大阪府は4月26日、新型コロナウイルス感染者の療養先の一つとして運用していた「大阪コロナ大規模医療・療養センター」(大阪市)の新規入所予約を今月30日の午後6時で終了すると発表した。
「大規模医療・療養センターは、大阪市住之江区の展示場「インテックス大阪」を整備して作られた施設。1000床を確保し、予算も84億円が投じられることになりました。しかし1月末から運営されてきたのですが、累計の利用者数はわずか290人しかいなかったのです。4月の使用率を見てみると、1%を切っている日も多い。府としても大きな誤算だったでしょう。何せ、1人あたり3000万円近くかけたも同然ですからね。いくら療養のためとはいえ、家が一軒建つ金額ですよ」
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そう憤るのは、医療関係者のひとり。同センターの実態についても知る人物だ。
「大阪の医療がひっ迫している時に、それを解消するために作ったのに、環境がひど過ぎてまったく人が入りませんでした。というのも、冬には寒すぎるということで、とても療養できる環境ではないと苦情が相次いだのです。療養者は、カイロや上着を持参していた。本気で療養してもらう気があるのかと、目を疑ったほどです。
また、療養者に配給される弁当も、各地で話題になっていますが、このセンターの弁当も“お粗末すぎる”ものだったそう。弁当の写真を撮ると、スタッフが飛んできて写真を削除させられた療養者もいたようです」
延べ約4万平方メートルという広さに数人という状況だった同センター。その雰囲気は異様だったという。
「ただでさえ人がいなくて静かですし、天井も高いので人の気配を感じられない。あまりにもガランとしていたため、療養者の間では『インテックスに幽霊が出る』とまことしやかに囁かれるほどでした。夜もシーンと静まり返っていて、人が歩くとその音が施設中に響き渡っていたそうです」
府はこうした事態を把握していたのか。災害対策課にコメントを求めたところ、担当者はこう答えた。
「同センターは、2021年8月、設置を決定した時点で、2022年5月末で閉鎖する予定でした」
吉村洋文知事も、記者団に対し「もともとの予定どおり」と発言していたが、わずか約4カ月のために84億円を投じたというのか……。
「当初、計画段階では84億円を見込んでいましたが、さまざまな要素を考慮し補正したところ、78億円に落ち着いています。事業が完全に終了してからでないと、予算の確定はできません」(前出・担当者)
だが78億円だとしても、それでも1人あたり2600万円以上ということになる。また関係者が明かしていた“実態”について事実確認を求めると、こう語った。
「“寒すぎた”という声が上がっていたとのことですが、建物内は22度を保っているため、一般の人が入って異様な寒さを感じることはないと思われます。また、弁当の写真を削除させられた、とのことですが、スタッフと療養者はよほどのことがない限り接触しない取り決めになっておりますので、考えにくいと思われます。写真に関しては、療養者の方のプライバシー配慮の面で、写真撮影は控えていただくよう、しおりに記載しています」
「大規模施設とマッチしなかったというのが一番大きな理由だと思っています」と閉鎖の理由を語った吉村知事。その言葉で済ませるには、あまりに大きな額を投じたように見えるが……。
( SmartFLASH )