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旧統一教会の訪問販売部隊 “マイクロ隊” の実態が明らかに…ノルマ未達は恐怖の「水垢離」「徹夜祈禱」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.08.24 11:00 最終更新日:2022.08.24 11:00

旧統一教会の訪問販売部隊 “マイクロ隊” の実態が明らかに…ノルマ未達は恐怖の「水垢離」「徹夜祈禱」

旧統一教会の田中富広会長(写真:AP/アフロ)

 

 旧統一教会の活動のひとつに、“マイクロ隊” という信者グループによる訪問販売がある。マイクロとはマイクロバスの略で、実際はハイエースなどのワンボックスカーに乗せられた数人の信者が目的地で降ろされ、珍味や茶、コーヒー、ハンカチなどを売って家々を回る。

 

“マイクロ隊” は1970~1990年代にかけて教団の主要な資金源であった一方、隊員のほとんどを占める20代初めの信者の信仰心を強める訓練の一環でもあった。

 

 

 1981年に入信した元信者で、金沢大学の仲正昌樹教授も “マイクロ隊” の一員だった。仲正教授がこう話す。

 

「私が所属した旧統一教会が学生向けに組織したサークル『原理研(原理研究、英略称CARP)』では、“マイクロ隊” ではなく “Fundrasing(資金集め)” の頭文字を取って “Fの部隊” と呼ばれ、訪問販売に出かけることを “Fに行く” といった言い方をしていました。

 

 そして、訪問販売に行くことは『万物復帰』という、神に近づくための訓練とされていました。

 

 私が乗せられたのは日産のキャラバンです。4~5人が寝袋で横になれるように、床を板敷にしていました。これを “改造する” と言っていました。

 

 さらにキャプテンと、キャプテンが運転しない場合はドライバーが加わり、チームを作ります。チームが5~6つ集まって、ひとつの “Fの部隊” となり、全体を隊長が主管します。

 

 この部隊で一つの県をカバーし、ときには統一教会の青年部と地域が重なってかち合うこともありました。

 

 隊員は18~22歳の学生で、訪問販売は夏休みや冬休みなどの長期休暇をすべてあてておこなわれます。売るのは、スルメイカやカワハギ、昆布などの海産物の珍味。

 

 ちなみに、販売する商品のことを “ブツ” と呼んでいました。一袋500g程度を2500円で売り、キャラバンには数百袋詰め込まれていました。

 

 訪問販売をおこなうあいだ、チームは車で寝泊まりします。なので通常、チームは男女別です。毎朝5~6時くらいに起き、チームで祈祷と聖歌を歌ってから、7時ころに訪問を開始します。

 

 昼食にキャプテンが買ったパンと飲み物を掻き込むわずかな休憩時間を除き、19~20時ころまで家々を渡り歩きます。ノルマが達成できなければ、その後も延長です」

 

 珍味は簡単に売れるものなのだろうか。

 

「もちろんなかなか売れませんし、しょっちゅう門前払いを食らいます。

 

 各自のノルマは、出発前にキャプテンに宣言することで決まります。1万円のことを『キロ』と呼んでいましたが、隊員は『今日3キロ売ります!』などと告げるのです。

 

 当然、販売が難しいからといって低すぎる目標は口にしづらく、なかには10キロ、つまり40袋くらい売る信者もいます。また、信者は信仰心の強さを示そうとするものなので、前回より多い目標を設定しがちです。

 

 とにかく、朝に宣言した目標に届かなければ夜まで延長して売り続けなければならず、それでも売れなかった場合はペナルティが課されます。

 そのペナルティのことを『蕩減(とうげん)条件』と言いました。放蕩を犯した罪を清算するという意味です。蕩減条件には、断食や水垢離(みずごり)、徹夜祈祷などがありました。

 

 訪問販売のトークができなかった私は、せいぜい1日1~2キロを売ればいいほうで、ゼロのときも多かった。なので、私はよく蕩減条件を課され、駐車場などの水道があるところに行って、人に見つからないようにして水垢離をやりました。

 

 結局、私は信仰心が弱いという烙印を押され、病弱な信者が集まるチームに移され、キャラバンに寝泊まりするのではなく “通い” で訪問販売をしました」(仲正教授)

 

 理不尽な課題を与えられても逃げ出さない信者は、やはりマインドコントロールされているのだろうか。

 

「マインドコントロールや洗脳という言葉はしばしば定義が曖昧なまま使われがちなので注意が必要ですが、目標達成できないのは自分が悪い、自分の信仰が足りないせいだと思わせる仕組みになっているという意味ではマインドコントロールがおこなわれていると言えます。

 信者はあくまで自発的に販売目標を設定しているので、それに届かないのは自己責任だと考えざるを得ない。結果、従順で管理しやすい信者を生み出すという意味では、巧妙で狡猾な仕掛けですね」(同)

 

 旧教団を社会学の見地から調査研究してきた、北海道大学の櫻井義秀教授が解説する。

 

「“マイクロ隊” の訪問販売は、1970年代~1990年代に盛んにおこなわれ、教団の主要な資金源となりました。現在はホームセキュリティーも普及し、訪問販売はしづらくなっているので、そこまで本格的にはおこなわれていないと思われます。

 

 ただ、新人教育のなかで、声がけの練習のため、短期間おこなっている可能性はあります。また、玄関の鍵をかけないような地方では、従来のように続けているかもしれません。

 

“マイクロ隊” は、収益はもちろんですが、信者が “理不尽な共通体験” を得ることが最大の目的と言っていいでしょう。普通にスーパーで買えるようなものを持っていっても売れるわけがないので、だいたい冷たくあしらわれます。

 

 そこで、教団はこう考えるのです。神様も人々を救おうとしたのに無視されてきた、あなたたち信者も神様と同じ状況なんだ、この体験を通じて神様に近づいているんだ、と。

 

 これは『神体験』とされ、自分がみじめになればなるほど、本物だという考えにすり替わるのです。珍味を売り歩くなんて客観的に見ればおかしいし、人から無視されて当たり前。でも、そのマイナスの意識が消える瞬間があり、そこで人間が変わる。それが統一教会の狙いなんです」

 

 こうした批判を、教団はどう受け止めるのか――。

( SmartFLASH )

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