社会・政治社会・政治

生活保護「扶養照会で仕送りした親族は0.7%」報道で問われる存在意義「自治体の嫌がらせ」「『まずは自助』を明確に」

社会・政治 投稿日:2023.03.27 18:00FLASH編集部

生活保護「扶養照会で仕送りした親族は0.7%」報道で問われる存在意義「自治体の嫌がらせ」「『まずは自助』を明確に」

(写真・時事通信)

 

 扶養照会が金銭援助につながる割合は「0.7%」。3月27日に朝日新聞が報じた数字が波紋を広げている。

 

「扶養照会」とは、生活保護を申請すると、自治体の福祉事務所が申請者の親族に援助できないかを確認する仕組み。扶養義務者による扶養は「保護に優先する」という、生活保護法の規定に基づいている。民法上で「扶養義務」がある3親等までの親族が対象となるが、おもに親や子、きょうだいに照会する自治体が多いという。

 

 

 朝日新聞は、全国の県庁所在市、政令指定市と東京23区の計74市区にアンケートや情報公開請求を実施。2020年度、2021年度の実績を調べたところ、保護の開始が決まった計20万6513世帯について、親族のべ22万7984人に扶養照会をしていた。その結果、仕送りをした親族はのべ1564人(約0.7%)だったという。

 

 また、照会対象としてリストアップした親族のうち、実際に照会した割合(照会率)は、2021年度で約5%から約78%まで、自治体間で差があることもわかった。朝日新聞は、親族に知られることを理由に申請をあきらめる人がいるとして、生活困窮者の支援団体などの間では扶養照会について批判の声が強いことも報じている。

 

 朝日新聞の報道を受け、立憲民主党の吉田晴美衆院議員は3月27日、自身のTwitterにこう書きこんだ。

 

《扶養照会は、不要です。困窮する母が、保護を受けられないまま子どもと孤立している、杉並区でもおきています》

 

 SNSでは、「扶養照会」をやめるべき、という声が多く上がった。

 

《扶養照会は生活保護のあり方を歪めるので、やめるべきです》

 

《扶養照会を自治体が手放さないのは、生活保護申請をさせたくないからとしか思えない。そもそも、頼めるなら頼んでるし、国民の個人の権利を制限して、家族だけに押しつけようとしてるのでは?嫌がらせだと思う》

 

《実は扶養照会、してない自治体も多いのよね…何故ならその後仕送りをする親族が1%以下だったりするから…(ちゃんとするような間柄なら照会なしにやってると思うし)なので、これは単に人の羞恥心、常識に訴えかけて生活保護を申請「させない」嫌がらせ行為に過ぎないと思う…》

 

 一方で、扶養照会は必要という声も。

 

《生活保護の扶養照会は必要だと思う。不正受給があるから。その反面、今の家族関係は複雑だから、公務員だろうと大金持ちだろうと理由があれば親族は生活保護を受けていいと思う。縁の薄い家族を養うとか一緒に住むなんて現代人には無理でしょ》

 

《生活保護の扶養照会って「子どもや親戚が金あるなら頼ってね」って話なのに、何が問題なのか分からん。子供も裕福で老人がぬくぬく生活保護貰って…なんてなったら嫌だけど。なんかなー》

 

《0.7%でも大事なこと 人権屋や貧困ビジネスが「仕送りする必要ない」などという悪印象を刷り込まれてしまっているから低いままなので「まずは自助である」と言うことを明確にするべき 本当に必要な人に本当に必要な額の支援ができる様にすることを最優先にすべき》

 

 生活保護の扶養照会については、東京新聞も2022年9月、東京都内の28自治体にアンケートした結果を報じている。

 

 都内の特別区23区と、人口20万人以上の市を対象に実施。各自治体の生活保護決定世帯のうち、扶養照会を実施したケースは、2021年度で、新宿、中野、足立、千代田、江東区が7.1~29.8%と3割未満だったのに対し、港、杉並、渋谷区で60.0~80.3%と6割以上の高率だった。

 

 2021年2月と3月、厚生労働省は自治体への事務連絡で、扶養照会をしないケースの判断基準を変え、保護を受ける本人が照会を拒んでいる場合は、丁寧に事情を聞き取ることを求めた。

 

 日本共産党の宮本徹衆院議員は、2022年11月9日の衆院厚生労働委員会で、東京新聞の報道をもとに、事務連絡の趣旨を徹底し、全国の実態を調査し、把握するよう求めたが、加藤勝信厚労相は「適切に扶養照会が実施されているか、自治体の取り扱いを確認していく」と述べるにとどめた。

 

 慎重な運用を求められているとはいえ、扶養照会をどこまでするかは自治体の判断に委ねられたまま。せめて厚労省が明確な判断基準を決め、自治体間のばらつきをなくしてほしいものだが……。

( SmartFLASH )

続きを見る

社会・政治一覧をもっと見る

社会・政治 一覧を見る

今、あなたにおすすめの記事