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菅野志桜里氏が語る「政治と宗教」「公明党が向き合わなければ、旧統一教会の問題は解決できない」

社会・政治 投稿日:2022.11.17 06:00FLASH編集部

菅野志桜里氏が語る「政治と宗教」「公明党が向き合わなければ、旧統一教会の問題は解決できない」

 

 オウム真理教の事件を受け、1995年の宗教法人法改正で追加された「質問権」。それを初めて旧統一教会(世界平和統一家庭連合)に対して行使することを、11月11日、永岡桂子文科相が表明した。調査によって違法性のある事実が確認されれば、裁判所に解散命令を請求する方針だ。

 

 教団の霊感商法への対策を議論する消費者庁の検討会で、委員を務めた菅野志桜里氏は、8月29日に開かれた第1回の検討会で、真っ先にこの「質問権」にふれた。菅野氏は「山尾」姓で衆院議員を計3期務め、現在は弁護士として、国内外の人権問題の解決に取り組んでいる。

 

 

「検討会のスタート前から、宗務課への野党ヒアリングなどで漏れ聞こえてくる答弁を追っていると、『これ、1回も質問権を使ったことないんじゃないの?』と、すごく思って。だから、私としては解散命令については、まずこれまで、教団に質問権を使ったことがない、という点を押さえたかった。

 

 安倍晋三元首相の銃撃事件以降、信者さんや、脱会者、あるいは2世の方が勇気を振り絞って声を上げ、自分の体験を一生懸命、言葉にし、ようやく問題が世間に浸透してきています。そうやって当事者の方々が努力して引きつけた関心を、いかに政策に結びつけ、法律でどう解決していくか。それが私たちの課題だと考えています。

 

 やっぱり法律言葉というのは分かりにくい。『契約って何?』『献金とは何が違うの?』『取り消し、無効、損害賠償っていったい何なの?』といった、素朴な疑問が出て当然です。とにかく、できるだけわかりやすい言葉に通訳し、論点を整理して伝えるという役割を果たさなければいけないと思いました。

 

 初会合で河野太郎大臣(消費者相)が『消費者庁の枠を超える場合は政府に提言する』と言ったように、検討会の第1回が山場になると思い、議論の最初で『質問権』という言葉を出したんです。ただ、弁連(全国霊感商法対策弁護士連絡会)の皆さんは、それこそずっと前から質問権を使えと言ってきたことだから、私が突然、発見したとか、そういうことではありません」

 

 菅野氏とともに検討会の委員を務める、紀藤正樹弁護士が所属する「全国霊感商法対策弁護士連絡会」は、1987年の設立以降、信者の被害の問題を訴えてきたが、30年以上、なんの施策も取られなかった。その背景には、政府与党と教団の癒着関係があった。

 

「教団と一部自民党議員が政策協定を結んでいたことや、『家庭教育支援法』の制定に取り組むよう教団の働きかけがあったことは明らかになっていますし、2023年4月にできる『こども家庭庁』の名称に急きょ『家庭』という言葉が入れられたのは、教団の意向を反映した可能性も否定できません。父母と子からなる家族を重視し、同性婚やLGBTの権利を認めたがらない、という教団の価値観は、自民党の保守派と合致します。

 

 ただそれは、旧統一教会に限りません。いわゆる家父長的な制度の維持を求める団体はほかにも複数あり、自民党を中心に、与党議員は間違いなくそれらの影響を受け、そのために実現、あるいは阻止された政策もあるはずです。

 

 そこまで“アナクロ保守”ではない議員も、賛否を問われると『LGBT法案に消極的』『夫婦別姓反対』と答えることを、これまですごく不思議に感じていたんです。でも、やっぱり旧統一教会の一連の問題が明るみになるなかで、そういった団体からのプレッシャーは大きいんだなと思いました。

 

 私自身、2009年の衆院選の候補者時代、先輩議員に『この女性たちが集う勉強会に行っておいで』と言われて、本当に恥ずかしながら、どういう目的の会合なのかをあまり把握しないまま、参加したことがあります。円卓に座り、イベントが始まってしばらくしたら、当時の秘書が私のところに来て『これ、統一教会の関連かもしれないです』と耳打ちしてくれて、その瞬間、『私、絶対ここにいちゃいけない』と、席を立ったことがありました」

