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広大病院「小野薬品を使え」贈収賄疑惑メール入手! 寄附講座開設と引き換えに“割高薬”採用の闇―本誌取材で大学も調査へ
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.12.12 06:00 最終更新日:2023.01.11 22:21
「教授になりたいからといって、患者を蔑ろにしていいはずがない。賄賂だと非難されても、仕方がありませんよ」(広島大学病院関係者)
広島市に位置する広島大学病院は、先進医療を担い、多数の人材を輩出する、中国地方の医療の中心的存在だ。
しかし冒頭の発言のとおり、この“巨塔”を舞台に、贈収賄事件が起きた疑いがあるのだ。
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主役は内分泌・糖尿病内科の長を務めるM医師と、製薬メーカーの小野薬品工業(以下・小野薬品)だ。
「M氏は糖尿病の専門医ですが、上昇志向が強く、人望はありません。上司から部下の時間外勤務が多いことを指摘されると、17時以降病棟で働く医師らに『仕事が遅いだけ』と非難するメールを送り、顰蹙(ひんしゅく)を買ったこともあります」(別の大学病院関係者)
このM医師の現在の肩書は、「寄附講座教授」というもの。寄附講座とは、企業が大学に寄附金を納め、開設する講座のことだ。
「医療分野の場合、たとえば製薬会社が寄附講座を開設することで、大学に治療法などの新技術を研究してもらい、自社の新薬の開発などに役立てるといった目的があります。寄附金には教授や事務員の人件費なども含まれるので、大学側にとってもメリットが大きい」(医療ジャーナリスト)
M医師が“教授”を務める寄附講座は、2018年4月から2021年3月までの3年間の予定で開設された。寄附者と年間の寄附額はそれぞれ、小野薬品が1500万円、田辺三菱製薬、興和創薬(現・興和)、テルモが各300万円の計2400万円。
M医師の人件費は1040万円で、小野薬品だけで3年間で4500万円もの資金が投じられた巨額な寄附だ。
そして、小野薬品とM医師との間で不審な動きが始まったのは、開講直前の2018年3月のことだった。
「糖尿病患者に対し、DPP-4阻害薬という種類の薬を処方することがあるのですが、病院ではMSD社の『ジャヌビア』が採用されていました。
しかし3月7日に、同じ種類の薬で、小野薬品の『グラクティブ』が新たに病院外の調剤薬局で採用されることが決まったんです」(前出・病院関係者)
その2日後、「糖尿病薬の使用」と題したメールがM医師から部下らに届いたという。
「大学病院の外来や外勤先にて、寄附講座の設立に貢献した、小野薬品、興和創薬、田辺三菱の薬剤をなるべく使ってあげてください。添付は努力目標です。一見したら破棄・削除をおねがいします」
このメールを見た病院関係者は、疑問を感じたという。
「ジャヌビアとグラクティブは、製造会社が違うだけで中身は同じ薬なんです。しかもグラクティブのほうが、ジャヌビアよりも1錠あたりの薬価が2円ほど高いんです。寄附講座を開講してくれたからといって、やりすぎです」
糖尿病専門医も疑問を呈す。
「効果が同じで、薬価が高い薬をわざわざ処方することはあり得ません。患者の負担が増えるだけですからね」