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仮想通貨「一瞬で2000万円失った」被害者が語る狡猾な手口…「AI取引で月利20%のはずが、残ったのは無価値な草コイン」

社会・政治 投稿日:2022.11.09 18:40FLASH編集部

仮想通貨「一瞬で2000万円失った」被害者が語る狡猾な手口…「AI取引で月利20%のはずが、残ったのは無価値な草コイン」

G社は責任を取るべきと力を込めるAさん

 

「2021年9月、海外の3カ所の取引所に仮想通貨の口座を開設しました。ところが取引開始1カ月後に、すべての取引所から『大きな損失が出ている。自身の取引か確認してほしい』とのメールが届きました。あわてて口座を確認すると、私のビットコインがほぼ全額、無価値な “草コイン” に変わっていたのです。

 

 結果、2100万円の投資額が一瞬で10数万円になってしまいました。しかも、同じ日の同じ時間に、それぞれ違う国の3つの取引所で同時に起こっているんです」

 

 

 怒りが収まらない様子でそう語るのは、都内に住む会社経営者のAさん(50代)だ。

 

 Aさんは2021年2月から3月にかけ、知人の紹介で仮想通貨セミナーに参加。5月に、仮想通貨をAIで自動売買するというシステムを、セミナーの主催会社から購入した。そして9月、中国・北京、香港、アメリカの仮想通貨取引所に口座を開設し、計2100万円ぶんのビットコインを購入した。一瞬でそのほとんどが消えてしまったのは10月のことだった。

 

 被害に遭ったのはAさんだけではない。都内在住の会社経営者のBさん(40代)もこう憤る。

 

「私も同じセミナーに参加して、その場でデモ取引を見て、投資することにしました。9月に、海外の取引所1カ所に口座を開設し、6000万円ぶんのビットコインを購入しました。

 

 たまに自分の口座をチェックしていましたが、9月27日に口座を見たところ、ほぼ全額のビットコインが別の仮想通貨に交換されていたのです。2日前の9月25日早朝に、一度に大量の取引がおこなわれていました」

 

 セミナーを開催しているのは、札幌に本社を置くG社。同社が開発した自動売買システムを利用すれば、各取引所の仮想通貨の価格差を察知して自動で売買し、利ザヤを稼げるというのが売りだ。

 

 しかも、誰かにお金を預けて運用するのではなく、自分自身の口座で運用する仕組みなので安全だという。取引をおこなうためには、各取引所で「APIキー(パスワードのようなもの)」を発行してもらうことになる。

 

 だが、Aさんは「自分のAPIキーをG社が管理していることが問題だ」と話す。

 

「APIキーさえあれば、口座のIDとパスワードがなくても、私の口座にある仮想通貨を売買できます。私は、APIキーの発行と登録をG社の関係者に代行してもらいました。今回の不正取引まで、私の口座に不審なログインはないし、APIキーを知るのはG社以外にありません。つまり、G社がこの不正取引に関与しているとしか考えられないのです。

 

 投資勧誘時の触れ込みでは、AIで自動的に仮想通貨の取引をおこない、1カ月に20%から30%の利ザヤが出るということでした。ところが、実際にはどの会員もほとんど利益が出ず、しかも、不正売買の被害にあった会員が私の知る限り何十人もいるのです。

 

 私は、会員が保有する仮想通貨を、G社が盗みだすための巧妙な仕組みだったのではないかと疑っています」(Aさん)

 

 現在、セミナー参加者のうち150人あまりが「被害者の会」を結成し、お互いの被害情報を共有している状況だ。不正売買で会員は多額の資金を奪われているのに、その一方、G社の社長は贅沢な生活をSNSに投稿していた。

 

「G社の社長は、自身のSNSで毎晩のように豪遊する様子をアップしており、被害者の間ではそれを見て『許せない』と怒りの声が広がっています」(Aさん)

 

 G社は2017年設立。「世界最高峰の人工知能」を駆使する取引をうたい、現在も全国で大規模なセミナーを開催している。参加者は大学生や会社経営者などで、なかには仮想通貨取引がまったく未経験の高齢者もいるという。それぞれの投資額は数十万円から数千万円まで幅広い。そのなかで、仮想通貨が消失する被害にあっているのは、高額投資した人に集中しているとみられる。

