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安倍元首相、お別れの会「全国で開催を」と望む声…大規模葬儀の今秋実施に「国葬論」再燃も

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.07.13 20:39 最終更新日:2022.07.13 20:52

安倍元首相、お別れの会「全国で開催を」と望む声…大規模葬儀の今秋実施に「国葬論」再燃も

中曽根康弘元首相の「内閣・自由民主党合同葬」に参列した安倍元首相(写真:ZUMA Press/アフロ)

 

 街頭演説中に銃撃され亡くなった安倍晋三元首相の通夜・葬儀が、 7月11日、12日に執りおこなわれた。後日、東京と地元・山口で、お別れの会を開催するという。

 

 ネットでは、安倍元首相を悼み、お別れの会を「全国開催してほしい」といった声も寄せられている。

 

 政府は、12日、各国弔問団などが参列する大規模な葬儀を、今秋にも執りおこなう方向で検討に入った。松野博一官房長官は、記者会見で「多大な功績を残した元首相であり、敬意を表して対応を検討すべき」としながら、「現時点で決定していることはない。過去の例や遺族の意向も踏まえ、検討していきたい」と語っている。

 

 

「岸田首相は、8日に国葬の実施も検討すると明かしましたが、大規模葬儀の報道を受け、ネットでは『国葬』すべきか否かといった議論が再燃しています。

 

 安倍元首相は、累計で8年8カ月と、歴代最長の在任期間を記録していますが、その政策には賛否が分かれることから、『国葬すべき』『国葬なんてありえない』と議論が噴出しているんです」(政治部記者)

 

 実際、ネット上では、さまざまな意見が投稿されている。

 

《当たり前の「国葬」 最長在任首相であり、選挙期間中に暴徒の凶弾に命を落とされた日本国最高位勲章も授与された方を「国葬」で送らないで、どうするよ…》

 

《安倍元首相の大規模葬儀は秋以降ということだけど暴力には屈しないという姿勢を世界に発信する機会として国葬にしても良いと思うんだよな》

 

《歴代最長記録だし、なんせ殉職だからね…国葬に値する最後だけど、簡単には決められないと思う》

 

《安倍元首相の国葬は、個人負担なら文句はないけど、税金は1円も使わないでいただきたい》

 

 明治時代から始まった「国葬」は、大正時代の終わりに「国葬令」として明文化されたが、第2次世界大戦後、日本国憲法の施行とともに廃止されている。戦後、皇族以外で「国葬」が執りおこなわれたのは、1967年の吉田茂元首相だけだ。

 

「国葬」を執りおこなうか否か、これまではどのような基準で決められてきたのか。国葬に詳しい中央大学文学部の宮間純一教授に話を聞いた。

 

「明確な基準が定められたことはありませんが、皇族以外であれば、政府にどれだけ貢献したかがポイントになってきます。明治の頃は、明治政府の中枢に位置した人物が中心。まだ『国葬』という制度のなかった明治10年、大久保利通が暗殺されたときは、明治維新での功績により国葬に準ずる形で葬儀がおこなわれました。

 

 正式に『国葬』としておこなわれたのは、1883年の岩倉具視でした。以降は伊藤博文や三条実美、島津久光、皇族で軍人になった人々などが国葬となっています。

 

 1926年に制定された『国葬令』は勅令(天皇が直接発する命令)の一種でしたから、敗戦後に日本国憲法が施行されると同時に廃止されました。

 

 近年は、国が国葬をすると政教分離に反するという理由でおこなわれなくなりました。安倍首相の祖父である岸信介元首相などは『内閣・自由民主党合同葬』の形をとっています」

 

 吉田茂元首相の国葬は日本武道館で執りおこなわれ、国内外から約6500人の参列者があったが、政教分離を守るため、「宗教色を一切排除する」ことが重視されたという。

 

「死者を葬ること自体が宗教的な要素を含んでいますから、完全に排除するのはむずかしかったでしょう。それでも、表面上、僧侶や神職を関わらせず、お経や祝詞のない葬式にする措置が取られました。

 

 吉田氏の国葬にかかった費用は、はっきりとわからないのですが、数億円はくだらない。数十億円にのぼるかもしれません。いずれにせよ、当時の佐藤栄作首相や自民党が、かなり強引に進めたのは間違いありません」

 

 宮間教授は「歴史的な経緯を踏まえると、国葬は非常に政治的な意味合いが強い」とも語る。

 

「大久保利通の葬式がいい例です。大久保は、士族の利権を次々と取り上げていったことで恨みを買い、反対勢力に暗殺されました。政府は、反対勢力を黙らせるため、国として『大久保さんはこんなに素晴らしい人だった』と顕彰したわけです。以降も、同じような意味合いを持っておこなわれてきている。

 

 安倍元首相の国葬をすれば、それは安倍さんや安倍政権の評価を『すばらしい人、政権だった』と固めることにつながってしまう。

 

 しかし、安倍元首相の評価は歴史的にも、今を生きる人たちにとっても、大きく分かれがちです。そうした政治的意図のために、国民全員から集めた税金を何億円もかけるのは、個人的にはどうなんだろうか、と思います」

 

 2020年におこなわれた中曽根康弘元首相の『内閣・自由民主党合同葬』は約2億円かかり、そのうち政府は約9600万円を支出している。はたして、安倍元首相は国葬となるのか――。

 

( SmartFLASH )

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