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中村格警察庁長官の辞任に「責任逃れ」と批判の声 “政権の腰巾着”と揶揄され出世した「異色の経歴」

社会・政治 投稿日:2022.08.25 18:03FLASH編集部

中村格警察庁長官の辞任に「責任逃れ」と批判の声 “政権の腰巾着”と揶揄され出世した「異色の経歴」

写真・時事通信

 

 8月25日、中村格(いたる)警察庁長官は、記者会見で、安倍晋三元首相の銃撃事件を受けて、国内の警護体制を見直す報告書をまとめたとしたうえで、

 

「人心を一新して、新たな体制で警護に臨むべきと考え、本日、辞職を願い出た」

 

 と述べた。さらに「警察は、警護を一から見直そうと覚悟を決めた。人心を一新するのは、むしろ当然」と、銃撃事件の責任を取っての、事実上の引責辞任であることを強調した。

 

 

 中村長官といえば、歴代の警察庁長官と比べ、異色の経歴で知られている。各道府県警察の長である「本部長」の経験がないのだ。

 

「これは異例のことですよ。たとえば前任の松本光弘氏は神奈川県警本部長を経験しましたし、その前の栗生俊一氏は徳島県警本部長でした。県警の本部長とは、その地方の警察をまとめ上げるという、いわば現場のトップ。

 

 もし県警で不祥事が起きれば、その責任を取らないといけない存在です。そこで警察の実状に触れ、実績を残せた人間が上り詰めるのが、これまでの警察庁長官でした。警察トップは本部長を経験しておくべき、という不文律が存在していたんです」(全国紙の元社会部記者)

 

 本部長こそ経験していないものの、中村氏の経歴は華々しい。東大法学部を卒業後、1986年に警察庁入庁、千葉県警本部捜査第二課長などの刑事畑を経て、在タイ日本国大使館の一等書記官も経験している。また、旧民主党政権から自民党の第2次安倍政権にかけ、5年半にわたり官房長官秘書官を務めている。

 

「中村氏は、警察官僚のなかでも超優秀だといっていいでしょう。海外への赴任経験もあり、経歴は申し分ない。

 

 ただ、警察庁長官は公安部も経験するものですが、中村氏にはその経歴もありません。秘書官を長年やってきたので、その暇さえなかったということでしょう」(警察ジャーナリストの小川泰平氏)

 

 一方、「“あの事件” のことを考えれば、“政権の腰巾着”として、気に入られて出世したといわれても仕方ありません」と、前出の元記者は指摘する。

 

“あの事件” とは、2015年に起きた、ジャーナリストの伊藤詩織さんの事件。伊藤さんが、山口敬之(のりゆき)・元TBSワシントン支局長にホテルで性的暴行を受けたと被害を訴え、山口氏に準強姦の容疑で逮捕状が出されたものの、執行直前、警視庁刑事部長(当時)だった中村氏の判断で “握りつぶされた” というものだ。

 

 山口氏は、TBS政治部時代に安倍晋三元首相と親しくしており、中村氏が官邸に忖度した結果ではないかと一部で報じられている。

 

 ある警察OBが語気を強めてこう話す。

 

「結果的に、山口氏は嫌疑不十分で不起訴となりました。しかし、問題はそこではないんです。

 

 逮捕状を出すときは、さまざまな捜査を尽くし、また逮捕状を出す反響も踏まえて、裁判所が請求するんです。それを刑事部長が握りつぶすなどあってはならないこと。所轄の努力や裁判所の決断を踏みにじる行為ですよ。

 

 秘書官として一度、政治の世界に足を踏み入れてしまい、そっちに目が向いてしまうようなことが警察官僚にあっては、いけないと思います」

 

 2021年9月に開かれた就任会見で、中村氏はそのことを問われ「組織として捜査を尽くしたうえで検察に送致した。捜査の過程について具体的に言及するのは控える。私はつねに法と証拠に基づき適切に判断してきた。法と証拠以外を考慮して捜査上の判断をしたことは一度もない」と突っぱねた。

 

 前出の元社会部記者も、警察官僚が政権に取り込まれているのではないかと危惧する。

 

「警察は、政治家を逮捕しなければいけない場合もあります。ところが中村氏は、官房長官秘書官を5年半も務めている。警察の独立性が失われ、政権の言いなりになりかねません。

 

 警察は、自覚的に政権とは一定程度の距離を持つことが必要です。警察官僚が自分の出世ばかりに気を取られ、政権の腰巾着となってしまうようでは、とうてい国民の信頼を得ることなんかできません」

 

 現場よりも重視した“主人”を失った中村長官。安倍元首相の銃撃事件で逮捕された山上徹也容疑者は、11月まで精神鑑定を受けることになっており、捜査はまだ継続中だ。はたして中村長官の辞任が「責任をとったこと」になるのか、疑問の声は多い。

 

《日本の伝統的な「責任取るために自ら辞めます」理論、むしろ無責任だと思う。責任を持ってこの組織を変えることこそ本当の責任》

 

《人身一心は、時期尚早ではないでしょうか?検証結果報告を区切りに体のいい責任逃れではないでしょうか》

 

《辞任をしても原因究明は進むどころが、捜査幕締めとなる。それで責任を取ったことになるだろうか?本当の責任は原因をきゅうめいすることでは》

 

《まぁ、昔ながらの形作りの辞職って感じだね…。むしろ事件当時の組織と体制を知るトップが、反省しながら警察組織の改善策を講じるある程度の期間は必要だと思うが》

 

 辞任する前に、やることがあるはずだが……。

( SmartFLASH )

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