■デフレ進行を防ぐために黒田総裁の判断は正しい
20年ぶりの円安水準でも、日銀の黒田総裁は金融引き締めによる金利の引き上げを否定している。円安の容認だ。
経済アナリストの森永卓郎氏が語る。
「その理由は、じつは日本は長期のデフレから脱却していないということです。輸入品の価格が上がっているので、インフレに見えるだけなんです。
デフレを抑えるためには金融緩和政策を続けなければならないというのが、黒田総裁の判断です。ここで金利を上げたら、一気に景気が失速してしまうでしょう。正しい決断だと思います」
円安はモノづくり日本の復活にも繋がるという。
「円安は短期的には物価高というデメリットもありますが、日本の工場をもう一度再生するチャンスでもあります。かつて日本の平均賃金は先進国でもトップクラスでしたが、現在は韓国を下回った。
これは言い換えれば、日本でいいモノを安く作れるようになったということです。円安を維持できれば、すごい勢いで製造拠点が日本に戻ってくるでしょう。それにより、雇用も復活します」(同前)
懸念されるのは、岸田文雄首相が打ち出そうとしている円安回避策だという。
「黒田総裁は2023年4月で任期が切れますが、岸田首相は再任しないでしょう。そして円安を回避するために財政、金融引き締めをやる。結果、金利がハネ上がって物価が下がっていくわけです。
高金利のもとでデフレが起こるわけですが、そうなると景気は冷え込み、かつて経験したことのない景気悪化が訪れると思います。それは、昭和恐慌の二の舞となるかもしれません」
昭和恐慌で、当時の濱口雄幸内閣は、金本位制に復帰するため円高に誘導する政策を進めようとして金融引き締めをおこない、それが日本経済を破局に導いた。
「典型的な通貨政策の弊害をもたらしました。岸田首相は同じ轍を踏む危険性が高い。円安のデメリットも、“岸田恐慌”のインパクトとは比較にならないでしょう」