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【現地ルポ】いわき市で高齢資産家女性が強盗殺人の被害に 不幸にも揃ってしまった「強盗に狙われやすい条件」

社会・政治 投稿日:2023.02.15 16:40FLASH編集部

【現地ルポ】いわき市で高齢資産家女性が強盗殺人の被害に 不幸にも揃ってしまった「強盗に狙われやすい条件」

鑑識作業が続けられている小松さんの自宅

 

 フィリピンを拠点に「ルフィ」などと名乗る男らが日本国内のメンバーに指示を出し、全国各地の高齢者を狙って金品を奪い取ったとされる、広域連続強盗事件

 

 福島県でも1月に77歳の男性が、2月に85歳の女性が相次いで殺害される事件が発生し、一連の事件との関連性が捜査されている。

 

 

 福島県の両事件が起きた地域を管轄する、いわき南警察署の渡辺政喜副署長が説明する。

 

「広域強盗事件との関連も含めて、警察庁などとも情報を交換し、鋭意捜査を進め、一刻も早く犯人検挙に努めているところですが、目下の段階では関連は確認されておりません」

 

 今回、本誌は被害女性の小松ヤス子さんが住んでいた、いわき市の自宅に向かった。事件の概要はこうだ。2月3日夜、小松さんが自宅1階の廊下付近で血を流し、うつ伏せの状態で倒れているのを長男(58)が発見、119番通報した。救助隊が駆けつけたが、その場で死亡が確認された。

 

 4日におこなわれた司法解剖の結果、死因は複数の頭部骨折や外傷による出血と判明し、県警は他殺と断定。1、2階の部屋全体が荒らされ、物色された形跡があることから、強盗殺人事件として同日午後8時、いわき南署に捜査本部を設置した。

 

 事件現場は、JR常磐線勿来(なこそ)駅から約1.6km離れた住宅地。周囲は県道の両側にレストラン、美容院、コンビニやスーパーなどが立ち並び、日常生活には困らない便利な場所だ。また、近くには県立勿来高校があり、人の往来も決して少なくない。

 

「小松さんは1960年代ごろからここに住んでおり、毛糸やボタンなどを扱う手芸店を営み、商店会にも加入していたんです。けれど、ご主人が亡くなって間もなく、店を閉めました。かれこれ6年ぐらいたつでしょうか。自宅は、長男さんがお母さんのために建てたと聞いています。敷地はざっと300坪もあるので、この周辺ではひときわ目立つ邸宅といっていいぐらいですよ」

 

 こう話す住民は玄関を出て、かつて手芸店があったところを記者に指で示した。

 

「手芸店があった場所も、いまはご覧のように更地にして駐車場になっています」

 

 小松さんは一人暮らし。この住民によると、親の財産分与を受けて300坪の自宅のほか、田畑、山林など、数カ所の不動産を所有する資産家だったという。そして、その一部はゴルフ場開発業者に売却し、多額の利益を得ていたともいわれている。それでも暮らしぶりは質素で、室内に家具や調度品は少なく、外出の機会も多くなかった。

 

「押し買い」の業者が連日、付近を訪問

 

 だが、資産家の高齢者、一人暮らし、近所付き合いも少ない――と、強盗に狙われやすい条件が揃ってしまっていた。実際、事件現場周辺には、貴金属類の買い取り業者を名乗る複数の不審な人物が、各家庭を回っているという噂が広がっていた。

 

「いわゆる『押し買い』ってやつですね。指輪やネックレスはないか、古い時計やカメラは、といっては買い漁る業者が、頻繁にやってきますよ。我が家にも、黒いスーツ姿の男が2度もやってきて、庭だの駐車場だのをうろつくから、ないといって断ったんです。ピンポンも鳴らさずいきなり入ってきたりしてね」(近所の住人)

 

 事件の前日にも押し買い業者が戸別訪問し、「地元のスーパーでバザーを開く予定があるので貴金属はないか」と聞き回っていたという。

 

 そこで、地元の大手スーパーに確認したところ、「そのような予定はありません。過去におこなったこともなく、名前を使われてむしろ迷惑しているところです」との回答だった。

 

 いわき南署にも、不審な人物が現場周辺を歩いて回り、資産情報などを集めている疑いがある、との情報が住民から寄せられ、事件との関連性を調べていると、渡辺副署長は認めた。

 

 このような不審者の出没に不安を抱いた親族は、3日の午後3時ごろから繰り返し、小松さんの自宅に電話をかけていた。ところが、小松さんは一向に電話に出なかったため、親族は長男にこのことを伝え、長男も午後6時ごろに電話をかけた。しかし、結果は同じだった。

 

 ついに長男が母親の家を訪れると、そこで倒れている姿を発見した。

 

 事件現場から200mほど歩けば住宅は途切れ、河川や水田がひろがる田園地帯となる。警察は5日、近くを流れる蛭田川の川底や土手、水田などを捜索したが、凶器や遺留品は発見されなかった。

 

「言い争う声や悲鳴などを聞かなかったか、走り去る人物を見なかったか、と捜査員にも聞かれましたが、すぐ隣に住んでいても、まったく気づきませんでした。まさか日中、こんな田舎町でとんでもない事件が起きるなんて想像もしませんし」

 

 小松さん宅の隣に住む住民は、こう言って顔をしかめる。

 

 犯人は玄関から屋内に押し入り、小松さんを鈍器のようなもので襲ったうえ、手当たり次第、金品を探し回ったと見られている。ただ、玄関は南側に面しており、人通りがある県道や商店街は北側だったため、“死角”になっていた。

 

 事件当日の正午ごろ、自宅に向かって県道をひとりで歩く小松さんの姿を、防犯カメラが捉えている。だが、この後の行動は不明だった。そのため、住民たちは事件をきっかけに、市に対して防犯カメラの設置増を求めている。

 

 事件現場は、「立入禁止」と書かれた黄色のテープとともにブルーシートで覆われている。敷地内では連日、鑑識作業がおこなわれており、「玄関や勝手口のカギはかかっていなかった」「左手の小指が切断されている」「玄関付近に靴の跡が残っている」といった情報が明らかになっている。

 

 小松さん宅の物干し場には、いまなお白いマスクやタオルなどの洗濯物が、ハンガーにつるされたまま、風に揺れている。

( SmartFLASH )

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