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【流体地震の恐怖】「能登半島震度6弱の原因は水」専門家語る“活断層型地震を誘発”の可能性…次の危険地域は?

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.06.28 06:00 最終更新日:2022.06.28 06:00

【流体地震の恐怖】「能登半島震度6弱の原因は水」専門家語る“活断層型地震を誘発”の可能性…次の危険地域は?

6月19日に発生した震度6弱の地震により、珠洲市では鳥居が倒れるなどの被害が出た(写真・朝日新聞社)

 

 104回。これは、能登半島の先端に位置する石川県珠洲市で、今年になって震度1以上の揺れを記録した地震の発生回数だ(6月22日時点)。

 

 19日には震度6弱の大きな揺れに見舞われ、6人の負傷者が出ている。東北地方と比べ「北陸は地震リスクが少ない」といわれてきたが、住民の間では不安が広がっている。

 

「一連の地震活動は、大きな被害を発生させる内陸地震としては、かなり異常です」

 

 

 と語るのは、東京大学の佐藤比呂志名誉教授だ。

 

「大きな内陸地震は、断層がプレート境界からの力を受けて、ずれ動くことにより発生します。大きな本震の前には、小規模な地震が少し発生するぐらいで、今回の能登半島のように、小規模な地震が頻発するということはありません。断層の動きは、力が加わること以外にも、断層の強度(支える力)が低下することによって発生します。今回の地震の原因は、能登半島東部の地下深いところに、断層の強度を低下させた“何か”があるということです」

 

 今回取材したほとんどの地震専門家は、この原因を“流体”だと考えている。

 

「高温の水やマグマ、ガスなどの流体が地下深くに留まっていて、これが岩盤に圧力をかけ、歪みを生じさせています」(金沢大学・平松良浩教授)

 

「地中の高温と高圧で、水が状態を変化した“超臨界水”が原因だと考えますが、そのメカニズムには不明な点が多いです」(前出・佐藤教授)

 

 京都大学防災研究所地震予知研究センターの西村卓也准教授も同じように、この流体を“水”だと考える。

 

「能登半島には火山がないので、水が原因である可能性が高いと思います。深さ十数kmの地下に流体があることを考えると、水は地下から湧いてきているのでしょう。200kmほど下にある海洋プレートに含まれている海水が、高温と高圧のために分離、上昇してきている。今回の地震の原因となっている流体は、海洋プレート由来の水だと考えます」

 

 珠洲市ではこの“流体”によって、2020年12月ごろから今年5月までの間に、4cmも地面が隆起している。

 

「地下で流体の集まりが膨らんでいるので、周囲の岩盤に力が加わり、耐えきれなくなった岩盤が割れて地震が起きます。さらに、日本列島の地下には摩擦力で引っかかり、くっついている断層がたくさんあります。この間に水が入ることで、潤滑油のような働きをし、断層が動きやすくなる。この2つが、一連の地震の原因です」(西村准教授)

 

 つまり現在、能登半島では、活断層でもプレートでもない、“流体”を直接的な原因とする“流体地震”が起きているのだ。そしてこの“流体地震”は、1965年から1970年にかけて長野県松代町(現長野市)で発生した松代地震と「メカニズムが一緒」(西村准教授)だという。松代地震に詳しい、地震予知総合研究振興会の松浦律子上席研究員が語る。

 

「松代地震では、最盛期に1日に600回以上の有感地震が起きました。地理的条件から考えて、水が原因だという点では能登半島も同じでしょう。しかし松代と比べれば、今回の地震は非常に小規模なものです。松代では、実際に“水噴火”といって、水が地表にまで噴き出したんです。この地震の特徴は、原因となる水が止まらない限り続くということです。

 

 しかも、水源は地下深いところにあるので止められないし、調査もしづらい。水が原因なので、大規模なパワーはありませんが、中~小規模な揺れが今年いっぱいは続くでしょう。このタイプの地震は、温泉があるところで発生し得る。つまり、日本ではどこでも起こり得ます」

 

 長引く小さな揺れが、どこでも起きるーー。この謎に満ちた“流体地震”だが、この地震がトリガーとなって、さらなる災厄をもたらす可能性がある。西村准教授が語る。

 

「能登半島では今後、阪神淡路大震災と同レベルのマグニチュード7クラスの地震が起きる可能性があります。能登半島周辺には大地震を起こしかねない活断層が複数あり、流体を原因とする地震が、これらの活断層を刺激する可能性があるのです」

 

“流体地震”に刺激されて活断層型地震が誘発されるーー。この危険な“セット”を抱える地域は、国内にいくつかあるという。

 

「能登半島もそうですが、そもそも東日本大震災を契機に日本列島の地下が変化し、水が上がりやすくなったといわれているんです。茨城県と福島県の県境付近(北茨城市やいわき市周辺)では、東日本大震災以来、小さな揺れがずっと続いていますし、危険な活断層も確認されています。さらに、京都府亀岡市でも揺れが続いており、その近くには『亀岡断層』という大きな活断層があります」(同前)

 

 さらに、過去の事例から警戒すべき場所もある。

 

「2000年の鳥取県西部地震や、1980年伊豆半島東方沖地震、1978年伊豆大島近海地震は、小さな地震が頻発した後にマグニチュード7クラスの大きな地震が発生しています。鳥取県や伊豆半島は、小さな地震が大地震に結びつきやすい場所だといえます」(同前)

 

 小規模な揺れのまま、終わればよいが……。

 

( 週刊FLASH 2022年7月12日号 )

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