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“首切りバブル”をよぶ「労働移動支援助成金」のカラクリ

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2014.03.07 07:00 最終更新日:2016.03.01 21:45

 春闘真っ盛りだ!株高・円安で好調なアベノミクス。その追い風をうけて、新聞報道も賃上げに楽観的だが、はたして全企業がアベノミクスの恩恵を受けているのか?

 

 安倍政権が昨年6月に発表した日本再興戦略「第3の矢」の目玉は、当初「解雇規制の緩和」だった。だが、同年7月の参院選を意識して直前で引っ込め、その代わりに出してきたのが「雇用維持から失業なき労働移動の実現」という雇用対策の大転換だった。

 

 要はこれまでの製造業中心の成熟産業から、低賃金と人手不足でなり手が少ない健康・医療・観光、農業・食品関連などへ円滑な人材移動を促すのが狙い。その柱となるのが、従業員の再就職を推進した企業に支給していた「労働移動支援助成金」の大幅な拡充である。

 

 その財源は、「雇用調整助成金」からの移し替えだ。これは雇用を維持するための助成金だったが、企業の不正受給も多く、今後は予算が大幅にカットされていく予定だ。

 

 一方の「労働移動支援助成金」は、昨年度わずか2億円の年間予算で中小企業にのみ支給していたが、2月6日に成立した補正予算には一気に300億円が盛り込まれ、今月1日からは大企業にも支給することになった。企業の人事・賃金問題に詳しいジャーナリストの溝上憲文氏がこう説明する。

 

「大量の余剰人員を抱えているのが大企業だからです。’11年9月、内閣府は日本企業が抱えている余剰人員数を見積もったところ、最大で465万人という数字が出てきた。これは全雇用者の8.5%にあたる。現在の推定では500万人とも600万人ともいわれています」

 

 大企業のボリュームゾーンは、現在45歳から49歳のバブル入社組。給料も高く、年齢も中堅、今から新たな仕事で成果を出すのが難しい世代だ。5年後、企業が希望退職を募るとき真っ先に対象となるのが、この人たちだという。

 

 労働移動支援助成金は、リストラ対象者を、(1)民間の再就職支援会社に委託した時点、(2)実際に再就職が実現した時点の2回に分け、首を切った企業に最大60万円が支払われる仕組み。ウハウハなのはパソナ、リクルート、マンパワー、テンプスタッフなどの大手の民間再就職支援会社である。

 

「業界も競争が厳しいとはいえ、大企業が5000人とかのロットでやるときには、受注額は年収の10〜20%になる。リストラ対象者の年収が1000万円なら、100万〜200万円で再就職するまで請け負うのです。これまでその金はリストラする企業の負担でしたが、最大で1人60万円まで国が助成するというわけです。再就職支援会社は儲かるでしょうね」(溝上氏)

 

 現在、パソナグループの会長を務めるのは、竹中平蔵。小泉政権で解雇規制緩和の旗を振り、安倍のブレーンとして、この“リストラ助成金”の拡充を推し進めた張本人である。

 

(週刊FLASH 2014年3月18日号)

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