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拉致被害者 安倍官邸の判断ミスで「帰国者激減」の可能性
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2014.09.04 16:00 最終更新日:2016.02.26 02:01
「当初、局長級会議は8月下旬とみられていました。内閣改造など日本側の都合で延期となったのですが、北朝鮮がそれをのんだことを見ても、日本との関係改善に前向きなのは間違いない。ということは、再調査の結果、ゼロ回答ということはありえない。早ければ10月にも拉致被害者の帰国が始まるでしょう」(「インサイドライン」編集長・歳川隆雄氏)
いよいよ拉致被害者の帰国が現実的になってきた。北朝鮮による拉致再調査の結果は、9月10日からジュネーブで始まる日朝外務省局長級会議で判明するという。実際、政府は来年度の予算要求で、拉致被害者の支援金を現在の10倍、3億5400万円計上しているのだ。このことも、新たに帰国する人たちが増えることの傍証といえる。
「でも、じつは大きな問題があるんです。どうも当初予定された帰国者より大幅に数が減るようなんです」(官邸記者)
それはいったいどういうことなのか。現在、政府認定の拉致被害者は17人いる。うち北朝鮮に残された被害者は12人だ。そして「拉致の疑いが排除されない」特定失踪者が272人。さらに「救う会」が独自に認定した被害者もあわせると、合計289人がいまも北朝鮮に残されている可能性がある。
「7月に日経新聞が『北朝鮮が約30人の生存リストを提示した』とスッパ抜きました。この報道に官邸も外務省も激怒し、日経幹部を官邸に呼びつけて抗議しました。ですが、これは官邸が日経にリークしたというのが、記者側の“定説”です。逆に言えば、拉致報道は安倍官邸が完全にコントロールしているといっていい」(官邸記者)
こう聞けば「30人」という数字が真実味を帯びてくるが、では実際のところ、何人が帰国できるのか。再調査は残留日本人や日本人妻も対象にすることになっている。北朝鮮の狙いがここにあると言うのは、東京新聞記者で、かつて金正恩総書記の兄・金正男氏を単独インタビューした五味洋治氏だ。
「’60年代、自分たちの意志で北朝鮮に入国した日本人妻は約1600人いますが、その10分の1が帰国を望んだとしても160人。また、前の戦争で孤児として北朝鮮にとどまった残留日本人は千数百人ともいわれます。その子供たちまで含めれば膨大な数になる。北朝鮮はこのような日本人妻や残留日本人を先に帰して、日本がどこまで金を出すか値踏みするはずです」
こうした人たちの帰国は、それなりの数が稼げるだけに、マスコミでも大きく取り上げられるだろう。だが、その結果、本来の拉致被害者の帰国がないがしろにされると言うのが、「コリア・レポート」編集長・辺真一氏。
「政府認定の拉致被害者12人は、北朝鮮の以前の発表で『死亡』と、『そもそも入国していない』人に分かれるんです。でも、いったん死亡したと公表した人を表に出すのは難しい。そこで、未入国扱いの4人、つまり田中実さん、久米裕さん、松本京子さん、曽我ひとみさんのお母さんが出てくる可能性が高い。あとは特定失踪者のなかから、せいぜい10人くらい帰国させる程度で終わるでしょう」
つまり、安倍首相が狙った30人のうち、多くても十数人、下手すれば数人しか帰国できないのだ。日本のもくろみはものの見事に外れることになる。前出の五味氏も「安倍首相は、リストが出る前に安易に制裁解除を発表したことで、交渉の主導権を北朝鮮に握られてしまった。これは大きな失敗でした」と話している。
安倍官邸の致命的なミスで、拉致被害者の多くが見捨てられることになったのだ――。
(週刊FLASH 2014年9月16日号)