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吉野家「シャブ漬け」常務解任はトカゲの尻尾切り…組合の団体交渉担当者が語る吉野家の “マッチョ” 体質

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.04.26 19:39 最終更新日:2022.04.26 19:44

吉野家「シャブ漬け」常務解任はトカゲの尻尾切り…組合の団体交渉担当者が語る吉野家の “マッチョ” 体質

 

田舎から出てきた右も左もわからない若い女の子を無垢、生娘のうちに牛丼中毒にする。男に高い飯を奢ってもらえるようになれば、絶対に(牛丼を)食べない」

 

 4月16日、早稲田大学の社会人向け講座「デジタル時代のマーケティング総合講座」で、吉野家の伊東正明常務取締役企画本部長(当時)がした放言。

 

 ほかにも、若い女性を対象とするマーケティング戦略を「生娘をシャブ漬け戦略」と呼び、男性客については「家に居場所のない人が何度も来店する」と断じた。

 

 

 この発言は各方面から大きな批判を呼び、ついに19日、吉野家の親会社である吉野家ホールディングスが伊東常務の解任を発表した。

 

「あり得ない発言ですよね。いろいろツッコミどころはありますが、女性蔑視だけでなく地方蔑視という問題もあります。『田舎から出てきた……』と言っていますが、吉野家は “田舎” にも出店しているじゃないですか。ただ、今回の解任は単なるトカゲの尻尾切りじゃないかと思います」

 

 と語るのは、労働組合を結成する支援や、職場トラブルなどに対応する個人加盟の労働組合・東京管理職ユニオンの執行委員である神部紅氏だ。

 

 じつは、吉野家ホールディングスの本社に勤務していた男性が東京管理職ユニオンに加盟しており、近々団体交渉をおこなう予定だという。

 

「その男性は、職場で上司や同僚から平手で殴られたり、いじめや嫌がらせ、言葉を通じたハラスメントを受けていたんです。

 

 吉野家には定期的に人事査定評価があります。はじめに自分が自己評価を記入して提出するのですが、その男性の上司は、勝手にその男性の自己評価の内容を低く改ざんしていた。要するに、上司は『お前はそんなに仕事ができないだろう』と言いたかったのでしょう。

 

 ちなみに吉野家では、評価のランクが1つ下がれば月々3万円、夏と冬の賞与ではそれぞれ20万円から25万円の賃下げが生じます。年間では76万~86万円もの賃下げとなるわけです」(神部氏)

 

 だが、自己評価は自己評価。勝手に上司が改ざんしてしまうようでは、そもそも実施する意味がない。

 

「男性は会社に抗議し、結局その内容を修正することになったのですが、自己評価の内容を他人が改ざんできないシステムに変えなければ、今後も同じようなことが起きかねません。

 

 さらに、男性はかねてから続くパワハラや嫌がらせなど複数の事情が重なって休職しており、会社への不信感も拭えていません」

 

 男性は今も復職の意思があり、会社側に団体交渉を通じて改善を求める予定だという。

 

 神部氏は、過去にも吉野家と多くの団体交渉を経験してきた。

 

「今回の男性に限らず、吉野家の企業体質には問題があると思います。いわゆる “マッチョな感じ” なんです。『俺らについて来れないヤツはいらない』という姿勢とでもいうか、自分たちの過ちや世間とのズレについて認められない頑なさがあるんです」

 

 実際、吉野家は、過去に何度も “炎上” している。

 

「2021年7月に開催された漫画『魁!!男塾』のコラボ企画『魁!!吉野家塾』は、一定の回数を注文することで特別な景品や特典がもらえるものでしたが、その景品や特典の内容を、事前に告知していたものから変更するなどして、批判を浴びました。

 

 また、アニメ化する際、登場人物に吉野家の牛丼を食べさせるなどして吉野家を応援してきた『キン肉マン』の著者・ゆでたまご氏が、吉野家との確執を明かし、話題にあったこともあります」(スポーツ紙記者)

 

 前出の神部氏が語る。

 

「これまでおこなってきた団体交渉は、そのほとんどが一定の水準で解決しています。特に多いのは賃金の不払いやパワハラなどですね。

 

 ただ、問題は複合的で、改善を求める要求が複数あることが多いんです。賃金の未払いだけではなく、たとえば『パワハラやセクハラについて会社として謝罪し、組織の改善をしてください』とかですね。

 

 しかし、こうしたことを認めてくれることはほとんどありません。加害者の従業員の個人的な資質に原因を求め、その一個人を処分して終わり……という形です。

 

 つまり、今回の常務の件と同じトカゲの尻尾切りですよね。そして結局、組織としてパワハラやセクハラが生まれやすい土壌が改善にまで至らないのです。

 

 吉野家は牛丼チェーン界のリーディングカンパニーです。業界でチヤホヤされたりして、閉鎖的になり、『自分たちは間違っていない』という考えに陥っているのでしょう」

 

 企業体質を変革する際、原動力の一つとなりうる労働組合も、吉野家においては頼りにならないという。

 

「内部に労働組合はあるのですが、いわゆる “御用組合” のようです。入社と同時に自動的に加入し、組合費が天引きされるだけで、まともに機能しているようには見受けられません。

 しかも、今回うちに相談にきた男性は未加入でした。本社勤務の社員は組合に加入しなくてもよいという慣例があるそうです。本社勤務であれば、経営陣から目の届く範囲だから、御用組合に入れて “囲い込む” 必要がないということなんでしょうね。

 

 いずれにせよ、今回の事件を機に組織風土そのものを見直す必要がありそうです」(同)

 

 奇しくも、伊東常務の解任と同日に発売を開始した新商品「親子丼」は大人気だ。気持ちよく親子丼を食べるためにも、しっぽ切りだけで済ませるのはやめてもらいたいものだ。

 

( SmartFLASH )

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