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ラーメン業界が頭を抱える原料費高騰と在庫不足…「このままでは1杯1500円」との声も
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.04.28 06:00 最終更新日:2022.04.28 06:00
ラーメン……言わずもがな日本の大衆食の代表である。しかし、今、このラーメンが高級品になるのではないか? ラーメン業界関係者の間では、そんな噂がまことしやかに囁かれている。
事の発端は、ラーメンに関わる原材料費の多くが値上がりしたうえ、在庫不足になっていること。とくに深刻なのが鶏で、スープを取るガラや味に濃厚さを出す鶏油(チーユ)不足は、ラーメン業界に大打撃を与えている。
4月に入った途端、横浜家系ラーメン(通称・家系ラーメン、以下同)の人気店が “油多め” のサービス中止を発表し、家系ラーメンファンを驚かせた。
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「うちの店の鶏油は、皮の部分とその下についている脂肪などから抽出していますが、いわばメインではない部位なので、昔は業者さんが二束三文の価格で卸してくれました。
しかし、コロナが流行りはじめたころから鶏肉がジワジワと値上げしていきました。
安くて味も安定しているブラジル産の鶏肉を使っていましたが、ブラジル自体、コロナで社会が停滞してしまい、輸入量が安定しなくなりました。
コンビニのスナックコーナーにある鶏の唐揚げや焼き鳥が品切れを起こしたことが話題になりましたが、同時期にラーメン店も “チキンショック” が起きはじめたのです」(都内某家系ラーメン店オーナー)
そうとなれば、サービスでおこなっている油多めを有料にすればいいのでは、という声も上がっている。しかし、在庫自体がなくて有料・無料云々の問題ではないという。
また、前出のオーナーの店のように、自店で鶏油を抽出するところもあれば、業者に卸してもらう店もある。
後者の場合、抽出作業に手間がかかるわりには利益が少ないとのことで、生産をやめてしまう業者さんも多い。それが鶏油不足に拍車をかけているそうだ。
「当店はあっさり系の中華そば専門店なので、家系さんほどではないですが、スープにアクセントをつけるために鶏油を使います。このままでは代用品を探すしかないですね。
それよりも、サイドメニューで鶏のから揚げを出しているんですが、そちらのほうがピンチです。鶏肉はもちろんのこと、揚げ油も高騰しているので、肉のカットの仕方を小さくして対応しています」(埼玉県中華そば専門店長)
ここにさらなるダメージを与えるのが、光熱費も高騰していることだ。家系ラーメン、さらに九州の豚骨ラーメンなどの場合、豚骨を強火で炊いてスープを作る。
店にもよるが、8時間から10時間にわたって炊き上げるのでガス代が重荷になってくる。現在、ガス代が月に15~16万円かかる店も珍しくないそうだ。
さらに、この炊き上げる豚骨のおおもとである豚肉も高騰している。そう、豚骨だけでなく、ラーメンに欠かせないチャーシュー。こだわっているお店ではチャーシュー麺が1000円オーバーになっている店も少なくない。
それがさらに値上げをしたら、「このままだと夏にはチャーシュー麺が一杯1500円になる可能性もあるし、通常のラーメンだって1000円前後になるだろうね……」と、都内某家系ラーメン店のオーナーは嘆く。
また、豚肉の価格高騰については、スープにコクを出すために豚の背脂をスープに振りかける “背脂チャッチャ系” のラーメン店も苦戦を強いられている。
それだけではない。麺の主原料である小麦の価格も世界的に高騰している。一玉につき、2021年に比べて30円から50円ほど値上げしている製麺所も多い。
トッピングで人気の味付け玉子も、これまでのように、100円前後で提供するのが難しくなっている。“価格の優等生” と言われてきた卵も値上がりしているからだ。
もちろん、ラーメン店も黙って現状を受け入れるつもりはないだろう。なるべく値上げをしないよう必死に企業努力をおこなっている。
たとえば、チャーシューを従来よりも薄くスライスして価格据え置きのステルス値上げで対応したり、ご飯もののメニューを値下げしてバランスを取っている店もある。
さらに平日の売り上げが少ない複数の曜日を定休日にする “週休二日制” のラーメン店も増えている。こうすることによって人件費や光熱費をダウンさせる作戦だ。
しかし、このままあらゆるものの価格高騰が続くようであれば、何をやっても焼け石に水であることは火を見るよりも明らかである。
やはり、一杯のラーメンが1500円前後になってしまう日は、そう遠くないのだろうか。大衆食の王様はどこへいくのか……。
( SmartFLASH )