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物議醸す「AV対策法」、規制遵守してきたメーカーが“無意味”と主張するワケ「18歳は使わない」「違法な同人AV溢れかえる」

社会・政治 投稿日:2022.05.25 06:00FLASH編集部

物議醸す「AV対策法」、規制遵守してきたメーカーが“無意味”と主張するワケ「18歳は使わない」「違法な同人AV溢れかえる」

AV対策法を推進した塩村議員。「できることはすべてした」と自信満々だ(写真・時事通信)

 

「あの法案で何かが変わるとは思えません。そもそも今どき僕のまわりでは、18歳や19歳のコを使ってるメーカーなんてないですよ。18歳に見える25歳のコを起用すれば、リスクゼロなんですから」

 

 そう首をかしげるのは、フェティッシュメーカー「RASH」の主宰者で、アダルトビデオ(AV)監督のラッシャーみよし氏だ。

 

 

「あの法案」とは、AVの出演被害救済に向けて、超党派議員が立法を目指している「AV出演被害防止・救済法案」、通称AV対策法だ。

 

「4月に改正民法が施行され、成年年齢が18歳に引き下げられました。これを機に、20歳未満の“子供”がAV出演契約を自らの意思で結ぶ可能性が出てきました。そこで、AVを『性行為に係る人の姿態を撮影した映像』と定義し、撮影から1年以内(施行後2年間は2年以内)であれば、出演者はいつでも無条件で契約を解除できるとする法律を制定しようとしています。

 

 元グラビアアイドルで、立憲民主党塩村あやか議員などが中心となり、与野党が素案に合意済み。今国会で成立する見通しです」(全国紙記者)

 

 契約から出演、販売に至るまで、さまざまな制約が設けられ、違反した場合には3年以下の懲役が科せられるーー。AV業界にとっては大打撃とも思えるこの法案だが、当事者たちからはいちように冷めた声が聞こえてきた。

 

 アダルトメディア研究家の安田理央氏はこう語る。

 

「2016年に、詐欺や脅迫によってAVに強制的に出演させられている女優がいるというレポートを人権団体が発表し、話題になりました。この“出演強要問題#をきっかけに、業界は2017年にAV人権倫理機構という団体を設立しています。この団体には、ほとんどのメーカーやAV女優の所属事務所が加盟しています。加盟しないと、メジャーな流通経路に作品を出せません」

 

 加盟社は、団体のルールに従う必要がある。そのルールは、“表”の芸能界と比べても厳格なものだ。

 

「現状の契約でも、女優さんが『やっぱり嫌だ』となれば、いつでも出演や販売を断われますよ。そもそも、女優さんに出演の許諾書を提示し、サインしてもらうときは、証拠のためにカメラを回さなければいけません。さらに、撮影の48時間前までに台本を渡すルールもあります。また、撮影現場でも、台本以外のことを強要していないことを証明するために、小さなカメラを天井付近に置いておきます。通称“天カメ”です。これほど厳しいルールが課せられているので、私のまわりで出演をめぐるトラブルが起きたことはありません。

 

 でも、こうした自主規制についてはあまり触れてもらいたくない部分ですね。『18歳デビュー』『父娘』などの“設定”について、画面の中にも演出だと断わるテロップを入れてはいますが、作り手側が『じつは設定なんです』と明かすようなものですから」(みよし氏)

 

 このように実質的には“無意味”な今回の法案だが、“有害”になる可能性もある。

 

「素案では、撮影後3カ月間は販売できないというルールが定められています。現状、小さいメーカーだと撮影から2カ月程度で販売するところもあり、こうした小規模メーカーは資金繰りに苦しむ可能性があります。

 

 さらに撮影後に販売取りやめとなれば、1本100万円程度とされる制作費もパーになる。新法の下では、大手メーカー以外は苦境に立たされ、表のAVの世界での商売を諦めて、ネット上で無修正動画を発売する“アンダーグラウンド”な世界に潜るメーカーも出てくる可能性があります」(安田氏)

 

 ネット上では現在、海外サーバーを経由していることを言い訳に、個人が制作した無修正AVがはびこっている。

 

「同人AVとも呼ばれますが、数百円から数万円で売買されています。いわゆる児童ポルノから盗撮までなんでもあり。何度も逮捕者が出ていますが、それでも荒稼ぎしたいという輩が絶えません」(業界関係者)

 

 神保町で長年AVやアダルト本を販売してきた芳賀書店代表・芳賀英紀氏はこう憤る。

 

「素案をまとめるまでの間におこなわれた議論の内容が、まるでAVの制作者側による本番強要を前提としているようで、腹が立ちますよ。メーカーには企画内容や女優さんを厳選し、高価格でも熱意のある作品を作ってほしいです」

 

 この法律で誰が得をするのやら……。

 

( 週刊FLASH 2022年6月7日号 )

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