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遺伝子組み換え「光るメダカ」販売で逮捕…日本初の「カルタヘナ法」違反、量刑はどうなる?
社会・政治FLASH編集部
記事投稿日:2023.03.10 15:43 最終更新日:2023.03.10 16:04
電気を消すと赤く発光するように遺伝子を組み替えたメダカを飼育・販売したなどとして、全国で初めて「カルタヘナ法」違反での逮捕者が出た。
逮捕されたのは、メダカ販売業者の増田富男容疑者(67)ら5人で、おととしから去年までの間に、遺伝子を組み換えたミナミメダカを、国の承認を受けずに自宅の庭で育てるなどしたという。このメダカには「イソギンチャクモドキ」の遺伝子が組み込まれていて、紫外線を当てると赤く蛍光発色すると報道されている。
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2009年ごろ、当時大学院生だった男性が東京工業大学の研究所から卵を持ち出したことをきっかけに愛好家の間に広まり、販売が繰り返されたとみられる。
2022年3月、逮捕されたうちの1人がこのミナミメダカを「ロイヤルピングー」と名づけ、展示会で1匹10万円で販売しているのを客が見つけ、事件が発覚したとも報じられている。
それにしても、カルタヘナ法とは聞き慣れない名称の法律だ。
「弁護士でも、9割がたは今回のニュースで初めてこの法律の名前を聞いたのではないかと思います。そのくらい知られていないマニアックな法律です」
そう語るのは、環境法に詳しい猿倉健司弁護士だ。カルタヘナ法は、南米コロンビアのカルタヘナでおこなわれた生物に関する国際会議にちなんで名づけられ、日本では2004年に施行された。
「カルタヘナ法は、『遺伝子組み換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律』という名称の法律なのですが、今回、問題になったのは、譲渡目的で遺伝子を組み換えた生物を育成していた、という点です。
法律上は、環境省の承認を受けた場合であれば、遺伝子組み換え生物等を飼育することは可能です。今回のケースは、承認を受けずに販売目的で飼育したことが問題視されたということです。
大学等のしっかりした施設内で飼育する場合以外に承認された事例はないため、そもそも販売目的だと承認されないでしょう」
仮に今回のメダカが野外に広がってしまった場合、国内在来種との交雑が進んでしまう可能性もある。カルタヘナ法違反での逮捕者は今回が初めてだが、容疑者たちの量刑はどうなるのか?
「法律上の罰則としては、50万円以下の罰金か6カ月以下の懲役。または併科といって、両方が科される場合もあります。ただ、今はまだ逮捕された段階で、この後、起訴して裁判にかけるかどうかは検察次第となります。
高額で販売されるなど得られた経済的利益が非常に大きいとか、組織的に飼育販売がおこなわれていた場合には、量刑も重くなることがありますが、他方で、あまり悪質性がないとか、本人が相当反省しているとなれば、場合によっては不起訴で終わることもあり得ます」(猿倉弁護士)
前例がないだけに、今回逮捕された5人にどういった処分がくだされるかは大きな意味を持つという。
「刑事事件としてカルタヘナ法を適用するのは初のケースですから、今回、裁判所が下す判断は、今後同様の事件が起きた際の基準になります。そういう意味では、厳しい判断をするのか、寛容な判断をするのか、その結果を見ることで、司法のスタンスがわかると思います」
逮捕された5人はいずれも容疑を認めているという。はたして、どのような判断がくだされるのか。
( SmartFLASH )