 

「私が参加したセミナーの講師を務めていたS氏は、2018年に83億円もの被害を出した投資会社『セナー』による仮想通貨投資詐欺事件の主犯格として逮捕され、有罪判決を受けた人物だと、あとになって知り、愕然としました。

 

 G社はこの人物と共謀して勧誘をおこなっていました。さらに、私のAPIキーの設定をおこなった女性も、セナー事件の共犯者として有罪判決を受けていたと知り、私の投資金はG社によって奪われたと確信しました」(Aさん)

 

 Aさんは、不正売買で受けた被害について、G社に対し賠償を求めた。するとG社からは「顧客情報を漏洩したり、システムがハッキングされたりした事実はなく、賠償する責任はない」と反論されたという。

 

 じつは、G社の問題点をYouTubeで指摘している弁護士がいる。ワンピース法律事務所の杉山雅浩弁護士だ。杉山弁護士は、G社に対し損害賠償を求め提訴した、福岡在住の会員の代理人も務めている。また、S氏は、逆に杉山弁護士を名誉棄損で訴えているが、2022年4月、東京高裁で杉山弁護士勝訴の判決が下されている。

 

「たとえばFXでも、APIキーを使って自動取引をおこなうことがあり、こうしたシステム自体はよくあるものです。しかし、G社の開発したシステムを利用した会員に被害を訴える人が多い。

 

 誰かが口座にアクセスし、ほぼ価値のない『草コイン』と呼ばれる仮想通貨を勝手に購入し、その資金をどこかに移し替えていると思われます。APIキーを知っているG社なら、それが可能なはずです。

 

 もっとも現段階では、海外の取引所の取引履歴を日本の警察は追えない。それがわかったうえで、用意周到にこのスキームを準備して投資を募っていると思われます。巧妙だといわざるを得ません」(杉山弁護士)

 

 Aさんは現在、G社を相手取り、民事・刑事の両方で裁判を起こす手続きを進めている。Aさんの代理人弁護士がこう話す。

 

「何十人もハッキングの被害にあえば、本来、大問題になるはずなのに、確認している限り、どの取引所でもそのような報告は上がっていません。すなわち、仮想通貨の不正売買はハッキングではなかったと考えられます。

 

 外部からのハッキングでないなら、APIキーの情報を把握しているG社が関与している可能性が疑われます。またG社は、利用者がこれ以上の被害にあわないように対策を取る義務があるのに、何の対策もしていません。現在、警視庁にも相談しているところです」

 

 じつは、Aさんをセミナーに誘ったG社側の人物が、Aさんに示談を申し出たことがあった。

 

「自分たちは不正売買に関与していないとしながら、私とBさんの2人に、被害額の一部を補填すると言ってきました。そのかわりに今後、訴訟やメディアへの情報提供をしないこと、さらに今回の件をいっさい口外しないことが条件だと言ってきました。冗談じゃないですよ。とにかくG社側は、我々を黙らせたいだけだと思い、示談は断りました」(Aさん)

 

 なぜG社は示談を持ちかけたのか。また、不正売買が続いているにもかかわらず、なぜ現在もセミナーを続けているかについて質問状を送ったところ、代理人の弁護士を通じ、次のような回答があった(以下は回答書の要約)。

 

「セキュリティ上、内部からの不正操作はあり得ない。またG社のシステム利用者以外にもハッキング被害は多数、報告されており、G社の利用者がとくに被害が多いという事象は見られない。

 

 そもそもG社のサーバーがハッキングを受けた事実はないので、被害を受けた利用者は、直接、自身で対応していただくほかない。また、G社は月利の保証をしたり利益を確約した事実はまったくない。さらに、A氏に対し、損害の補填を持ちかけた事実もない」

 

 投資は自己責任だが、不正な取引の被害が会員に相次いでいることについて、会社として調査・説明をする必要があるはずだ。

( SmartFLASH )

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