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内閣改造で「防衛費増額バトル」勃発「安倍元首相の遺言」増額路線と「自衛隊員の士気を高める」現実路線

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.08.11 18:08 最終更新日:2022.08.11 18:38

内閣改造で「防衛費増額バトル」勃発「安倍元首相の遺言」増額路線と「自衛隊員の士気を高める」現実路線

防衛費をめぐり、萩生田政調会長(左 写真・ロイター/アフロ)と浜田防衛相(写真・代表撮影/ロイター/アフロ)の水面下での暗闘が注目されている

 

 岸田文雄首相による内閣改造で、防衛費増額に向けた水面下のバトルが始まっている。

 

 8月10日、安倍晋三元首相の側近だった萩生田光一自民党政調会長は、就任会見で、国内総生産(GDP)2%以上を念頭に防衛力を増強する、とした党の公約について「速やかに実行に移していかなければならない」と明言。政調会長として「外交安保政策の強化が最大の課題」と語った。

 

 

 一方で、2009年、麻生太郎政権時以来の再任となった浜田靖一防衛相は、8月10日の記者会見で「対GDP比は、指標として一定の意味がある」としながらも「現下の安全保障環境に対応できるように必要な事業を積み上げ、防衛力を5年以内に抜本的に強化していく」との考えを示した。いわば、5年間での積み上げが必要だと主張したわけだ。

 

 防衛費は、2022年度当初予算で約5兆4000億円。2023年度にどこまで引き上げるかが焦点だ。安倍元首相は、5月26日に「6兆円の後半から7兆円が見えるぐらいの増額が、相当な増額だと理解している。世界中が注目している」と述べていた。

 

 経済安保担当相となった高市早苗氏も、6月12日にフジテレビの報道番組で(当時は党政調会長)「必要なものを積み上げれば、10兆円規模になる」と、具体的な金額を述べていた。「スタンド・オフ・ミサイル(長距離巡航ミサイル)などの導入や、宇宙・電磁波などの領域での能力強化を積み上げると、10兆円規模になる」としたうえで、財源は「短期的には国債発行」、さらに「防衛費の対GDP比2%というのは、あくまでも対外的に、日本の強い意志を示すという意味」と発言していた。

 

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏が言う。

 

「8月10日の岸田首相の会見でも、5つ挙げた重点課題の最初に『防衛力の抜本強化』が来ています。でもそれをどうやるか、政府内・党内でも異なった議論があります。

 

 そもそも、安倍元首相の6兆円から7兆円にしても、高市氏の10兆円にしても、積算根拠がほぼない。アメリカが喜ぶ、というレベルの話に終始していました。予算をどこから持ってくるかのきちんとした議論もなかったわけです。

 

 岸田首相は、防衛費増額で数値目標を掲げることには一貫して慎重で、浜田氏と考えが近い。浜田氏は、防衛相就任早々、安倍元首相の補佐官だった島田和久防衛省政策参与を『更迭』しています。島田氏は防衛事務次官時代、防衛費増額の議論を主導した人物。7月1日から、岸信夫前防衛相が防衛大臣政策参与兼防衛省顧問に任命していました。この更迭は『今まで通りはやらないぞ』という、浜田氏の強烈な意思表示といえます」

 

 7月24日には、岸田首相に近く、財政再建派の宮沢洋一党税調会長が、BSテレ東の番組で「(防衛費のGDP比2%について)本当に防衛費がそこまで必要であれば、社会保障の水準を少し切り下げてもよいのかという議論は当然、しなければならない」と述べていた。「国民の中でも、防衛費を増やすことには賛成の方が多い状況だが、打ち出の小づちを持っているわけではない」とも指摘し、増額ありきの議論をけん制していた。

 

「宮沢氏がけん制するのは当然のこと。日本の防衛費は、1976年に三木武夫内閣がGDP1%を上限とする枠を作りました。『GDP比』は、あくまで防衛費増額を抑えるために使われていた言葉。それがGDP比2%と、防衛費を増額する文脈で、ご都合主義的な使われ方をするため、問題が出てくるのです。GDP比2%という言葉が独り歩きしてしまっています。

 

 浜田氏のように防衛相を経験している人は、ハイテクな装備品を購入するより、自衛隊員の福利厚生や給料・手当などについて現場の声を聞き、改善して士気を高めるという予算を向けるはず。その意味で、岸田首相が現実路線の浜田氏を防衛相に起用したのは、党内で目立つ『金額ありき』の議論をけん制するための、したたかな人事といえます」(角谷氏)

 

 政府は、2022年度の名目GDPは564兆6000億円と見積もっており、その2%を防衛費にすれば、約11兆3000億円になる。2022年度の防衛費5兆4000億円から見ても、あと5兆9000億円は増額が可能ということだ。安倍元首相が残した「6兆円~7兆円」という遺言もある。

 

 巨額の防衛費をめぐる議論は2022年末に向けて過熱することは間違いない。

 

( SmartFLASH )

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