを好むデジタルネイティブ世代に受け入れられたのがLINEといえるでしょう。スマホでの利用に特化し、誰もが使いこなせるメッセージサービスをと、使命感を持って作り上げたものでした」

 

 LINEにはスタンプ機能に象徴される遊び心があり、それがマネタイズされる。一方でFBの収益源は広告収入が中心で、国内では利用のされ方も硬直化している。

 

「今の日本では、FBはメッセンジャーで直接コミュニケーションを取り、あとは知り合いのタイムラインを眺める、という使われ方に落ち着いているのではないでしょうか。アナログ世代の居場所としては貴重で、温かい雰囲気が漂っていますが、それを受けつけない世代がいるわけです」(森川氏)

 

 森川氏は、印刷物や手紙が完全にはなくならないように、FBのような従来型のSNSは今後も、一定の支持を獲得しつづけるだろうと予測する。

 

「ただ、過度に丁寧なメールを書く人が、今のビジネスの現場では『仕事が遅い人』『昭和の感覚の人』というネガティブなイメージを持たれることもあるように、SNSでも、見てすぐ結論が伝わるコミュニケーションが主流になっていくと思います。FBは、長文を読むことが苦にならない高齢ユーザー向けに固定化していくでしょうね」(森川氏)

 

 しかし、FBが “おっさん” のためのSNSとして生き残る道も平坦ではない。SNSでのコミュニケーションについて、作品に取り上げることが多い法政大学教授で作家の島田雅彦氏(60)の話は、森川氏の分析を裏づける。

 

「学生からのレポート提出のメールのなかには挨拶文がなく、ただファイルを添付しているだけのものがあるんですよ。だから、入学時にマナー講習会があるくらいです」

 

 島田氏自身はFBを利用しているが、自著の告知などに用途を絞っているという。

 

「FBは、基本は内輪に向けた意見表明の場です。しかし、内部のアルゴリズムによって、利用者が無意識に “特定の意見” に凝り固まっていく傾向は見過ごせません。コピペのような投稿ばかり見せられては、うんざりしてしまいます」

 

 昨年、米議会の公聴会で、元社員による衝撃的な証言が飛び出した。IT評論家の三上洋氏(57)が解説する。

 

「FBが自社の利益を優先するあまり、ユーザー間にさまざまな対立を引き起こしてきたことを認めたのです。また、FB傘下のインスタグラムでは、ダイエットに励んだ少女が、インフルエンサーがアップした画像を鵜呑みにし、心身を病んだケースが紹介されました」

 

 今年1月には、FBに対し米連邦取引委員会が起こした独占禁止法に基づく告訴が受理された。委員会は、FBによるインスタグラムの買収と、欧米では支配的なメッセージアプリのワッツアップの買収をともに白紙に戻そうとしている。三上氏が語る。

 

「2021年、FBの1日あたりのユーザー数が、創業以来初めて減少に転じました。FBの収益に貢献してきた2社の買収が白紙となれば、FB本体は立ち行かなくなるでしょう」

 

 三上氏の見立てでは、FBが首尾よくメタバース事業を本格化させるには、最低あと2、3年はかかるという。

 

「それまでに、再び道義的な過ちを繰り返せば、FBが解体・消滅といった事態に陥る可能性も否定できません」

 

 2004年の創業以来、最大の危機にあるFB。新局面でも、ガリバーでありつづける道は険しい。

 

取材/文・鈴木隆祐

 

( 週刊FLASH 2022年3月29日・4月5日号 )

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