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統一教会 幹部候補生はソウル留学で目が覚めた「教団直営校」で見た「文鮮明一族」「異常な寮生活」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.09.09 06:00 最終更新日:2022.09.09 06:00

統一教会 幹部候補生はソウル留学で目が覚めた「教団直営校」で見た「文鮮明一族」「異常な寮生活」

信者たちの男子寮。4人1部屋で、統一教会系の学校のほか、一般の中高に通う生徒もいた

 

 統一教会(現・世界平和統一家庭連合)は毎年、数十名の信者子女の選抜隊を留学生として、日本から韓国に送り込んでいる。当事者であった脱会2世が、知られざる“エリート信者”の養成システムを語った。

 

 田崎俊文さん(20代後半・仮名)は、IT企業のマーケティング部門に勤務している元信者で、両親ともに統一教会信者の家に生まれた。

 

 

「父母は別の大学でしたが、ともにCARP(原理研究会)に入ったのをきっかけに入信したようです。献身、奉仕中心の20代を送り、献金などで生活に困っていたようです。

 

 長男の僕が生まれたときに、国立大の理系出身の父はデバイス事業を起こし、成功しました。おかげで、僕はそこまで苦労せずに育ったと思います」(田崎さん、以下同)

 

 教団にとってもサラブレッドだった田崎さんは、通っていた教会で、教会長からソウルへの留学をすすめられた。統一教会は韓国内でいくつも教育機関を運営しており、田崎さんは十数年前、そのうちの一校、善正(ソンジョン)中学・高校に通った。

 

「教義の理解度を問うペーパーテストや面接を受け、全国の各教会からの応募者が40人にまで絞られ、現地の語学院での1年間の研修の後、善正中学に入学しました。ソウルには信者向けの日本人寮が2つあって、僕はそこから善正に通いました。そのほか、一時期は教会系の仙和(ソンワ)芸術中学にも通いました。

 

『教会のリーダーを育成する』という目的のためか、学費と寮費を合わせても、自己負担は月5万円と格安でした。現在の留学生は、年20人ほどのようです」

 

 善正はもともと女子校で、統一教会の総裁である韓鶴子氏(ハンハクチャ)の出身校だ。前身校が1950年に創立され、1980年代に共学化されたころ、教団が買収した。

 

「韓国人の生徒のなかに統一教会の信者はほぼおらず、校内では宗教行事はありませんでした。男子寮での朝晩の集会、毎週日曜の近くの教会での集会には出ていました」

 

 学校は布教のためにあるのではなく、あくまでビジネス。日本の統一教会でもおこなわれている、フロント団体と教団を使い分ける戦略だ。

 

「教会のフロント団体の代表をいくつも務める梶栗正義氏は、善正留学の一期生です。梶栗氏は1970年生まれで、父の玄太郎氏は教会の会長を務めた人物です。僕が留学していたときの寮長も、梶栗家の人でした。この方は寮生の兄貴分的な存在で、脱会した今でも尊敬しています」

 

 寮生活では教義の実習はあったが、むしろ肉体の鍛錬が重んじられた。ルールを破ると体罰があり、腕立て伏せ100回などが科された。

 

「しかし僕らは、それなりに青春を謳歌したと思います。教義では、成人でもタバコや酒はNGなんですが、みんなこっそり嗜んでいました。恋愛も禁止で、こちらはさすがに重く受け止めて、校内ではみんなおとなしくしていましたが、寮ではネットでAVを見てました(笑)。漫画は『銀魂』や『NARUTO』を読んでいましたね」

 

 田崎さんは毎週日曜日、教団の創立者・文鮮明(ムンソンミョン)氏の七男・文亨進(ムンヒョンジン)氏(現「サンクチュアリ教会」指導者)が、教会長を務めていた本部教会の礼拝に通った。
「2008年に文享進氏は、宗教分野の後継者に指名されていました。当時、教団内で幹部が献金を着服することが横行しており、説教のなかで批判を繰り返していました。説教を通して聴くと、そこだけ異質に感じましたね」

 

 さらに、教会関連の大規模行事がソウルである際、田崎さんたちは動員をかけられた。文鮮明氏が登壇したイベントにも2、3回参加したという。

 

「一般席はステージからとても遠くて、文鮮明氏の表情を判別することはできませんでした。すでに晩年にあたるころでしたが、演説の口調はしっかりしていました。しかし、出身地である北朝鮮北部の訛りのせいか、何を言っているか、まるで聴き取れませんでした。韓鶴子氏は、文鮮明氏と比べるとまったく存在感がなかったですね」

 

 そんな文鮮明氏の演説を、周囲は“基準が高い”という教団特有の用語で褒め讃えていたという。田崎さんは、そんな教団の“ごまかし”に、徐々に心が離れていった。

 

「意外かもしれませんが、私の体感的には“幹部候補生”のほうが、普通の2世信者よりも脱会していくメンバーが多い印象を持っています。

 

 僕は、高校を卒業するまで善正に留学予定でしたが、日本に戻りました。寮生活では、規律の厳しさを息苦しく感じていました。教義を学ぶほどに、矛盾に気づくのです。

 

 そして、信仰から離れるために大胆な行動に出ようと、教会とは関係のないアメリカの大学に進学しました。学生生活を満喫するうちに、僕自身はすっかり吹っ切れたのですが、現在も両親には脱会をすすめられず、腫れ物にさわるようにつき合っています」

 

 日本脱カルト協会の理事で日本基督教団白河教会の竹迫之牧師は、田崎さんのようなケースについてこう語る。

 

「日本の教会が掻き集めた数千億円の資金があれば、日本国内に自前の“学校”を作ることもできたはずです。なのにそうしないのは、選抜生を送り込めば、日本の幹部にとっては箔がつき、韓国の本部にも顔が立つと考えているのでしょう。そんな連中の自己都合で送り込まれた子供たちには、迷惑千万な話だと思います」

 

 霊感商法などの問題にがんじがらめになった信者とは別の、浮世離れしたエリート信者たち。彼らもまた、教団のヤバさに気づきはじめている。

 

取材/文・鈴木隆祐

( 週刊FLASH 2022年9月20日号 )

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