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「『はだしのゲン』教材から削除」で大論争 小銭稼ぎ、鯉泥棒の描写が「今の実態にそぐわない」に「当たり前じゃん」

社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.02.17 17:11 最終更新日:2023.02.17 17:15

「『はだしのゲン』教材から削除」で大論争 小銭稼ぎ、鯉泥棒の描写が「今の実態にそぐわない」に「当たり前じゃん」

『はだしのゲン』は英語版も作成された。右は作者の故・中沢啓治さん(写真・時事通信)

 

 広島市の市立小学校で、平和教育の教材として使われている漫画はだしのゲン』。しかし、4月から使われる教材では削除されることが、広島市の教育委員会で決まった。

 

『はだしのゲン』は、2012年に亡くなった漫画家・中沢啓治さんの被爆体験をもとにした作品。広島を舞台に、戦中・戦後の激動の時代を生き抜く主人公の姿を通して、被爆の悲惨さ、戦争の不条理や愚かさなどが描かれている。

 

 

 教育委員会で問題とされたのは、主人公が街角で浪曲のまねごとをして小銭を稼ぐ場面と、栄養失調の母親に食べさせるために、池の鯉を盗む場面。なぜこういう状況になったのか、じっくりと理解して考えさせるためには時間が足りない――として、削除することになったという。SNSには

 

《『漫画』だからという理由だけで、大人の身勝手な理由で削除。広島市民として恥ずかしいし情けない》

 

《戦時中の話が現代の実態と合わないの当たり前じゃん。なぜ子供がそうせざるを得なかったかを事実から学ぶんやろ…》

 

 と嘆く声があふれている。なかには

 

《核の廃絶を訴えて平和外交ができるのに、岸田首相の出身であり、かつ、被爆都市の広島がこのような選択をするのは愚の骨頂》

 

《広島サミットがあるからアメリカ様に忖度してるの?原爆落とされたことも無かったことにしたいのか》

 

 と、広島を選挙区とする岸田文雄首相や、5月に開催されるG7広島サミットへの忖度ではないかという批判もある。

 

 その一方で、削除に理解を示す意見も少なくない。

 

《この作品は作者が6歳の時の体験を元にしたノンフィクションの側面と、作者が傾倒した共産主義のプロパガンダ的な側面が有ります。政治的に偏った考えに基づいた作品を公立学校の副教材から外すのは致し方ないかなと私は思います》

 

《「はだしのゲンで被爆の実態に迫りにくい」は事実やろ。3巻からあと残り全部ヤクザ漫画やぞ》

 

《自分も少し読みましたけど、原爆の漫画と言う印象より戦後のハチャメチャな日本の描写と言う印象しか残っていません。原爆についてなら「黒い雨」を読んでもらうほうがよほど良くわかるのではと思います》

 

 広島市教育委員会は、今回の決定について「作品自体を否定することではない」としているが、この作品に関しては、以前からさまざまな論争が起きている。

 

 2012年には、島根県松江市で「間違った歴史認識を植えつける」として、学校の図書館に置かないよう求める陳情があった。松江市内の小中学校では閲覧制限がかけられたが、翌2013年、日本図書協会の要望もあり制限は撤廃された。

 

 2013年には「差別的表現が多すぎる」として、大阪・泉佐野市長が学校の図書館から回収を要請。2014年には同市の校長会が「読むことさえできなくするのは子どもたちへの著しい人権侵害」として、回収撤回を要望。これを受け、図書は返却された。

 

 多くの国で翻訳され、原爆の悲惨さを世界中で伝えてきた『はだしのゲン』。教材としての是非は別として、あの時代の「リアル」を伝える、唯一無二の存在ではないか――。

( SmartFLASH )

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