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野田佳彦氏“惨敗”10日後…2人だけの控室で安倍晋三氏がかけた言葉「あなたにも返り咲く日がやってくる」【政敵が明かす美談】
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2022.12.25 06:00 最終更新日:2022.12.25 06:00
「安倍さん。あなたは議場では『闘う政治家』でしたが、国会を離れ、ひとたび兜を脱ぐと、心優しい気遣いの人でもありました」
10月25日、衆議院本会議でおこなわれた野田佳彦氏の追悼演説は、大きな反響を呼んだ。そのなかには、意外な人物もいた。
「じつは、麻生(太郎自民党副総裁)さんから、ご丁寧な礼状をいただいたんです。巻紙に毛筆で、私の追悼演説への感謝が綴られていました。麻生さんから手紙をいただいたのは初めてで、驚きました」
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追悼演説は、あくまで「内閣総理大臣・安倍晋三」について語った。野田氏はそう強調するが、披露したエピソードからは、はからずも安倍氏の “素顔” がのぞく。当選同期の2人が、初登院で同席したときのことだ。
「私は地盤、看板、カバンなしの徒手空拳(としゅくうけん)で闘ってきた “成り上がり” ですが、安倍さんは同期のなかでもいちばんスポットライトを浴びる眩しい存在でしたね。初登院の日、国会議事堂の正面玄関で安倍さんは大勢の取材陣に囲まれていましたが、私なんか記者団は素通りでした(笑)。安倍さんは、岸信介元総理を祖父に持つ政治家一家の生まれですが、そういう2世、3世議員は自民党にはたくさんいます。やはり人を惹きつける魅力があったからこそ、安倍さんはトップまで上り詰めるのも早かったのだと思います」
野田氏がそんな安倍氏の人間性にあらためてふれたのが、2012年12月26日のことだ。「解散します。やりましょう」と、直前の党首討論で期日を明言して臨んだ解散総選挙に敗れ、新首相となった安倍氏の皇居での親任式に、前首相として立ち会ったときだった。
「式の前に、控室に2人だけでポツンと残されたんです。勝者と敗者ですからね、シーンとしちゃうんですよ。敗者の私には残酷な空間です。こっちはひと言も口をききたくなかったし、別々の部屋にしてほしかった。ところが、勝者である安倍さんのほうから近寄ってきて『お疲れ様でした』と声をかけてくれたんです」
安倍氏は、さまざまな言葉で野田前首相を労った。
「野田さんは安定感がありましたよ」
「自分は5年で返り咲きました。あなたにも、いずれそういう日がやってきますよ」
その場は、「傷ついた人を癒やすカウンセリング・ルーム」のようだった。野田氏は追悼演説でそう語っている。
「私は敗軍の将ですからね。安倍さんのしたことは、ボクシングでいえば、ノックアウト負けした選手を勝者が称えるのと同じじゃないですか。ただ、勝者の驕りとは思いませんでした。驕りなら、ああまで何度も何度も声をかけてくれなかったと思います。やっぱりそれは、安倍さんの気遣いだったんです。でもそのときは、素直に受け止める心の余裕はありませんでした」