 

 旧統一教会と自民党議員の接点が次々と明らかになり、政教分離の議論が再燃するなか、連立政権を担う公明党と創価学会の関係にも注目が集まる。

 

「現在、創価学会という宗教団体の強い支援を受けている公明党と、その選挙協力なしに議席が保てない自民党が与党であり、政権を担っています。この状態で国の政策が歪まないのか、宗教と政治の関係を考えなおすべきじゃないか、そう感じている人は多い。

 

 公明党のホームページには、創価学会との関係についてこう書かれています。学会の名誉会長である、池田大作さんの発意によって作られ、学会の支持を受けています、連絡協議会もやっています、でも国民全体に奉仕する政党です、と。まさにいま『公明党って、本当に国民政党なんですか?』ということが鋭く問われている局面です。その問いにしっかり向き合わなければ、旧統一教会の問題は解決できません。

 

 永田町の人たちは、『公明党がいるから宗教法人法には手をつけられないよね』とか、まるで当然の前提のようによく言うんですよ。でもそれが本当だとしたら、自公政権そのものが政教分離違反のそしりを免れない。むしろ、公明党にとって今こそ、政権を担う資格を証明するチャンスじゃないでしょうか。『カルト的な違法行為をおこなう宗教団体と創価学会は違います』『宗教的利益のために政策をねじ曲げるような政党ではありません』といったことを示せるか否かの、岐路に立たされていると思います」

 

 検討会の議論は、「解散ありき」だったのではないかという声もある。たとえば、元信者で金沢大学教授の仲正昌樹氏は「被害者救済のために早期解散を求めるというのは一般信者への配慮がない」「教団幹部と一般信者は立場が違う」と問題提起している。

 

「当然、教団自体と信者の方々は切り分けて考えないといけません。内心における信教の自由は絶対であって、信者さんの信仰そのものを否定するようなことがあってはならない。

 

 一方で、自民党議員を中心に、政治家は教団に対して、宗教法人としての法人格や連帯のメッセージなど、いわば公的なお墨つきを与えてきました。そのことが、違法な人集めや金集めに利用され、宗教2世の方々の人生の選択肢を奪い、高額献金被害の拡大につながってきたわけです。だとすれば、そこは断つ必要があるし、法人格や税優遇を取り消さなければなりません。

 

 信仰や教義そのものを悪とせず、しかし正体を隠した伝道や、不安を煽って高額献金をさせるという行為に着目して、ダメなものはダメだということを、政治家は示さなければなりません。

 

 解散命令を出すと、公のお墨付きがなくなったということで、一般信者の皆さんが動揺することが考えられます。脱会を目指す人も出てくるでしょう。一部の専門家の手弁当にサポートを委ねるのではなく、精神科医や宗教社会学者など、さまざまな分野の専門家からなるチームをつくり、予算をつけてサポート体制を構築しなければなりません。もちろん、信仰を継続する方々を、社会がどう包摂していくかということも大切な課題です。

 

 救済法については、教団への献金規制と、信教の自由や個人の財産権のバランスを丁寧に議論すべきです。政治家が得点稼ぎのために『今国会』と乱暴に期限を切って、献金全般の制限に向けて突っ走っていくと、社会への過度な制約になりかねない。そういう意味では、仲正先生の問題意識は十分、共有できます。私としては、今国会ギリギリまで努力をしてもらって、それでも無理だったら、来国会の最優先事項として、契約法改正や献金規制を仕上げてもらいたいです」

 

 菅野氏自身は、宗教をどのように捉えているのだろうか。

 

「生きていくうえで何かに頼りたい、何かの一部でありたい、と思うのは自然な気持ちだし、誰しもよりどころは必要です。そのひとつとして、宗教はすごく大事なものだと感じています。政治家の仕事を通じて、私は初めてさまざまな宗教団体や、地域コミュニティとふれたんです。日常的に人とつながり、災害時に助けあい、平和を願って集える場所というのは、本当に大切な社会のインフラだと思いました。旧統一教会の問題により、宗教そのものが社会の片隅に追いやられるようなことにはなってほしくないし、まともな宗教団体が委縮せずに活動を続けられるようにしてほしいですね」

( SmartFLASH )

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