社会・政治
東京藝大、練習ピアノ売却の衝撃…年1%ずつ予算削減で「お金がない!」学費・学食値上げ、空調も不調の惨状
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.02.10 16:19 最終更新日:2023.02.10 16:53
東京藝術大学の現役学生と思われるアカウントが投稿した内容が、SNS上で物議を醸している。
問題となったのは、《藝大、本当にやばいかもしれない、、、、》と、1枚のスクリーンショットとともに投稿された2月2日のツイート。画像の内容を見ると、「練習室ピアノ撤去について」というタイトルで、「大学の予算削減のため、(中略)2部屋のピアノを撤去することとなりました」というお知らせが記されている。
【関連記事:全米ベストセラーで日本の伝統工芸「金継ぎ」が使われた深いワケ】
芸術大学で、まさかのピアノ撤去という事態に、SNSでは《国の芸術エリート養成最高峰の学校がこんな…》《もう日本には芸術を学ぶ、守る余裕がなくなってきてるんだなぁ》などと衝撃が走った。このツイートは、現時点で1.9万いいね、1.1万RTされるなど、大きな注目を集めている。
本誌が東京藝術大学総務課に問い合わせたところ、《音楽学部器楽科弦楽専攻」の研究室が、所属学生に対し「練習室ピアノ撤去について」というお知らせを行ったのは事実です》と認めた。
理由については、《電気代高騰等の影響により、大学全体として経費削減を進めていますが、音楽学部では、保有台数が多く、調律代等の維持費がかかるピアノについて、設置場所や台数の見直しを行いました》と説明。
今回、ピアノを撤去する部屋は弦楽器の練習室で、チェロやコントラバスなど大型弦楽器の練習には、ピアノがないほうがスペースが確保しやすいという。
加えて、《設置されていたピアノは主に副科ピアノ(副科は自分の専門以外の実技授業であり、副科ピアノはピアノ専攻以外の学生が履修する)の練習用に設置されたものであり、その台数は学部内で十分確保されている》と主張。
《よって、ピアノ専攻の学生はもちろん、他専攻の学生に対してもピアノの練習環境に影響を与えるものではありません》とした。
SNS上では、撤去されたピアノの行き先を気にする声も多数あがっていたが、同大総務課は《状態が良ければ、より活用できる他の部屋に移動しますが、今回撤去した2台は、状態が良くないため、処分(売り払い)を予定しています》と回答。
2019年に学費を20%値上げしている東京藝大だが、SNSでは「空調の効きが悪くて毛布とカイロが配られる」「円安の影響で図書館で購入できる資料が減ってしまう」など、学生たちが大学の窮状を次々と指摘している。なお、2019年には学食も値上げされている。
同大総務課は、大学の運営について《電気代高騰等が大学運営に大きく影響していることは事実ですが、財政状況の改善に向けて様々な取組・検討を進めています》と回答した。予算が厳しいのは事実のようだ。
国立大学として日本唯一の総合芸術大学で、芸術系の大学で日本一とされる東京藝大が、なぜここまで困窮する事態に追い込まれているのか。元文部省官僚の寺脇研さんがこう語る。
「国の財政が厳しいなか、国立大学の予算をどうやり繰りするか、1980年代からずっと議論が続いてきました。
その結果、2004年の行政改革で国立大学は法人化されました。大学側の裁量を増やし、おのおので収益をあげてもらう一方、国が各大学に交付する予算(運営交付金)は年1%ずつ削減されていったんです。
収入の半分近くを運営交付金に頼っていた国立大学は、これによって大きな打撃を受けました。
特に、芸術大学はお金がかかります。私立でいえば、医学部がいちばん授業料が高いのですが、次に高いのは芸術学部でしょう。私立芸大の年間授業料は、国立大学の2~3倍近い金額を取られます。
東京藝大の年間授業料は約64万円、学費が高いことで有名な多摩美術大学の年間授業料は約120万円です。それだけ経費のかかる分野ということです。
しかし、芸術がお金を生めるかといえば、正直、難しい。もともと生産性が低い分野にもかかわらず経費はかかるとなれば、東京藝大が苦しい状況に置かれていることは想像にかたくないことです」
現状、学生や教員たちが割を食う状況となっている。大学運営をめぐる構造上の限界が近づいているのではないか。
( SmartFLASH )