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大阪市がF1誘致「断念」でわかった「F1開催にかかるカネ」 鈴鹿GP撤退なら「今後の日本レース開催は無理」の現実
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.06.16 22:25 最終更新日:2022.06.16 22:29
大阪市が此花区にある大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)にて検討していた、4輪自動車レースの最高峰「F1世界選手権」のグランプリ(GP)招致を断念していたことがわかった。6月16日に「読売新聞オンライン」が報じている。
夢洲は、2025年に開催される「日本国際博覧会(大阪万博)」の会場になっており、閉幕後の跡地利用の一環として「F1招致」が浮上していた。
大阪府の吉村洋文知事(46)も、2019年2月12日に自身のTwitterでこう投稿していた。
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《F1大阪グランプリ、公道レース、夢物語だとは思わない。モナコ、シンガポールができるなら大阪もできる。ハードルは認識してる。夢洲には世界最高水準のIRがくる。夢洲は人が住まない非日常の人工島。公道の形状、配置もこれから本格設計。やろうじゃない》
しかし、“断念報道”後は、F1招致について言及していない。
「読売新聞オンライン」の記事では、市が検討を進めたところ、主催者の国際自動車連盟(FIA)に対して支払う資金だけでも400億~500億円かかるのに対し、チケット販売などによる収益は30億円前後と、採算が合わなかったとされている。
スポーツライターは大阪市のF1断念についてこう話す。
「F1の開催費用について、はっきりと数字が出てきたのは珍しいと思います。
現在、配信大手の『Netflix』がF1を題材にしたドキュメンタリーシリーズを手掛けたことをきっかけに、いままで“F1不毛の地”といわれた北米でも、爆発的に人気が拡大しています。
2022年からマイアミGPの開催が始まったのに続いて、2023年からはラスベガスGPも開催され、米国だけでオースティンも含め3戦開催となるのです。こうした開催地は莫大な『開催権料』を支払ったのでしょう」
米国での人気上昇に加えて、いまだに中東でもF1招致への熱は高い。アブダビ(UAE)、バーレーン、サウジアラビアでGPが開催されてきたが、それに続いてカタールが、2023年から10年契約での開催を取りつけた。
「招致合戦が過熱すると同時に、開催権料も年々、高騰しています。90年以上の伝統があり、F1の代表的レースであるモナコGPは2022年に契約満了を迎え、現在も2023年以降の契約延長の交渉が続けられています。
カジノで潤うあのモナコですら『開催費用が負担できないのでは?』と囁かれているんです」(前出・スポーツライター)
大阪市が開催費用を理由にF1招致を断念したことで、インターネット上のモータースポーツファンからは、1987年から鈴鹿サーキットでの開催が定番になっている日本GP(鈴鹿GP)に対しても、不安の声が上がった。
《FIA に払うだけで 4-500 億円ってマジかいな?鈴鹿も払ってんのかな???》
《とってもお金がかかるので鈴鹿からF1が無くならないようにみんなで観に行こうね》
《ゲェ! そんなにかかるのか… 鈴鹿ではホンダなどが負担してるってこと?》
果たして鈴鹿GPの運命は……。前出・スポーツライターが続ける。
「現在、2024年まで開催契約が結ばれていますが、それは鈴鹿だから継続できているといえるでしょう。
F1には“功労者に優しい”という面があり、レース創設以来、欠かさず参戦している『フェラーリ』が収益配分で優遇されてきました。
それと同様に、継続的に開催され、ドライバーやチームからの支持が厚いモナコGPや鈴鹿GPの開催権料も、新規参入よりは安く抑えられている、といわれています。
それでも、鈴鹿GPは2018年に契約満了を迎えた際、開催権料の高騰と観客動員数の減少から、2019年以降の開催延長が危ぶまれたことがありました。つまり今後、鈴鹿GPが撤退したら、日本でのレース開催は絶望的と考えたほうがよいでしょう」
1996年から開催されているオーストラリアGPが、6月16日に2035年までの開催契約延長を発表したばかり。
長期契約のほうが“お手ごろ”のようだが、鈴鹿GPの2024年以降の判断は……。
( SmartFLASH )